ニュースレター No.2182017年10月22日発行 (発行部数:1390部)

このレターは、「持続可能な森林経営のための勉強部屋」というHPの改訂にそっておおむね月に一回作成しています。

情報提供して いただいた方、配信の希望を寄せられた方、読んでいただきたいとこちら考えて いる方に配信してます。御意見をいただければ幸いです。 

                         一般社団法人 持続可能森林なフォーラム 藤原

目次
1 フロントページ:SDGs時代の地方創生と森林と企業(1)ー森林環境未来都市(2017/10/22)
2.   循環社会の主役としての木材を巡る課題と木材自給率の動向ー「農村と都市をむずぶ」誌寄稿(2017/10/22)
3. 木材自給率のデータと木質バイオマスエネルギー動向(2017/9/30)
4.  みなとモデル木材製品展示会―都市の木材利用の入り口は(2017/10/22)
4. 総選挙ー勉強部屋ニュース208号編集ばなし(2017/9/30)

フロントページ:SDGs時代の地方創生と森林と企業(1)森林環境未来都市(2017/10/22)

持続可能な開発目標SDGsに関するイベントに続けて出席する機会がありました。

10月11日SDGs時代の森林×企業シンポジウム(美しい森林づくり全国推進会議、林業復活・地域創生を推進する国民会議)
10月13日持続可能な開発目標(SDGs)ステークホルダーズ・ミーティング第4回会合(環境省、公益財団法人 地球環境戦略研究機関(IGES))

とりあえず、持続可能な開発目標(SDGs)ステークホルダーズ・ミーティング第4回会合の方から報告します。

(SDGsと持続可能な森林経営のための勉強部屋)

2015年9月の国連サミットで採択された、先進国と途上国がともに取り組む2030年までの持続可能な開発目標は、17の目標を掲げていますが、さまざまな、目標にとって森林が大切な役割をはたします。(国連サミットで合意された「持続可能な成長のための2030年アジェンダ」の中の森林(2015/10/24)

勉強部屋でも、海外での議論の発展と国内での持続可能な森林の議論がどのような関係するか、目標設定がきまった、リオ+20の会合に参画するほか、その進展をフォローしてきました。

リオ+20 我々の望む未来と森林(2012/6/23)(2012/8/26,10/5)改訂)
「持続可能な開発目標」と森林(2012/8/18)
国連サミットで合意された「持続可能な成長のための2030年アジェンダ」の中の森林(2015/10/24)

(ステークホルダーズ会合の全体像)

今回のステークホルダーズミーティングは第4回目だそうで環境省がIGES公益財団法人地球環境戦略研究機関と共催で「環境側面からのSDGsの実施を推進するために、民間企業や自治体、NGOなどの様々な立場から先行事例を共有して認め合うものとして」開催されたものです。(IGESの関連ページ

プログラムは以下の通り。

この中で、関心をもったのは内閣府の報告で、「自治体は世界の共通言語であるSDGsを推進することにより、国の内外の産官学民のステークホルダーとパートナーシップを構築し、持続可能な開発に向けて一層の社会貢献を図ることができる」第7回「環境未来都市」構想推進国際フォーラムにおける総括より、内閣府「地方創生に向けた自治体SDGsの推進について」34ページ)とされたことです。

(環境未来都市からSDGs未来都市)

 

ここの関連での報告が、北海道下川町の「環境未来都市」から「SDGs未来都市」へ地方自治体からのSDGsへのアプローチです。

[森林未来都市コンセプト]
■豊かな森林環境に囲まれ、森林で豊かな収入を得、森林で学び、遊び、心身を健康に養い、木に包まれた心豊かな生活をおくることができる町

環境モデル都市、環境未来都市など、政府が打ち出す「持続可能な経済社会システムを実現する都市・地域づくりを目指す「環境未来都市」構想」の先頭を走ってきた下川町が、SDGsを見据えてもう一歩の前進。

 1.環境未来都市(~H28)
■人口減少が緩和
「社会動態(転入・転出)」の減少が緩和し、最近5カ年では転入超過の年も
■再エネによる地域熱自給率が45%へ
■H28年個人住民税がH22年比+16.1%
⇒持続可能な地域社会の「芽」が出た段階
 2.SDGs未来都市へ(H29~)
■現在は道半ば、さらなるチャレンジ
→SDGsを取り入れた2030年の持続可能な地域社会をデザインしアクション
■下川町で「持続可能な地域社会」を実現
それが「SDGs」への寄与・貢献
→我が国の地方創生モデル
■SDGsを地域活性化のツールとして活用
→地域共通のモノサシ(将来像・目標値)
→魅力や将来性を高め人や資金の呼び込み

勿論、内閣府のいうように、SDGsという世界共通の言語で自分の地域の未来への活性化の道筋をチェックし、世界中から応援を取り付けるという、という下川町側の戦略上のこともあるのですが、それを超えて、下川町の持続可能な地域社会ができれば、SDGsに貢献できるという、世界に向けた発信です。

ローカルとグローバルの一体化。素晴らしいです。

kokunai10-4<SDGsSH4>

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循環社会の主役としての木材を巡る課題と木材自給率の動向ー「農村と都市をむずぶ」誌寄稿(2017/9/30)

農村と都市をむすぶという雑誌(全農林労働組合発行)に、標記論考が掲載されました。

木材の自給率の回復傾向が定着してきた状況が、「農業の自給率向上にとって、何らかの示唆がえられるのでないか」というのが、筆者に編集部から声をかけていただいた趣旨。

編集部の了解をえて、こちらにpdfファイルを置きます

目次とイントロは以下のとおり

循環社会の主役としての木材を巡る課題と木材自給率の動向
ウッドマイルズフォーラム 藤原敬

1 はじめに
 2015(平成27)年度森林・林業白書(以下27白書という)は、2014年の木材自給率が30%を上回ったことを受けて、「国産材の安定供給体制の構築に向けて」という特集を行っている。木材の自給率の回復傾向が定着してきた状況が、「農業の自給率向上にとって、何らかの示唆がえられるのでないか」というのが、筆者に編集部から声をかけていただいた趣旨だった。
筆者はもと林野庁の行政官、全国木材組合連合会のマネジメントの一端に携わりながら、ウッドマイルズフォーラムという団体 を立ち上げて、木材・地域材の環境貢献度を評価する試みを建築関係者などと進めてきた。地域材の利用が進み自給率が拡大することは好ましいことだが、最近の木材自給率の向上や関連する施策に検討すべき課題があると考えている。
27白書の自給率を巡る記述に基づいて、自給率の動向とその背景、関連する施策の動向を紹介しながら、市場に対応する国産材の可能性とリスク、木材・地域材の消費者への普及の課題などを検討したい。農業分野の自給率に関する議論の進展に資すことができれば幸いである。

2 木材の自給率の動向と国産材の安定供給体制の構築に向けて施策
(1)木材の需要と供給
(2)国産材の安定供給体制の構築に向けた施策

3 国産材時代の安定化のための課題
(1)木材の地域材の環境貢献度の見える化への取組
(2)サプライチェーンを管理するコストと国産材・地域材

4 おわりに
グローバル化する木材の流通のかなで、日本の国産材が自給率を伸ばしている背景には、国産材の流通過程が国際競争の真っただ中に入っており、市場競争力を高めるための施策と、資源管理にかかる供給側の施策が展開されていることを紹介してきた。しかしながら、ローカルな資材を持続的・循環的に利用していくためには、ローカルな商品の環境貢献という視点で需要者にアプローチすることの必要性あり、ウッドマイルズフォーラムの活動の一端を紹介した。グローバル化の問題はその他に、輸送過程の環境負荷など重要な視点があり、化石燃料にたよる輸送機関が排出する温暖化ガスへの課税など、木材にかかわらず農産物を含む様々国際商品について、環境的側面からさらなる重要な課題があるだろう。

kokunai6-44<nousontotoshi>
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木材自給率のデータと木質バイオマスエネルギーの動向(2017/10/22)

 

林野庁は、2016年の木材需給に関するデータを集約・整理した「木材需給表」を公表し、、木材自給率は前年から1.6ポイント上昇して34.8%となり、2011年から6年連続で上昇したとしました。

「平成28年木材需給表」の公表について~木材自給率は6年連続で上昇し、34.8%に~

平成28年木材需給表(PDF : 271KB)pdfファイル

このところ、減っていた需給総量が前年より少し上昇し、輸入材と国産材とも増えた結果となっています。


(FIT制度の課題となっきた燃料材の動向)

ここで注意をしなければならないのは、拡大しつつある燃料材です。

固定価格買い取り制度に裏打ちされた木材にエネリグ-利用ですが、この需給問題に大きな課題がクローズアップされています。

左の図は、9月28日に開催された、調達価格等算定委員会で事務局が報告した、再生可能エネルギーの現状と本年度の調達価格等算定委員会について(PDF形式:2,832KB)の一節です。

2017年3月時点の一般木材等バイオマス発電設備のFIT認定量(1,100万kW超)を前年とくらべたものですが、認定量が急増していることがわかります。

もちろん、国産材がその一端を担うのでしょうが、この急増のバックにあるのは、輸入バイオマスでPKS(パームヤシガラ)とパームオイルなど(農産物残渣)なのだそうです。

エネルギー自給率の向上を一つの目的に抱えていた、固定価格買い取り制度が、輸入燃料の拡大につながる。環境に与える影響はどうなのか、FITの委員会が今年度の課題としています。

参考 早急な軌道修正を バイオマス白書2017 NPO法人バイオマス産業社会ネットワーク(BIN)

その後の進展をこのページでもフォローしていきます。

energy1-27<jikyuritsu&FIT>

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 みなとモデル木材製品展示会―都市の木材利用の入り口は(2017/10/22)


10月11日都市建築物の木質化を進めるための建材・家具展示会と称して、みなとモデル木材製品展示会が開催されたので顔を出してみた。

((みなとモデル二酸化炭素固定認証制度))

港区では、2011年10月から、建築物等への国産木材の使用を推進する「みなとモデル二酸化炭素固定認定制度」を開始し、区内で延べ床面積5,00Qm2以上の建築を行う建築主は、着工前に区へ「国産木材使用計画書」を提出させ、区は建築主に対し、建築物等に使用された国産木材量に相当するCO2固定量を認証してます。
 
みなと森と水ネットワーク会議HPより

港区と「間伐材を始めとした国産材の活用促進に関する協定」を締結した自治体から産出される、木材の合法性および森林の持続性が約束された協定木材の使用を推奨しています。

現在75の自治体が港区と協定を結び、そして取り扱う登録事業者は308社となっています。

環境的要素を前面に出し、自治体と事業者によるトレーサビリティをしっかり確保する仕組みをつくった、この仕組みのすばらしさに、勉強部屋としても注目してきました。

みなとモデル二酸化炭素固定認証制度、近況(2013/3/24)
みなとモデル二酸化炭素認証制度WEB(2011/9/29)

((みなとモデル木材製品展示会))

今回のイベントは、登録事業者が都市における木材利用の拡大を目指して、展示会を開催したもの。

出展者は以下の通りです
(株)イトーキ、(株)イングス、(株)内田洋行、SMB建材(株)木構造建築部、江戸川ウッドテック(株)、エヌ・アンド・イー(株).江間忠木材(株).オーエム機器(株).鹿島木材㈱.加藤木材産業(株).鹿沼WOOD INFILL有限責任事業組合.(株)キーテック.九州木材工業(株).(株)京和木材.(株)クネット.桑原木材(株).北三(株).越井木材工業(株).齋藤木材工業(株)セイホク(株).センクシア(株).大建工業(株).大利木材(株).有限会社 高吟製材所.チーム東白川.(株)天童木工.天龍木材(株).藤寿産業(株).ナイス(株).(株)那賀ウッド.日本住宅パネル工業協同組合 東日本支所.(株)西尾家具工芸社.日本木槽木管(株).速水林業・森林組合おわせ(紀北町).(株)ハルキ.(株)ビッグウィル.飛騨産業(株).物林(株).星野工業(株).細田木材工業(株).松阪の木・あかね材機構丸玉産業(株).茨城工場(株).ヤギサワ矢島木材乾燥(株).リフォジュール(株).(株)ワイス・ワイス 

出展者のたくさんの方と名刺交換をしました

(大手の事業者の産地特定製品)

大手の木材加工・流通事業社が、自社の国内ネットワークを生かし、産地を特定した製品を提供する体制を整えてきていることが印象的でした。

ナイス(那賀町
ホクサン(あきる野市 檜原村 東白川村 浜松市
越井木材(紋別市 下川町 葛巻町 石巻市 鹿沼市 沼田市 あきる野市 檜原村 小諸市 信濃町 郡上市 新宮市 隠岐の島町 西粟倉村 三好市 那賀町 西条市 西予市 久万高原町 馬路村 四万十町 小国町 日南市 大館市 都城市
セイホク住田町 石巻市 )など

(中小企業の地元連合)

また、都市の設計者が考える様々な仕様の木材製品を、自分たちなら設計者の立場にたって供給できる、中小企業が連合して取り組んでいるチーム東白川(山共木材など)など興味を持ちました。

東白川製材協同組合東白川村森林組合、株式会社エスウッド(株)山共山口工業(株) ,桑原木材株式会社,、()中部メンテナンス江間忠ウッドベース()江間忠木材()諸戸林業株式会社、株式会社トーホー

代表各の株式会社山共田口社長の話を紹介します。
環境配慮の観点からも木材利用推進いて、みなとモデルも然りでしょう。

しかし、実際のビジネスの現場では、経済性はもちろん、機能性、意匠性、ストーリー性などが求められます。つまり私たちは、理念としての木材利用を是としながらも、しっかりとマーケットで受け入れてもらえるに足る商品を供給する必要があるのです。

そう考えると大手企業に優位性があるのは否めません。しかし私たちは展示会でご説明申し上げたように、小規模企業が連携して、それぞれの専門分野で役割を果たすことで、大手企業、大工場では出来ない小回りの良さ、カスタマイズされた商品を作る仕組み、「チーム東白川」を作りました。

仕組み、というと大げさですが、単なる地域内ネットワークです。特に団体登録も会議もしませんが、これは意識づけの問題です。しかしこうすることで、以前は自社で出来ない物に関してはお断りしていたのですが、他社に振ったりしてほとんど断らなくてもよくなりました。

おかげさまで現在、みなとモデルを皮切りに、関東圏で多くの受注をいただいている状況です。最近では「駆け込み寺」のように全国から難しいスペック、短い納期の注文があり四苦八苦しておりますが、「東白川ならなんとかしてくれる」「山共ならなんとかしてくれる」と言われるたびに嬉しく思っています。

地方創生がこんな形ですすんでいくのかと感じました

kokunai4-42<minatomoderu2017>

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 SDGsー勉強部屋ニュース218号編集ばなし(2017/10/22)

9月20日の安倍総理の国連演説は、ほとんど北朝鮮問題だった(総選挙もにらんで外敵に標準をあてるセオリー)ですが、当初SDGsのことを中心テーマに話をしようと考えていたようです。

「議長、御列席の皆様、本日私はまず、SDGsの実施に懸ける、我々の情熱をお話ししようと思っていました。国内の啓発を図る工夫にも、御紹介したいものがありました。・・・ けれども私は、私の討論をただ一点、北朝鮮に関して集中せざるを得ません}

ピコ太郎さんが国連本部で「SDGs版PPAP」を披露など、SDGsが世の中の主流になる道筋が少し見えてきた気もしますが、総選挙ではSDGsのことは一言も与野党から発言がありませんでした(たぶん、絶対?)ので、勉強部屋でやります。

途上国のだれかを助けるためのパフォーマンスでなく、地方創生とSDGsーこの日本発のメッセージが説得力をもてれば、すばらしいですね。

次号以降の予告、次号のSDGsはSDGs時代の森林×企業シンポジウム~持続可能な社会づくりに向けた、新時代の企業の森づくり・木づかい~、総選挙という国民イベントの中で、持続可能な森林がどんな取り扱いになったか、、関係する林業経済研究所が70周年記念イベント国土と森林・・・

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最後までお読みいただきありがとうございました。

藤原敬 fujiwara@t.nifty.jp

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