地域の未来が切り開かれるかー自伐林業で定住化(2021/12/15)

「地域の未来・自伐林業で定住化を図る」全国林業改良普及協会)という本を読んでみました。

筆者はNHK番組クローズアップ現代プラスでクローズアップされた「森林・大国日本の飛躍のカギ」に登場、重要な役割を果たされた九州大学大学院農学研究院 環境農学部門森林政策学分野佐藤宣子教授。

(「小さな林業」の可能性は)

「国産材時代」というが、森林にめぐまれた現代日本の次世代の森林づくりはうまくいくのか?

国産材時代を切り拓く、マーケット主導の「大きな林業」のリスクをに対処する「小さな林業」。

このページでも、近くの山の家づくりなど建築関係者が主導する小さな林業の例を挙げてきました(令和の国産材時代の次世代の山創りの課題ー森林ガバナンスはユーザーとの連携で)が、川上主導の「小さな林業」というのが、自伐型林業の意味だと理解しています。

(山づくりの現場から)

北海道から九州まで、全国17か所を訪問して(右の図)、月刊誌現代林業に40回にわたって連載された「自伐林業探求の旅シリーズ」の書籍化!。

このサイト(勉強部屋)が現場をしっかりフォローしていないので、大切な勉強の機会!!

(自伐(型)林家・林業とは)

とりあえず言葉の意味を明確にしておきます。

自伐林家とは:「自家山林を自家労働力中心に施業する林業家」。そこが実施する事業が自伐林業

自伐型林家とは:「地域を固定して森林所有者から施業や管理を受託している小規模林業家」。そこが実施する事業が自伐型林業

両方合わせていうときは自伐(型)林家、自伐(型)林業という。

(何故注目される自伐(型)林業)

左の図は、特定非営利活動法人ふるさと回帰支援センターが開催するふるさと回帰フェアや移住セミナー、相談会等への参加者数。一極集中から流れが変わってきていることを示しています(「田園回帰」への動き)。

若者が、地方に定住するためのツールとしての自伐型林業が大切な役割を果たしているのだそうですです。

この本を読んでみて、若者(第三世代)をサポートする、山林を管理してきた第1世代と定年後に自宅の山を管理する第2世代、など山づくりの将来を自分のことにしている、素晴らい人間関係が分かって、この動きが着々と進展していくんだと、あらためて分かりました。

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(1)自伐型林業の魅力の源泉は?自分で考える稼ぐ力?

佐藤教授が全国をまわって追いかけてきたのは、所有者と連携をとりならが、この山にどんな道をつけ、どの木をどんなに切ったら稼げるし、所有者の次の世代の山づくりに貢献して喜んでもらえるのか、といった仕事を自分で見つけられるとうい道筋ですね。デジタル社会で分断化された大きな生産過程の一部をになって毎日働いてきた、都会の世界では考えられない、自然資源の森林とマーケットをつなぐプロセスを自分で考えられる素晴らしいビジネス。(第2章自伐型林業の技術と経営スタイル(愛媛県西予市編など))

もちろん、長い道筋なんですが、魅力的な先輩が近くにいて教えてくれる。

そして、彼らの中には、「集約化した山林は、将来の集落の森林として、財産区のような形で管理したい」財産区のような形でといった未来の社会づくりに参画!(第3章自伐林業と農山村地域社会(岐阜県恵那市編など))

(2)大きな林業と小さな林業との関係ー小さな林業の役割分担は?

自伐型林業が主流化する可能性は?と佐藤教授に話をしたら、「そんなこと(主流化する可能性)はありません!」という答え。どのように役割分担をしていくかですね。

関連して、効率性を追いかけて大型機械を作業道にとおして、皆伐をして、グローバル市場に対抗!昔の皆伐跡地にできた、人工造林(宝の山)を再び、皆伐してどんな問題があるのか?という議論を佐藤教授としました。

昔は架線集材で森林にかかる負担が軽く、道路をつけて林地沿いに引っ張る今の集材と林地の保全のリスクが違う」という答え。そして、皆伐跡地が3割しか植えられていない実態は、林野庁も認める事実。

こういうリスクを、しっかり管理して、効率を徹底的に追及していける対象地をしっかり線引きし、その他のところは自伐型林業が主人公の一人となり、間伐を繰り返し高齢級な森林にして管理していく、前回植えすぎたところは天然林に返していく(恒続林を目指した施業)森林にするということでしょうか。(第3章自伐型林業と農山村地域社会 高知本山町編など)

(3)ビジネスとの関係

この制度が定着していくうえで、大きなビジネスとの関係をどのように構築するかは、一つのポイントだと思っていました。製材技術と設計者がつなぐ信頼のサプライチェーンなど素晴らしい経験が紹介されています(第2章自伐型林業の技術と経営スタイル(熊本県芦北町・水俣市編など))

それを通り越して、自動ドアの生産販売管理を全国で展開する会社が自伐型林業のネットワークに注目というのはびっくりですね。(第4章自伐型林業の人材育成・継承(埼玉県飯能市編))

自動ドアのメンテナンス作業の担い手として、「現場現場の状況を自分の頭で判断して行動する」といった自伐林業者のスキルが期待され、同社が実施している自伐型林業研修の卒業生が働いているんだそうです。

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まえから、気になっていた本ですが、林業の現場でどんなことが起こっているのか林業と若い人の関係性など分かってすばらりかったです。どこまで、広がりが形成されるのか、政策の課題の中にはまっていくのか、森林組合・一人親方・・・既存の事業者などとの関係など、不明なところが多いですが、その糸口が見えてきます。

関心のある方は是非手に取ってください。「地域の未来・自伐林業で定住化を図る」全国林業改良普及協会

読んで著者と議論をしたくなった方は、佐藤教授を1月29日勉強部屋Zoom会議にお招きしています。

おいでくださいね

持続可能な森林経営のための勉強部屋Zoomセミナー第3回御案内

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kokunai6-58 <jibaturingyo>

 

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