・一枚のグラフの説得力
・新世紀に当たり循環社会再考
・スライドショウ 「来るべき循環社会と日本の森林林業の将来」
・持続可能社会における循環の意味(京都大学大内正明教授)
・トヨタ自動車のメセナ活動「『杜の会』からの提言書」
このセクションでは、このサイト全体のバックボーンとなる、循環社会の理念概念と、その達成手段についての理論的な部分をカバーすることとします。
「持続可能な森林経営の実現のための政策手段について」を主題とする、このサイトの一番最初のセクションで循環社会を位置づけるのは、木材がライフサイクル全体にわたって省エネ、化石燃料代替型のエコマテリアルという事実によります。木材のライフサイクル分析など具体的な事項はセクション4の場で行いますが、循環社会の基本議論は本セクションでカバーしたいと思います。
20世紀の大量生産・大量廃棄型の社会に替わるものとして、構想される21世紀の有るべき社会については、「循環型社会」「環境保全型社会」「持続可能な社会」などという名称が付与されて提唱されていますが、当サイトでは、環境文明研究所加藤三郎氏の提唱(日刊工業新聞社「『循環社会』創造の条件」)に従い、「循環社会」を使うこととします。特に「循環(型)社会」という用語については、循環型社会形成推進基本法において「『循環型社会』とは、製品等が廃棄物等となることが抑制され、並びに製品等が循環資源となった場合においてはこれについて適正に循環的な利用が行われることが促進され、及び循環的な利用が行われない循環資源については適正な処分が確保され、もって天然資源の消費を抑制し、環境への負荷ができる限り低減される社会をいう。」と定義され、基本的なエネルギー問題が守備範囲からはずれているという問題があります。そういうこともあり、循環型でなく循環社会という用語を使うこととします。
一枚のグラフの説得力new(2002/10/11)
北海道大学で開催された環境経済政策学会のシンポジウムで基調報告にたった北海道大学小野有五教授は、冒頭一枚のグラフを示しました。科学的な知見が世界の政治を動かす可能性があるということを示すグラフです。(詳細)
新世紀に当たり循環社会再考
20世紀の大量消費社会からいかに早く決別してあらたな循環社会への転換をはかるかということが21世紀の課題となっているというのは、小サイトのバックボーンとなるテーマです。世紀の変わり目の冬休みに、関連する2冊の本を読み、循環社会について考え直してみました。
リサイクル幻想
20世紀の最後の年に、グリーン購入法や循環型社会形成推進基本法などが成立し大量消費社会から決別する、大きな流れを感じます。ただ、心配なのは、循環型社会形成基本法の循環型社会の定義にみるように、循環型社会が資源のリサイクル問題に矮小化されている点です。現在取り組まれているリサイクルについて、鋭い批判が芝浦工業大学武田武彦教授(「リサイクル幻想」(文春文庫)2000年)によってなされています。ペットボトルを再生すると石油から作るのの4倍の資源がいる、という指摘です。小生も名古屋市民としてわが国で最先端をゆく分別収集に取り組んでいますが、それ自体は市民社会が成熟してゆく過程としてあまり悪口は言いたくはありません。しかし、グリーン購入法の基本計画の議論のように、「どの資材が化石燃料を節約できるか」という、最も重要な点になると、「話が大きくなりすぎて議論が収束せず、法律の施行自体ができなるから、とりあえず、リサイクルからやりましょう」(環境庁担当者の意見)、という政策当事者の問題意識では、本当の意味での循環社会に挑戦する気構えがあるのか疑問になります。現在の循環型社会論に重要な視点が欠けているということを示してくれる本でした。(その他、化石資源を遺産型資源、森林のような太陽エネルギーによって補填される資源を月給型資源とネーミングしているところなど面白いところです。)
「限界を超えて」
大きな意味での循環社会論を見通す意味で、少し古い本ですが「限界を超えて」(Beyond the Limits(メドウズ他、ダイヤモンド社)を読んでみました(京都大学内藤教授の推薦によるもの)。現在の大量消費社会に対する警鐘の先駆けとなったローマクラブの「成長の限界」の著者のグループが20年後の92年に出した本です。(結構話題となって本ですから、たくさんの関連サイトがありますが、広がりのある面白いサイトを紹介します。)この本の中で、持続可能社会の条件として、@再生可能な資源の消費ペースはその生成ペースを上回らないこと、A再生不能な資源の消費ペースはそれに変わりうる持続可能な再生可能資源が開発されるペースを上回ってはならないこと、B汚染の排出量は、環境の吸収能力を上回ってはならないこと、の三つを上げています。
@は92年の地球サミット以降盛んに議論されていている持続可能な森林経営の中心的な概念で解りやすい課題です。また、Bは、木材を生産する際の環境へのインパクトを汚染の排出量とすれば、その吸収の範囲内での循環という、持続可能な森林生態系の管理の基本と関係する問題です。これも、持続可能な森林経営の重要な側面です。さて、問題のAですが、こう書かれると誰も否定しようがないが、誰もがこのように立論するのを躊躇するほど難問です。私たち自身のライフスタイルの変更や、本書が指摘するように現在の社会経済システムの構造変革なしには達成できない問題なのかもしれません。上記のリサイクル関連法などが避けている問題点です。ただし、小サイトでもとり上げている、木材のライフサイクルエネルギー、バイオマスエネルギーなどの問題などは、「再生不能資源に代わりうる持続可能な再生資源の開発」に関係する、この課題の一部を担うテーマであることは間違えないと思います。
小サイトも循環社会を展望した大きなビジョンを踏まえながら、その中のほんの一部のテーマについてですが、少しずつ蓄積を積み重ね、発展性のあるサイトにしてゆきたいと思いますので、今年もよろしくお願いいたします。
スライドショウ 来るべき循環社会と日本の森林林業の将来(ver4)
21世紀のキーワードである循環社会と森林林業の将来についてについて話をしたり聞いたりしてくる中で作成したスライドショウをこのウェブサイト全体のイントロとして掲載してきました。名古屋分局在職中に数回表記に関係する話をする機会に恵まれ、その度にソフトの改良を図ってきました。3月下旬に名古屋分局の職員の皆さんに離任に当たって現時点での最終バージョンをご披露させていただきました。その資料を基に表記のバージョン4を掲載します。パワーポイントというソフトのアニメーションを使っており、結構インパクトのあるものに仕上がっていると思います。いろいろご批判下さい。html版はこちらから(アニメーション機能は働きません)
パワーポイントをインストールされている方は、こちらから、ソフトをダウンロード(2.32MB)してください。直接スライドショウが立ち上がります。どうしてもうまく行かないときは、ご一報下さい。
森林林業をテーマとして話をする場合前段で循環社会の取り上げるのははやりのようになっていますが、わかりやすいように表やグラフを工夫しながら話の構成を考えていると、現時点で循環社会について考察することの問題の広がりと深さを改めて認識させられます。
循環社会という言葉で提起されている問題は次のように整理できるのではないでしょうか。
「現在生活している日本人の大半が人生経験を積み重ねてきた20世紀の特に後半の社会は、長い人類史上で大変特殊な社会であり、その前になかっただけでなく、この後にも繰り返されないだろう。その中で形成されてきた私たちの価値観、常識、規範はこの時代に規定された特殊なものである、ということをよく理解しないと、21世紀への備えが出来ないのでないか。」
過去のエネルギー消費の推定だとか、バイオマスエネルギーの具体的な展開だとか、まだまだこのテーマを直接関わるものだけでも課題があります。また、後段の森林林業の将来については、舌足らずの点があるかもしれません。今後充実を図ってゆく予定です。
持続可能社会における循環の意味
去る10月15日三重大学で「21世紀循環型社会における森林の可能性」と題する公開講演会が日本林学会中部支部により開催されまいした(平成12年度文部省科学研究費補助金研究成果公開促進費による助成)。魅惑的なテーマに誘われて出席してきましたが、期待に違わず充実した講演会でした。
内容は
持続可能社会における循環の意味(内藤正明 京都大学大学院工学研究科教授)
水循環における森林の役割(太田猛彦 東京大学大学院農学生命科学研究科教授)
材料循環における森林の役割(舩岡正光 三重大学生物資源学部教授)
エネルギー循環における森林の役割(小池浩一郎)
の五氏の講演の後
森林生態から見る循環型社会(武田明正 三重大学生物資源学部 教授)
林業経営から見る循環型社会(川端康樹 三重県速水林業山林管理部)
の二氏からのコメントという形で進めれました。
この中で循環社会論の概論となるべき内藤正明教授の講演資料をご本人と主催者の了解を得て掲載します。
持続可能社会における循環の意味
トヨタ自動車のメセナ活動「『杜の会』からの提言書」
7月の上旬愛知県豊田市にある「トヨタの森」を訪問した際、ご案内いただいた池上さんから一冊の報告書を見せていただきました。題名は、「自然の森と街の森から、地球温暖化防止を考える」となっています。トヨタ自動車が「トヨタの森」と並行して進めている「杜の会」という調査プロジェクトの報告書です。この勉強部屋のサイトに関心のある方は、是非一読を推奨します。第一に循環社会の中での木材と化石資源の代替という最も重要なポイントに焦点を当てていること、第二にその視点から国産材の使用拡大にしっかりした視点を持っていること、第三に木材循環経済法など具体的な提言をしていること、など大変興味深い報告書です。概要を掲載します。本報告書は担当の池上さんへ連絡すると送っていただけます。
ただ残念なのは、大きな問題提起をした報告書のフォローアップの方向が明確になっていない点です。杜の会のホームページも現在休止中のようです。お話しいただいた池上さんも検討中とのこと、せっかくのヴィジョンをもう一歩進める第三次「杜の会」活動を期待します。小生の提案は、大都市と森林を結ぶ仕組み、など提言書の内容について、@提言の具体化のための実施計画の公募と支援、A具体的な活動の顕彰、B東南アジアやロシアの森林認証への支援、C関連する研究の助成、D杜の会ホームページの再開などが思いつきます。みなさん、積極的なご提案の寄せられたらどうでしょう。
「自足型社会」とバイオマスエネルギーnew
科学技術振興事業団が実施している戦略的基礎研究j事業の中に「農山村地域社会の低負荷型生活・生産システムの構築」というタイトルの研究があります。戦略的基礎研究費というのは「『科学技術創造立国』 を目指し、明日の科学技術につながる知的資産の形成や新産業の創出を図るため」、生命活動のプログラム、環境低負荷型社会システムなどいくつかのテーマに沿って応募されたプロジェクトを助成するものです。あくまで発案者個人のアイディアに対して助成していこうというところが興味深いところです。農山村社会の・・は小生の友人が中心となって進めているものです。この研究は環境負荷のできるだけ少ない「自足型社会」という概念を提出し、いくつかの地域でその具体的な実現方法を提示しようという野心的なものです。
中間報告書 研究年俸報告
この興味深い研究の勉強会で話をする機会がありました。東北大学で開かれた勉強会で「循環社会の中での森林・林産物と関連政策の課題」というテーマで話をさせてもらいました。ベースはセクション1に掲載されている「来るべき循環社会と森林林業の将来」ですが、特にバイオマスエネルギーについて関心が深いようなので、そちらの資料をいろいろあさっ準備をしてみました。
森林に関するバイオマスエネルギーについては、林野庁の「国有林のエネルギー資源利用検討会」が作成した報告書が大変まとまっていて参考になります(報告書要旨、目次、若干の余部があるようです必要な方はこちらへメールを下さい、本文ダウンロード28mb工事中)。
その中に一部掲載されていますが、日本中のバイオマスエネルギーのポテンシャルがどれだけあるか、という興味深い報告が最近いくつか公表されています。下表のとおりで、二つの報告に少し差があるようですが前者はポテンシャルそのままの、後者は技術的な制約を勘案と数字の性格が違うようです。日本の化石燃料によるエネルギー消費量の中でのオーダーを見ると約2%から約4%といったところのようです。山側には結構増やせる余地があると見ました。
原田寿郎
*南英治・坂史朗** 山から ササタケ 万トン 330 <941 里山広葉樹 万トン 900 270−320 間伐 万トン 500 197 林地残材 万トン 300 50 街から 工場廃材 万トン 40 216 建築廃材 万トン 800 206 古紙 万トン 1400 <280 合計 万トン 4270 <2210 石油換算 万トン 1800 930 備考 農林水産技術研究ジャーナル
2000/6
*森林総合研究所第51回木材学会大会
**京都大学
資料 21世紀の世界の人口
国連の人口基金は、世界の人口は昨年の10月12日に60億人を越えたと発表しました。1960年には30億人だった人口が40年の間に倍増したことになります。20世紀後半のこの異常な事態が、21世紀になにをもたらすか、そして何の変更をもとめているか、これが循環社会論の原点です。
21世紀の人口の見通しを国連人口局(Department of Economic and Social Affairs Population Division)が推計しています。http://www.undp.org/popin/wdtrends/p98/fp98toc.htm
2050年の人口は約90億人。増加分はすべて途上国で発生という予測です。
世界の今日の人口は?
6,048,258,866人(グリニッジ標準時3月3日午後6時14分1秒)だそうです。
刻々とふえる、世界の人口をリアルタイムで表示するサイトhttp://opr.princeton.edu/popclock/があります。迫力があります。基のデータは米国政府統計局http://www.census.gov/cgi-bin/ipc/popclockwによっています