森林施業計画認定基準とFSC認証基準の隙間(2002/8/11)

7月下旬、地域材認証の仕組みを検討している愛知県東三河材の関係者が、FSC森林認証の規準適用の模擬テストをする機会に立ち会いました。「地域材認証にグローバルスタンダードの視点を」と提唱している小生にとっては、大変興味のあるイベントでした。

FSC側からは日本基準のワーキンググループ座長の富村さん、木材流通認証(coc)の専門家である認証機関SGSの佐々木さんが参加し、地元の側からは、愛知県の県事務所、三河材流通加工センター・ホルツ三河、NPO穂の国の森づくりの会、関係森林組合などの関係者が参加しました。FSCとしては日本基準の草案を現場でチェックしてみる機会であり、地元の側としては地域材認証基準にFSCのハードルを課すとどんな問題が起きるかということを実感する機会、と双方にとって大変有益な作業でした。

議論は、入り組んだ地権者の関係から伐採量の水準まで多岐にわたりましたが、ここでは森林施業計画認定とFSC認証の関係についての議論を紹介します。

森林施業計画とは、森林法に基づき全国森林計画を頂点として組み立てられている我が国の森林計画制度の一番現場よりの計画制度のことです。森林所有者が自発的に作成し市町村長の認定を受けることが出来ることとなっています。認定された施業計画に沿った事業についての助成制度があり、森林計画を現場段階で実行あるものにする大切な制度です。

この認定基準は国が定めていますが、この基準と、FSCの認証基準とがどんな関係になっているかが、小生にとっては重要な関心事でした。丁度この4月から、昨年成立した森林林業基本法の理念に基づき森林施業計画の制度が、大幅な変更がなされたばかりでした。水土保全林、共生林、資源循環林と三つに区分された森林ごとに認定基準が新たに設定され、規準の考え方も大きく変わりました。県の担当者は「今回の基準の変更で、森林施業計画の認定基準が大幅にFSCの規準に近くなった」と話をされていたのが印象的でした。そして、県の研修会用に作成したばかりの資料を基に説明していただきました。(森林施業計画の認定基準関係資料→資料室へ

今回の改正で重要なのは、第一に、今までの伐採規準は高齢林をどんどん伐採しなければならないという仕組みになっていたのが、基本的には平均成長量に基づくものになったったこと、第二に、森林所有者だけでなく委託を受けた場合森林組合も策定主体となれるようになったこと、です。

施業計画の認定規準をクリアすることで、FSCに認定基準のかなりの部分をカバーできるのではないか、というのが小生の考え方です。施業計画の認定基準がFSC認定基準のどれだけをカバーしているかは、FSC認証が日本の森林を対象に検査する場合FSC原則のどの部分にどの程度力を入れるか(a)、そしてそれぞれに森林施業計画がどの程度カバーしているか(b)、という二つのパラメーターから計算できるはずです。

過去の我が国のFSC認証実務に参加してきた冨村さんの模擬テストでの発言をもとに、それぞれのパラメーターを、小生が「おおよそこの位」と判断(独断)した結果を下表にまとめてみました。計算結果は55%という数字となりました。

FSCの認証基準規準 森林施業計画認定基準 axb 残り
ウエート(a) カバー率(b)
法律の順守 5 - 0 5
保有権、使用権及び責務 5 資源調査 100 5
先住民の権利 - - 0
地域社会との関係と労働者の権利 5 - 0 5
森林のもたらす便益 25 植栽、主伐の時期、伐採立木材積 80 20 5
環境への影響 25 間伐、森林の機能区分 50 13 12
管理計画 20 森林施業計画書 80 16 4
モニタリングと評価 10 - 0 10
保護価値の高い森林の保護 5 - 0 5
植林 - - 0
全体 100 55 45


これを多いと見るか少ないと見るかは判断が分かれるところです。重要なのは、残りの45%を埋めるのに必要なのは、大きな金銭の負担でななく、森林管理の責任者(資源管理者)の努力と工夫だということです。

次の三点についての検討が行われその結果が施業計画書かその付属文書にきっちり書き込まれているということで、半分がクリアされ、その内容が関係者全員に共有されているということで残りの半分がクリアされると思います。

第一に、地域社会や環境、長期的な林業の継続などに配慮した森林施業の理念、

第二に、財政的な面や環境を配慮した伐採量や伐採区域の考え方、

第三に、その他環境や地元社会に貢献するために配慮している事項。

もとより、FSCとしての正式のコメントではありませんが、当たらずといえども遠からず、今後の認証を考えている方々、様々な認証基準を開発中の方々に参考になれば幸いです。