北欧と日本のPEFCグループ認証・統合認証の広がりが示すもの(2018/11/25)
 
フィンランド森林認証面積の推移
発足2年目で全森林の認証完了

11月16日17日と筑波大学で開催された林業林業経済学会秋期大会で、森林総研の早舩真智氏の「PEFCグループ森林管理認証の展開とグループ主体ー森林認証の広がりの日欧比較」という報告を聞きました。(なんと座長という立場で)

左の図は、報告の中にあった、フィンランドの森林認証面積の推移のグラフです。もう一カ国スウェーデンも木材生産林はほぼ全面積がPEFCの森林認証を受けているが、日本は8パーセント。このちがいを最近日本でも増えてきたグループ認証という制度に着目して見てみようというのが、報告の趣旨です。

報告のプレゼン資料をいただきましたの了解をしていただいて、勉強部屋ドロップボックスにおきます。報告要旨が林業経済学会のウェブページに掲載されています(セションC報告要旨16ページ

(森林認証のグループ認証)

グループ認証とは、「単一の認証書の下に多数の森林所有者・管理者で構成される認証区域を含む森林管理認証とする」(SGEC文書2-2012 SGEC認証制度の管理運営に関する文書第5条森林管理認証の種類)というものです。

グループ主体は加盟者と、加盟者のコミットメントを含む合意文書を締結、加盟者への内部監査等を実施、加盟者は合意文書を提出し実施する(SGEC付属文章2-4 2012 グループ認証の要件)という(かなり厳しい)条件ですが、グループ主体一社の申請料金料と割引となる審査料金で(JIA担当者談)森林認証が受けられるという制度です。

上の表は早舩報告にあった、日本のSGECのグループ認証の事例です。新たに認証される森林の現在4分の1ほどがグループ認証だそうです(SGEC事務局)。行政機関や森林組合などが主体となって多数の希望者を集めて森林認証が進んでいるようです(東京オリンピックの波及効果?)

だぶん今後小規模事業者がどんどん、認証に取り組んでくるためにはグループ認証が安くて手っ取り早いので、ほとんどがそうなっていくのでしょう。

早舩報告はフィンランドでもスウェーデンでもグループ認証が主流であり、それぞれ、スタイルが少し違うが手法が国内で統一化されているのに、日本ではそれができていない、という点に問題意識があり、今後研究が進められるようです。

「学会では日本国内の違法伐採問題などが議論になっており、森林認証制度は欧州発だが、日本の森林ガバナンスの確立のにとったも重要なテーマなので、今後の推移に期待したい」などとと座長としてのコメントをしました(本心そう思っています)。

(グループ認証と業界団体認定)

そもそも、FSCやPEFCのような森林認証制度が提唱する、独立した第三者である認定機関が日本の(世界の)森林所有者の隅々まで審査して管理するこには色々無理があり、サプライチェーンの真ん中に巨大企業いる北欧のようなところではその企業がリードしてうまくいくが、そうでないでない日本のような(ほとんどの)国では難しい課題があります。

循環社会の主役としての木材を巡る課題と木材自給率の動向ー「農村と都市をむずぶ」誌寄稿(2017/9/30)(など)

その課題を基礎単位のグループ化というコンセプトで解決にせまろうという、今回のテーマは、、日本の合法木材のサプライチェーンを管理するガイドラインの団体認定の考えと全く同一線上にあります。

違法伐採問題に対する取組の意義と課題―日本を含むすべての森林の森林管理のガバナンスにも関連して―(2015/4/25)

今回の報告は森林認証に関してですが、COC認証にとっても、グループ認証の拡大が進んでいます。上記のガイドラインの団体認定の過程で業界団体が会員に要求している条件と、PEFCのグループ認証(COCの場合は統合認証というようですが(SGEC文書2-2012 SGEC認証制度の管理運営に関する文書第13条(CoC 管理事業体の認証対象業種とその認証))の条件がどんな関係になているのかしっかり見ていく必要があると思います。

(フィンランドの国内森林法とPEFC、日本の森林法とSGEC)

今回フィンランドの森林認証制度についてうかがって、あらためて感じましたが、PEFCの森林認証をリードしたフィンランドは、自国の国内法で要求する森林管理基準をグローバルに普及させるためにPEFCを創ったのではないかと思います。それで、発足二年で全森林が認証完了!

フィンランドという国が林産物輸出が国の経済の中で重要な役割を占めている数少ない先進国という特殊性のなせる技なのでしょうが、「日本の森林経営計画のハードルとSGECの森林認証のハードルを一緒にする」、というのが、木材の輸出拡大がの重要なツールだ、ということは、すくなくとも学会関係者の共通認識になってほしいと思います。

持続可能な森林管理を担保する制度としての、森林認証制度と我が国における森林法・合法性証明システム(2015/11/24)

この話に、グループ認証の話が二つになって面白い可能性があるかな、と思いました。

sinrin3-10(grninsyo)

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