国民森林会議の2007年度 提言
森林林業基本法の策定など大きな林政の節目のときに提言をしてきた、国民森林会議(只木良也会長)が、8月下旬林野庁長官に対して、新たな提言書を提出しました。今回のテーマは特に森林林業の担い手で、森林組合などに担い手の技術者をどのように配置していくかについての提言になっています。

以下に要旨を転載します
本文は、同会のHPからダウンロードできます(こちら

森林・林業の担い手
要旨

国民森林会議2007 年度提言

これからの森林・林業の担い手は、持続可能な森林の管理・経営のビジョンを待つものでなければならない。木材生産を目的とする林業の再生には、経営者と技術者の質・量のレベルアップに基づいた、生産システムの向上が必要である。同時に、木材生産以外の公益的機能も今後ますます要請されるので、森林の生態的機能を理解し、適切な森林管理のできる担い手と技術者が必要である。

これからの林業(生産林の管理・経営)においては、個々の森林所有者の力だけでなく、地域(森林組合の管轄域程度)の森林所有者の連携が必要である。地域の林業の振興のためには、消費者との信頼関係を築きながら合理的な生産システムを築いていくことが不可欠であり、計画的な施業体系の展開を図るために経営の団地化、施業・経営の委託の必要性が大きい。現状において、全体としてみた場合、それに最もよく対応していけるのは、森林組合であり、そこの経営者、技術者の意識改革と技術の向上が問われる。将来は林業会社などにも期待される。

近年、森林組合が森林所有者に施業提案を行い、所有者の森林を取りまとめて路網の整備や間伐を進めていく提案型集約化施業において、森林施業プランナーと呼ばれる技術者が生まれつつあるが、このような技術者はこれからの林業技術者像のモデルの―つとなろう。森林施業プランナーは、森づくりのビジョンを持ち、間伐の仕方や路網の設計などに開する商い知識を有し、コスト計算に通じ、経営を理解し、森林所有者の要望を聞きつつ、所有者への説明能力を待つ人である。このような技術者の力は林業会社においても必要であるし、所有者への提案ということを除いては個々の林業家にとっても必要である。森林施業プランナーは、将来建築界における設計士のような資格者に通じる可能性もあり、フオレスターの具体的な一つのイメージとなろう。

森林所有者の実態に照らせば、今後は森林組合や林業会社など(以下森林組合)に施業を委託する必要が増していくであろうし、そうしたときの森林組合の森林施業プランナーをはじめとする技術者のレベル向上は非常に重要である。森林組合の経営や技術が森林所有者の信頼を得られなければ、日本の林業は成り立たないといっても過言ではない。

近年、新規林業就業者の過半数がIターン者であり、Uターンを入れると8割強が都会からの就業者である。この人たちの多くは森林組合の作業班に就職しているが、彼らへの技術教育の責任と、林業への志の芽を摘まないことなどへの森林組合の意識改革と、近代的な組織としての処遇のあり方の改善が必要である。組合技術者の育成には、組合幹部の意識改革が不可欠であり、技術者の研修だけでなく幹部の意識改革に向けた公的な研修も必要である。林業界の中の常識にとらわれないように、異業種との交流も求められ、組合幹部の異業種へのマーケッティングなどを含む研修も検討する価値がある。

都会から林業を志してくる人たちは、金儲けよりも生きがいや社会貢献を目指してくる人たちが多い。このような人たちが真に誇りを持って働ける環境づくりが必須で、一定条件を満たせば正規の職員とし、普通一般の生活レベルが得られることを理想とする。そのためにも経営と技術の向上に努めることは重要であり、森林組合などの幹部の意識改革をこの点でも求めたい。

NPO は、森林所有者、森林組合、林業・林産会社、消費者、そして行政との関係において、個々の事業体や行政などではなし得ない部分において活動するところに意義がある。

これからは、地域ごとの自主的な森林管理が重要になってくるが、ほとんどの市町村には、森林・林業の専門の職員がいないのが実態である。したがって地域の森林管理のあり方については、知識や関心の高い市民が行政と良好な関係を築きつつ、森林組合などとも一体となって取り組んでいくことが必要である。 NPO には特に環境林の扱いなど、地域の森林のバランスの取れた各種機能の発揮に貢献することが求められる。それらのためにNPO が果たすべき役割は大きく、実力あるNPO の育成と充実への支援は重要である。

個々の森林所有者、森林祖合、林業会社、NPO などへの技術的指導やコーディネートに当たる公的な林業普及指導員の質・量の向上が必要である。現状では、担当者は部分技術の専門家のままであったり、他事業の増大によって普及事業に専念することが困難な状態にある。新たな時代のニーズに応じた林業普及指導員の資質の向上とともに、彼らが普及事業に専念できる環境作りが重要である。また、市町村レベルでは、専門的な知識を持った職員を配置することは極めて困難であり、こうした自治体への国・県職員の出向なども制度として視野に入れておかなければならないだろう。

新たに林業に就職してくる人たちへの技術指導は、職場においてもなされるべきであるが、公的な場での指導の拡大充実が必要である。この場合、研修教育の指導者が決定的に不足している。作業技術を実践して示せ、かつ体系的に分かりやすく説明できる指導者を育成することが先決である。

農林高校などでの実践教育の充実は重要である。大学の森林科学分野では、学問的教育がほとんどであるが、実践教育をどのように位置づけていくかは重要な課題である。さらに義務教育を含む一般教育においても、自然への理解、一次産業の意義、一次産業技術者の使命などを理解できることに通じる教育のあり方は重要である。森林・林業技術者が若者を惹きつけるような環境づくりが必要である。

林業を含む一次産業の重視は、日本社会の健全化のために不可欠であり、その担い手と技術者の育成はきわめて重要である。特に林業は日本の社会から置き去りにされてきた感があるが、それに対しては林業関係者自らの奮起が必要である。日本の恵まれた水と太陽からなる自然を活かした産業を自立させることは、国民の責務である。自然の中の様々な条件の下で、自ら考えて技術を駆使していける森林・林業技術は知識集約的で、本来非常にやりがいのあるはずのものである。林業の担い手と技術者を、若い人があこがれ、誇りを持って働けるものにすることが肝要である。
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