「持続可能な開発目標」と森林(2012/8/18)



リオ+20の中で、2015年までのミレニアム開発目標MDGsの後を受けて持続可能な開発目標(SDGs)を作成することが決まりましたが、この作成作業の中で森林に関する目標がどう取り扱われるかが、注目点です。

(ミレニアム開発目標の背景)

先輩にあたるミレニアム開発目標について見ておきましょう。

1980年代に主流だった市場に基礎をおく途上国の開発計画が貧困拡大などの社会問題を生み出した反省にたち、90年代に貧困の撲滅などの議論が進み、その成果と、2000年9月の国連ミレニアムサミットでの国連ミレニアム宣言の二つを統合し、2015年までの目標としてミレニアム開発目標MDGsが策定されました。

この辺は外務省にわかりやすい解説ページがあります
国連のMDGsページ(英語)

それが途上国の開発目標として一定の成果を上げてきたので、さらに枠組みを広げて先進国を含めた2015年を出発点とした持続可能な開発も目標を策定しようというものです。

(ミレニアム開発目標の内容と森林)




ミレニアム開発目標は8つの目標(ゴール)、21のターゲット、60の指標からできています(MDGsの一覧表はこちら)。

骨子となる目標は、@極度の貧困と飢餓の撲滅、A初等教育の完全普及の達成、Bジェンダー平等推進と女性の地位向上、C乳幼児死亡率の削減、D妊産婦の健康の改善、EHIV/エイズ、マラリア、その他の疾病の蔓延の防止、F環境の持続可能性確保、G開発のためのグローバルなパートナーシップの推進の八つです。

上記にような背景から途上国で緊急に達成すべき社会問題の克服という課題が並んでいます。

その中で森林にかかるものは7の目標:環境の持続可能性確保でそのターゲットと指標は以下のようになっています。

目標 ターゲット 指標
Goal7
環境の持続可能性確保
Ensure environmental
sustainability
ターゲット7.A:持続可能な開発の原則を国家政策及びプログラムに反映させ、環境資源の損失を減少させる。


ターゲット7.B:生物多様性の損失を2010年までに確実に減少させ、その後も継続的に減少させ続ける。
7.1 森林面積の割合
7.2 二酸化炭素の総排出量、一人当たり排出量、GDP1ドル(購買力平価)当たり排出量
7.3 オゾン層破壊物質の消費量
7.4 安全な生態系限界内での漁獲資源の割合
7.5 再生可能水資源総量の割合
7.6 保護対象となっている陸域と海域の割合
7.7 絶滅危機に瀕する生物の割合
ターゲット7.C:2015年までに、安全な飲料水及び衛生施設を継続的に利用できない人々の割合を半減する。 7.8 改良飲料水源を継続して利用できる人口の割合
7.9 改良衛生施設を利用できる人口の割合
ターゲット7.D:2020年までに、少なくとも1億人のスラム居住者の生活を改善する。 7.10 スラムに居住する都市人口の割合

(MDGsの評価)

外務消のサイトにMDGsの達成状概要が掲載されちます。地域ごとに主要な指標ごとの達成状況の評価がされています。毎年公表されている国連ミレニアム開発目標報告(2011英語版(PDF)2010日本語版(PDF))などによりものです。

UNDPが作成しているMDGMoniterというサイトでは、さらに詳しい国ごとに8つに目標がそれぞれ達成しているかどうか、掲載されています。(国ごとの評価ページ

(図)MDGsの達成状況


外務省関係ページよりhttp://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/doukou/mdgs/about.html#report

もっとも進展なしの地域が多いのが森林破壊防止の項目です。

このように、MDGsは、複数の分野を包括した数値目標の設定、達成期限を明確にし、透明性のある評価システム、これにむけて基金の設立など具体的な動きになっていることが評価されたものです。

2012 年6 月1〜2 日 ポストMDGs ワークショップBackground Paper、地球システム制約下のポストMDGs 策定へ向けた動向−持続可能性目標(Sustainability Goals)へ向けて−
が参考になります

ポストMDGsに関する提言
1. グローバルなベンチマークを設定し、トップダウンではなく、ボトムアップで各国の状況に即した現実的で明確な目標の設定。
2. 行為主体間の連携や役割の強化、特に指標の設定の際にはローカルレベルの声をグローバルレベルに反映させるような仕組みの強化。また、その際の途上国の声を反映させる仕組みの構築。
3. 気候変動問題や人権問題などの、重要課題も含めたユニバーサルな目標設定。現行のMDGsの枠組みでは、気候変動、エネルギー安全保障、生物多様性の喪失、防災及びレジリエンス(対応力)の強化といった課題に十分対応できていない。
4. 中間目標(intermediate)目標を定め、目標達成の基準を明確化
Poku et al. 2011; Moss 2010;Verdenmortele2011; Guardian2010

(「持続可能な開発目標」の提案)

これらを受けて、さらに枠組みを広げて、先進国を含めた2015年を出発点とした、「持続可能な開発も目標」を策定しようという考えが、コロンビア政府グアテマラ政府の両政府から提案されました

その後、ペルー政府も含めた3カ国提案(2011年11月)となり、リオ+20の準備会合の中で、具体的な議論がされてきたものです。二つの提案の中で目標に当たる項目は、表の通りです。

2国提案 3カ国提案
Combating Poverty
Changing Consumption Patterns
Promoting Sustainable Human Settlement Development
Biodiversity and Forests
Oceans
Water Resources
Advancing Food Security
Energy, including from renewable sources
Food security
Energy access, including with renewable sources
Oceans, including fisheries
Sustainable human settlements (cities)
Water, integrated management

成果文書にもあるように、「できるだけシンプルに少数の指標をつかって」という議論があり、最初の提案にあった森林が、3カ国提案ではなくなっています。

今後国際政治の主流となりそうなこの開発目標の中に、森林の目標を具体的に設定できるのか、持続可能な森林の面積など定義が不明確なままに森林分野の目標に掲げられている事項が、この枠組みの中で記載できるのか。森林の持っている経済、社会、環境にすべてにわたっているトータルなサービルをバランスよく記載することができるのか。今後の国際政治の中で森林の管理が優先順位を上げていく上で重要な課題と思います。

既存の持続可能性指標や森林力指数などの研究成果の結集が必要だと思います。

(作業パネルメンバー)

リオでは秋の国連総会までに作業パネルを設置し、来演の国連総会に検討結果を報告するとしています。

そのメンバーが8月上旬発表されました(ポスト2015年開発目標に関するハイレベルパネルへの菅前内閣総理大臣の参加)。与党の森林林業調査会の会長をつとめる管前総理が国際的な場でどのような役割を果たすのか注目です。

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