環太平洋戦略的経済パートナーシップ協定の環境協定(2011/10/29)(11/1改訂)
 

11月中旬にハワイで開かれるAPEC(アジア太平洋経済協力会議)に向けて、環太平洋戦略的経済パートナーシップ協定TPPの参画問題が急ピッチな展開を見せています。

各省が、参加した場合しない場合の得失をそれぞれ国益という観点から提起していますが、政府が国益を考えるのはそれが仕事ですので、そういうレベルで議論が進展するのは当然ことです。

農林水産省試算  内閣府試算  経済産業省試算

ただし、関税を含む国境措置が果たしてきた社会的・文化的意味合いを、物やサービスの交流のグローバル化という方向と折り合いをつけるということは、各国の共通した課題であり、国と国との損得勘定を超えた新しい国際関係の構築という側面をこのサイトでは見ていきたいと思います。

その意味で、TPPが注目されるのは関税撤廃を中身とする経済連携協定ですが、その中に環境協定が含まれていることに着目します。

貿易を管理する国境措置を減らして物とサービスのグローバル化を進め、資源の配分の効率化をはかり社会的厚生を高めていく、ということが、経済連携協定の基本理念でしょうが、経済が統合される中で社会の管理シツテム(行政)が統合されないという基本的な問題が浮上してきます。

経済のグローバル化が、食料安全保障という社会的役割を果たしている農業の破壊や、生産過程での環境破壊を世界中に拡大する可能性を持っていながら(TTP交渉と我が国の環境対策)、安全保障のグローバル化、環境管理のグローバル化がそれについて行っていないという問題です。

この辺のところはTPP側も意識していて、その現れがTPPの環境協定です。ENVIRONMENT COOPERATION AGREEMENT AMONG THE PARTIES TO THE TRANS-PACIFIC STRATEGIC ECONOMIC PARTNERSHIP AGREEMENTこちらに全文

実質的な内容の部分は以下の通りです
Article 2: Key Elements/Commitments

1. The Parties reaffirm their intention to continue to pursue high levels of environmental protection and to fulfill their respective multilateral environment commitments and international plans of action designed to achieve sustainable development.

2. Each Party shall endeavour to have its environment laws, regulations, policies and practices in harmony with its international environment commitments.

3. The Parties shall respect the sovereign right of each Party to set, administer and enforce its own environmental laws, regulations and policies according to its priorities.

4. The Parties agree that it is inappropriate to set or use their environmental laws, regulations, policies and practices for trade protectionist purposes.

5. The Parties agree that it is inappropriate to relax, or fail to enforce or administer, their environment laws and regulations to encourage trade and investment.

6. Each Party shall promote public awareness of its environmental laws, regulations, policies and practices domestically.
第二条 主要な項目、約束

1. 各国は高いレベルで環境を保全し、国際的な環境についての約束、持続可能な発展を実現するための国際使命を達成することの意図を再確認しすること


2.各国は国際的な約束と調和のとれた環境法、政策、慣行を保持するようつとめべきである




3. 各国は各国の優先順位に従って独自の環境法冷政策を実施するための主権を尊重する



4. 保護貿易の目的で環境法・政策・慣行を定めることは不適切であることを認めめる



5. 貿易と投資の奨励のために、環境規制を緩和しあるいは規制を施行しないことは不適切であることに同意しする


6. 各国は各国内で、環境法令、政策、慣行の重要性を普及する

経済のグローバル化側の「関税自主権の放棄」という具体的内容に比べて、環境管理の側がきわめて抽象的な取り決めになっているのが問題です。

もちろん、この条約agreementの下に具体的な取り決めを積み重ねていくことは(理屈の上では)可能でしょう。

この場合、少なくとも、
@違法伐採問題に関する共通認識と共同した国境措置の制度化、
A米国がカナダ産針葉樹製材に課税している製材ダンピング問題の国際化・制度化
など、木材の貿易に関しても、最低二つの事案は関税撤廃と同時に解決しておかなければならない課題でしょう。

経済連携協定のグローバル度の不足な点、経済連携協定が経済社会連携協定とならなければならないという面についての問題提起でした。

現時点で発効しているTPP協定の文書(ニュージーランド政府)

boueki7-3<TPPkankyo>

 
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