ニュースレター No.149 2012年1月28日発行 (発行部数:1224部)

このレターは、「持続可能な森林経営のための勉強部屋」というHPの改訂にそっておおむね月に一回作成しています。

情報提供して いただいた方、配信の希望を寄せられた方、読んでいただきたいとこちら考えて いる方に配信しています。御意見をいただければ幸いです。 
                                                    藤原

目次
1 フロントページ:里山資本主義vsマネー資本主義(2012/1/22)
2. グリーンエコノミーと森林勉強ノート(1)リオ+20へのOECD提出文書(2012/1/22)
3. TPPの環境協定と違法取引・違法伐採問題(USTRの提案)(2012/1/29)
4. マスコミにおける気候変動と生物多様性の出現頻度(2012/1/22)
5. COP17気候変動枠組み条約ダーバン会合と森林・木材吸収源改訂(2012/1/28)

フロントページ:里山資本主義vsマネー資本主義(2012/1/19)

NHK広島放送局が作成し中国地方のローカル向けに昨年放映された、「里山資本主義 〜革命はここから始まる〜(1)」という番組が、NHKエコチャンネルというサイトから閲覧できます。

身の回りの豊かな自然から食料や燃料を手に入れ、自立した生活を送る、そんな里山の知恵を生かした中国地方の動きを、オーストリアの先進事例の取材と連携して提示している、スケールの大きな番組です。

出だしはギリシャのデモ隊の映像から始まります。NHKが09年に特集で取り上げた、マネー資本主義(小サイトで指摘してきた経済=投資のグローバル化と社会制度のグローバル化の矛盾の現れの一つ)のアンチテーゼとして里山資本主義が置かれていて、その初回のテーマが木質バイオマスエネルギーの可能性。

オーストリアのハンガリー国境沿いの農村地帯の町ギュッシングは、EU拡大、通貨ユーロへの統合で農産物生産をあきらめざるを得なかった中で、近郊に放置された里山からの木材を原料とした木質ペレットによるエネルギー供給体制を行政主導で作り上げてきました。
(ギュッシングについては神崎康一オーストリア・ギュッシング地域の100%自然エネルギー化の取り組み参照)

それと対置する中国地方の木質エネルギー利用の先例が岡山県真庭市の銘建工業の取組。社長が主人公の一人になっています。

この方向が社会を動かすまでになるには、再生可能エネルギーの原料価格の設定など重要な課題がクリアされなければならないはずですが、今年は再生可能エネルギー電力の買い取り制度、地球環境税など具体的な一歩が踏み出される年でもあります。

一見の価値があります。
「里山資本主義 〜革命はここから始まる〜(1)」

司会役は(地域ジャーナリスト)藻谷浩介 実測日本の地域力(日経新聞)、デフレの正体(角川新書)

energy1-13<satoyamacap>


グリーンエコノミーと森林勉強ノート(1)リオ+20へのOECD提出文書(2012/1/22)

リオ+20の中心テーマの一つとなるグリーンエコノミーは各国の森林政策に関連する可能性のある事項で、持続可能な森林管理の国際化の将来に向けて、この分野の議論の展開は重要な意味があると思います。

会議に向けて、関連する文書の紹介をしていきます。今回は、この分野での研究・普及の中心となってきたOECDがリオ+20向けに提出した文書と関連する資料です。

OECD secretariat: Inputs to the RIO+20 com;ilaton Document(原文英語)(前書きを和訳します)

重大化する経済と環境における課題に直面し、グリーン成長を推進する必要性が近年高まっている。リオ+20はこれに弾みをつける機会であり、各国に持続可能な開発と貧困の解消にむけた努力を促す機会である。

OECDは各国がリオ+20において積極的な合意をして協定への道を歩む手助けをすることとしている。どのような合意になろうとも、以下の点が含まれることが必要である。
・達成に必要なコスト効率的で実施可能な政策
・進捗を評価できる信頼のできる指標とデータの確立
・進捗を評価し、政策変更のガイドラインを提供
・国際協力を推進するための共通の土俵を確立

OECDのリオ+20への貢献は、2050年に向けての国際的環境の概要、グリーン成長戦略に関連する政策ガイドラインの提供、気候変動、生物多様性、水、汚染の4分野における人口と経済に及ぼす影響。

OECDはグリーン成長は、持続可能な発展における経済と環境の面を推進する実施可能で柔軟な対応であると考えている。この戦略は自然の資産が経済的な可能性を十全にまた持続可能に提供することになりだろう。その可能性に含まれるのは、清浄な大気、水、活力ある生物多様性など食料生産や人間の健康を支える諸処嘘である。

グリーン成長の実施度合いの全てを表現する一つの指標はない。政策と制度の実施、開発、資源依存性、特定の「環境圧迫箇所」の程度による、発展途上国は別の課題に直面するだろう。OECDは発展の違う国に応じた政策の選択について、議論をする。

2011年5月公表したOECDグリーン成長戦略(Towards Green Growth(報告書原本英文pdf))は、多くの国に歓迎された。

グリーン成長戦略は、グリーン成長の源泉、政策枠組みを提供するもの。この提出文書はこれらの成果の中から採択文書に取り入れられるべき事項を記載している。

OECD報告書グリーン成長に向けて(2012/5)
Towards Green Growth(報告書原本英文pdf)
Towards green growth: A summary for policy makers (PDF)(政策作成者向け要約、英語)
JOECD報告書グリーン成長に向けて政策作成者向け要約

関連文献・サイト(英文)
Capozza, I. (2011), "Greening Growth in Japan", OECD Environment Working Papers, No. 28, OECD
Publishing
. www.oecd-ilibrary.org/environment/greening-growth-in-japan_5kggc0rpw55l-en

Environmental Statistics and Indicators: www.oecd.org/env/indicators
Measuring Progress in Societies:
Measuring sustainable development, UNECE, OECD, Eurostat (2009):
Measuring the Relationship between ICT and the Environment (2009):
Sustainable Manufacturing Toolkit (2011):

kokusai0-2<rio+20oecd>


TPPの環境協定と違法取引・違法伐採問題(USTRの提案)(2012/1/29)

本サイトでTPPの環境協定について紹介していきました(環太平洋戦略的経済パートナーシップ協定の環境協定)が、米国のUSTRが今後のTPP交渉に向けて違法伐採問題への対応を中心とした緑の文書(Green Paper)を公表しました。

USTR Green Paper on Conservation and the Trans-Pacific Partnership(本文英文)

米国はTPPの環境に関する章に以下の事項が含まれることを提案する
  • 各国の法令で、野生生物・森林・水産物の保護を目的とする法律に違反して伐採、輸出されるものがTPP参加国の国境を越えることを法令を整える
  • TPP参加国内の密売の禁止に関する義務に関する情報提供
  • TPP参加国の法令担当者による、「密売禁止義務にかかる、ワーキングぐる婦の設置、情報交換担当者、会合、地域的は豊凶課のネットワークの設立参画などの協力
  • 違法伐採・生物の違法取引に対処し、サプライチェーンの管理を進めるため、NGO,民間会社、学会、地元住民など、との協力を進める

日本の木材・木材製品の合法性、持続可能性の証明のためのガイドラインなどが提起しているサプライチェーンの管理というコンセプトが注目されることになってくると思います。

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マスコミにおける気候変動と生物多様性の出現頻度(2012/1/22)

1992年の地球サミットでともに出発した、気候変動枠組み条約と生物多様性条約は、国際環境条約(環境的課題のグローバル化)として重要な役割を果たしています。

この二つの条約が提示する課題の関心度合いを知る指標として、朝日新聞記事データベースで、「気候変動」「生物多様性」という単語をふくむ記事がどの程度出現しているか、推移をみたのが、以下の表です。

2009年までは、「気候変動」が、京都議定書という我が国に特に関係ある合意事項が重要な役割を果たしていること、そして、温室効果ガスの排出量という、総合指標を目標にしているわかりやすさ、の二つが理由となって、生物多様性よりも頻度が一貫して高くなっていました。

2010年に生物多様性条約第10回締約国会合が名古屋で開催されたのを機会に少し方向が変わってきたといえるかもしれません。

リオ+20の等で生物多様性の指標化の議論がどこまで進むか、その辺がポイントになると思われます。

気候変動  生物多様性
1984 0 0
1985 3 0
1986 6 0
1987 8 0
1988 16 0
1989 80 0
1990 126 0
1991 83 1
1992 120 104 地球サミット、生物多様性条約、気候変動枠組み条約採択
1993 36 26
1994 36 13
1995 62 43
1996 104 32
1997 914 66 気候変動枠組み条約締約国京都会合、京都議定書採択
1998 216 43
1999 81 54
2000 173 64
2001 265 65
2002 83 81
2003 63 70
2004 72 51
2005 112 57
2006 95 69
2007 445 103 京都議定書発効
2008 592 281
2009 638 342
2010 363 1034 生物多様性条約締約国名古屋会合
2011 193 224
2012 ? リオ+20

kokusai0-2<asahikijisu>


COP17気候変動枠組み条約ダーバン会合と森林・木材吸収源改訂(2012/1/28)

先月掲載した「COP17気候変動枠組み条約ダーバン会合と森林・木材吸収源」は、大会の決議の関係部分がタイミングよく訳出されいたため、多数引用され、会議の資料に配付されるなど、関係者から大きな反響がありました。

ただ、一カ所重要な翻訳ミスがありました訂正をします。全く正反対の意味に誤訳をしていました失礼しました。

26 Each Party included in Annex I shall account for all changes in the following carbon pools: above-ground biomass, below-ground biomass, litter, dead wood, soil organic carbon and harvested wood products. With the exception of harvested wood products, a Party may choose not to account for a given pool in a commitment period, if transparent and verifiable information is provided that demonstrates that the pool is not a source (正)
付属書1の締約国は、以下の炭素貯蔵庫の全てについてその変化を計測する必要がある。地上のバイオマス、地下のバイオマス、落葉落枝、故損木、土壌有機物、伐採後の木材。伐採後の木材を例外として、他の貯蔵庫については、約束期間中、もしも明確にその貯蔵庫が排出源となっていないという明確な証拠を提示すれば、計測しないこともできる。
(誤)
付属書1の締約国は、以下の炭素貯蔵庫の全てについてその変化を計測する必要がある。地上のバイオマス、地下のバイオマス、落葉落枝、故損木、土壌有機物、伐採後の木材。伐採後の木材ついては、例外的に、約束期間中、もしも明確にその貯蔵庫が排出源となっていないという明確な証拠を提示すれば、計測しないこともできる。


最後までお読みいただきありがとうございました。

藤原敬 fujiwara@t.nifty.jp

 

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