地球温暖化防止と森林の役割(国民森林会議から(2009/10/24)

持続可能な森林管理についての研究蓄積を活かした政策提言を続けている国民森林会議の代表をされている只木良也先生(名古屋大学名誉教授)から、表記の論文と以下の説明文をお送り頂きました。

(本文は国民森林会議のサイトから

森林の炭素吸収機能と固定機能の二つを分けて考え、若齢から高齢の森林群を適正に配置して、バランスよく両立させることが重要という主張です。重要な視点だと思います。

さらに、来年の日本における生物多様性条約の締約国会合に向けた具体的な提案を期待します。

 昨年度の提言書「地球温暖化防止と森林の役割」について、八月二七日島田泰助林野庁長官、小林正明環境省大臣官房審議官に説明した。当日は只木会長、藤森提言委員長、山田事務局長らが出席、林野庁は古久保職員・厚生課長、環境省は平之山環境影響評価課長が同席した。

 只木会長は、この問題に関する社会一般の理解は不十分で、また誤りもあるので、正確な知識を提示しておくことこそ大切と考え、この提言書とした、と前置きして、提言のあらましを次のように説明し、藤森提言委員長が補足説明した後懇談した。(提言は本会会誌「国民と森林」第109号に掲載)

森林・木材による温暖化防止策として次ぎの四つが重要点である。
@ 森林生態系の炭素貯蔵量増加・維持。 A 炭素吸収速度増加。 B 木材利用で製造過程のエネルギー減・炭素貯留。C木質エネルギー利用、カーボン.ニュートラル。
すなわち、非循環の化石燃料から循環型の森林・木材システムへの転換。地産地消によって輸送エネルギー削減にも貢献する。

森林は吸収した二酸化炭素を蓄積することによって、水土保全・環境保全などさまざまな機能を提供するが、物質生産機能(炭素吸収)と環境保全機能(炭素貯留)は、一つの森林では両立しない。若齢から高齢の森林群を適正に配置して、バランスよく両立させることが重要である。しかし現在は、炭素の吸収にのみ関心が払われる傾向がみられ、炭素の吸収量が少なくなった高齢林や天然林を軽視する危険性もある。高蓄積の森林をうまく活用する長伐期林業を指向すべきではないかというのが、この提言の概要である。

 近年問題視される「間伐手遅れ」問題は、森林の不健全化による将来の各種機能低下に対する懸念に基づいている。間伐によって林分葉量は減るので、間伐は直接二酸化炭素吸収量を増やすものではなく、むしろ一時的に減少させる。したがって、諸機能の持続性という長期的視点からのプラス効果が大切ということを十分に説明しなければならない。

我が国は木材自給率2割程度、8割は他国で炭素を吸収した木材を、輸送エネルギーを消費して輸入し、国内で炭素をはき出させている。森林国の日本にとって、これほど不合理なことはない。木材の自給率を高めることは、二酸化炭素削減のうえでも重要な課題である。

欧州で始まった「カーボンオフセット」は、やむなく排出した二酸化炭素を、それに見合った活動や投資で相殺(オフセット)することである。 活動・投資先の一つとして森林整備もあるが、この方式が普及すれば、金銭での安易な解決法とされたり、金融関連のマネーゲーム化する危険がある。また将来、諸事情変化して、分収育林の前例のような、森林側が誹謗される事態を招かぬよう警戒すべきである。

 藤森委員長は、若齢林から高齢林までの森林の発達段階における構造の変化を説明した。その中で@木材生産を重視して人工林を作り純生産速度、吸収速度を高めること、A天然林を流域全体として適当に配置する、B人工林の管理は長伐期化することの重要性などを指摘し、「森林の多面的機能を求めていけば地球温暖化に役立つ」と結んだ。

 島田林野庁長官は、「お話はその通りだと思いますので、異論を差し挟む余地はありません。皆様のご意見を伺いながら、森林・林業施策を進めていきたい」と述べた。

 小林審議官は「森林は百年単位で見ていかなければならないことがよくわかりました。地球温暖化対策も長期展望に立つ点で森林と同じです。地球環境担当者に森林の問題をよく勉強するように伝えます。引き続き助言をいただければありがたい」と述べた。

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