| 地域材利用拡大に向けた環境指標整備のための調査研究ーウッドマイルズ活動のとりあえずの総括(2025/12/10) |
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経緯がこちら→ウッドマイルズ運動の方向性ーウッドマイルズフォーラムから木の建築フォラムへ(2024/8/15) この調査結果を国土緑推に提出しましたので、概要ご説明します。 ーーーー 1.調査研究の目的 「脱炭素経営が求められる現在、木材製品の生産・輸送過程のGHG排出量の明示や認証取得等の必要性が高まっていることから、地域材利用の環境的優位性を関連事業者や一般消費者へ訴求するため、(一社)ウッドマイルズフォーラムが培ってきた地域材の環境評価指標をベースに、建築物に使用される木材の生産・輸送履歴、及びGHG排出量を効率的に明示する仕組みを構築するため、既往の評価手法や関連指標の調査・整理、及び環境指標案の作成、サンプル事例を用いた評価の試行を行い、今後の指標整備に関する課題や方針をまとめる。」こととしました。 2.調査研究実施方法
3.ウッドマイルズ関連指標の概要と課題 ウッドマイルズ関連指標は2003年に発足したウッドマイルズ研究会により提唱された建築物に使用される木材の輸送に関する環境指標で、木材の輸送過程の環境負荷とトレーサビリティーを見える化することで、地域材の利用拡大に貢献する取組である。2016年以降、原単位や評価のための平均値などの改訂が行われていないが、木材製品の流通形態はこの10年で大幅に変化していると言われているため、改めて原単位の検証や平均値の改訂等が必要である。また、木材製品の輸送過程だけでなく総合的な視点から木材の環境性能を評価するため、木材産地の持続可能性、木材流通の透明性・信頼性、木材生産の環境負荷削減、木材の基本的な品質、木材の長期利用という5つの物差しによる評価を推進する木材調達チェックブックも作成しているが、各評価項目の精度を高め、実用できる指標にレベルアップさせていくことも課題となっています。 4 木材の環境性能を評価する動きと関連指標の概要 2024年3月に林野庁が「建築物への木材利用に係る評価ガイダンス」を公開した[i]。建築物への木材利用に係る評価として、カーボンニュートラルへの貢献、持続可能な資源の利用、快適空間の実現、という3点をあげ、カーボンニュートラルの貢献の評価手法として、建築物のエンボディドカーボンの削減、及び建築物への炭素の貯蔵について、代表的なな排出原単位やデータベースと共に紹介されています。 (図2 主な木材製品のCO2排出原単位とデータベース)
また、持続可能な木材の調達の確認方法として、合法伐採木材等の流通及び利用の促進に関する法律(クリーンウッド法)に基づき合法性が確認でき、かつその木材が産出された森林の伐採後の更新の担保を確認できるものであること、又は認証材(森林認証制度により評価・認証された木材)であることのいずれかであることと紹介されています。 5 既往の評価手法、GHG排出原単位の調査分析 ISO1402553に基づく環境製品宣言EPDプログラムを日本国内で唯一運営管理しているのが一般社団法人サステナブル経営推進機構によるSuMPO環境ラベル(エコリーフ)プログラムです。建築・建築製品分野の木材関連製品のEPD登録状況はまだ少ない状況です。 IDEAは(株)AIST Solutionsが開発・販売している世界最大規模のインベントリデータベースである。IDEAを活用したLCAソフトウェア(MilCA)も(株)LCAエキスパートセンターより販売されている。データベースやソフトの利用にはそれなりの費用が必要です。 AIJ-LCAは日本建築学会で出版している「建物のLCA指針(温暖化・資源消費・廃棄物対策のための評価ツール)」であり、1999年11月に初版が発行され、現在は2024年3月に発行された第5版が最新版である。また、AIJ-LCA原単位データベースを基本として資材数量ヘベースの算定が可能となるでしょう ゼロカーボンビル推進会議にて開発された建築物ホールライフカーボン算定ツール「J-CAT」正式版が、2024年10月に一般財団法人住宅・建築SDGs推進センターより無料で公開されました。 その他、住友林業㈱がサポートしている欧州のOne Click LCAや林野庁の発電利用に供する木質バイオマスの証明のためのガイドラインのGHG排出量の規定値等があります。 6 地域材利用拡大に向けた環境指標案の作成 既往の評価手法における木材製品のGHG排出原単位は図3のようにバラつきがあるため、各々の信頼性や実務での利用の可能性等を考慮し、図4のように2段階に分けた指標案を作成した。輸送過程ではウッドマイルズ関連指標の精緻化を行い、製造過程ではJ-CATの原単位を活用した環境指標案です
(図3 各データベースによる木材製品のGHG排出原単位) ーーー (図4 地域材利用拡大に向けた段階別環境指標案) 7 サンプル事例の調査分析 作成した環境指標案のサンプル事例調査として、TXアベニュー八潮駅に使用された、つくば市産のスギ材用いたルーバー(壁)、ファサード(天井)、べンチのヒアリング調査及び試算を行いました。 製造過程の条件は全て同じ(木質バイオマス燃料50%)としているため、輸送距離が長いルーバー材が最も排出量が多く、輸送距離が短いファサード材が最も排出量が少なくなっている。比較のための平均値についても、ウッドマイルズ関連指標、IDEA、J-CAT、各々の原単位で試算した結果、ウッドマイルズ関連指標の平均値が最も大きく、IDEAの平均値が最も小さくなる結果となりました。 (図5 八潮駅の木製製品1m3あたりのCO2排出量 ㎏-CO2) また、木材生産の持続可能性については、クリーンウッド法における合法性の確認(デュー・デリジェンス)、及び大阪・関西万博の木材調達基準、どちらでも持続可能性が確認できる木材であると評価できました。 さらに同環境指標を用いて、(一社)ウッドマイルズフォーラムがこれまでウッドマイルズ関連指標を算出した代表的な6つの事例についても試算を行い、木材製品の輸送手段及び乾燥方法の違いにより、GHG排出量が大きく異なる可能性があることが分かりました。 (図6 戸建て住宅の構造仕上材1m3あたりのCO2排出量 ㎏-CO2) (図7 木造施設の構造材1m3あたりのCO2排出量 ㎏-CO2) 8 総括 本調査研究により、ウッドマイルズ関連指標、及び木材製品の製造時のGHG排出量を評価する既往の関連指標について、精度、運用、費用、信頼性等、現状の課題を整理することができました。今後、具体的な製品について精緻なLCA分析を行い、既往の関連指標の精度や信頼性を検証し、地域材利用拡大のための有効な環境指標を整備していく必要があります。 ーーーー以上です 国土緑推に提出した概要版に沿って報告しました。報告書 表誌と目次 本文フルテキストはこちら。 ーーーーー 私もこの作業に参加しました。その過程で上記にも記載されていますが。以下のような様々な蓄積がネット状に公開されていることを再認識しました。 〇林野庁による「建築物への木材利用に係る評価ガイダンス」 〇一般社団法人サステナブル経営推進機構によるSuMPO環境ラベル(エコリーフ)プログラム 〇(株)AIST Solutionsが開発・販売している世界最大規模のインベントリデータベースであるIDEA。IDEAを活用したLCAソフトウェア(MilCA)は(株)LCAエキスパートセンター が開発 〇日本建築学会で出版している「建物のLCA指針(温暖化・資源消費・廃棄物対策のための評価ツール)」AIJ-LCA 以上のように、沢山あるツールを、現場の実態に合わせてもう少し使いやすくするということが、今後木の建築フォラムでウッドマイルズフォーラムの作業を引きついていく作業内容でしょう。 ーーーーーーーーーーーーーーー energy2-83<WMnext> |
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