林産物貿易とガットー30年前の連載記事(2022/6/15)

今から30年前、1992年7月から9月にかけて、日刊木材新聞に「林産物貿易とガット」という連載記事が15回に分けて掲載されました。

筆者は林野庁木材流通課課長補佐藤原敬。

最近、この内容を確認する必要があり、国立国会図書館にいってコピーをしてきました(1958年11月からの日刊木材紙が冊子になって所蔵されている)。

日本の木材関税がガット違反だといってカナダが訴追したSPF関税紛争、米国が日本たたきをした新通商法301条の3つの対象の一つに日本の木材輸入政策を選定して始まった日米林産物貿易協議・・・などなど、昭和から平成になる1980年代おわりごろのトピックス。

業界紙の連載記事としては、それなりにインパクトがあったのでしょうが、「林産物貿易とガット」30年たった今なんなのかと思って読み直していました。

(ガットって?勉強部屋との関係は?)

「世界経済のブロック化が進み各国が保護主義的貿易政策を設けたことが、第二次世界大戦の一因」として1948年に国際協定が合意されたガットGATT(General agreement on tariffs and trade関税と貿易に関する一般協定)」(外務省:ガットからWTOへから)

その後、「経済のグローバル化が環境破壊の原因だ!」というロジックに対してどのように向き合うのか、というのが、私(藤原)自身の問題意識になって、このサイトの形成の背景になっています。「国際的な『環境と貿易』の議論の展開と林産物貿易ー我が国の林業政策・林産物貿易政策への含意」(2002/2))

考えてみると、このサイトができる、10年前に、グローバルな経済のフレームワークに関する業務をしたり、勉強したりしたことが、このサイトのベースになっています

(環境と貿易の関係ーGATTから学ぶべきこと)

思い出深いWTOの報告書の一節を紹介します。

「簡単にいえば(環境問題にとって)貿易や経済成長は問題ではない。より統合された経済の中で環境政策をどう立案するかという問題である。今後の歩むべき道は国際的な環境協力のメカニズムと制度を強化してゆくことである。ちょうど50年前に貿易に関する協力が利益になると決定したように。」(1999)WTO貿易と環境に関する特別報告要旨(藤原訳)

"In short, trade is really not the issue, nor is economic growth. The issue is how to reinvent environmental polices in an ever more integrated world economy so as to ensure that we live within ecological limits. The way forward, it would seem to us, is to strengthen the mechanisms and institutions for multilateral environmental cooperation, just like countries 50 years ago decided that it was to their benefit to cooperate on trade matters."WTO (1999)“TRADE AND ENVIRONMENT”Special Studies 4  

ごめんなさい、寄り道しました。業界紙の連載記事にそんなことが直接書いてあるわけでないんですが・・・

日刊木材新聞社のご了解をえて、まず連載の冒頭部分を紹介します

(林産物貿易とガット連載にあたって)

連載に当たって

先般、パリにあるヨーロッパ合板協会の事務局で専務と話をしていると、先方が、昨年のインドネシア合板の対日輸出量をそらんじているのでびっくりしたことがあった。わが国は、世界で最大の木材輸入国であり、その動きが、輸入相手国のみならず地球の裏側の第三国の木材の輸入、林産業界に影響を及ぼしているという実感を持ったものである。そして、このように国際化した貿易の世界を律する決まりが「ガット」=「関税と貿易に関する一般協定」である。

近年林産物貿易事案はSPF関税紛争、日米林産物協議、ウルグアイラウンド、と二国間の紛争も、多国間の協議も直接間接にガットという大きな枠組みと何らかの関係をもってきているのも、そのような国際化した状況の中でのものだろう。ウルグアイラウンドなどの新聞報道によって林産業界・関係行政関係者にとってガットに対する関心が高まっているため、国際法というとりつきにくい世界をできるだけ解りやすく、近年の具体的な事案に即して解説を試みたい。

執筆予定は次のとおりである。
(1)SPF関税紛争とガット
ーーーガットの紛争処理手続きと関税
(2)日米林産物協議とガット
ーーー技術基準、関税分類
(3)丸太輸出規制・熱帯木材の不使用を巡って
ーーー貿易の数量制限とガット
(4)米加針葉樹製材紛争とガット
ーーー相殺関税、アンチダンピング関税
(5)ウルグアイラウンドと我が国の林産物貿易
 

日刊木材新聞社に了解をえて、「林産物貿易とガット」コピーを共有します

もしもよろしかったらご覧ください

boueki1-15(gattnikkan)

 
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