「新国立競技場」の木材利用。ロンドンに学びそれを超えて世界に何を発信するのか?(2016/1/17)

12月22日、2020年東京五輪・パラリンピックの主会場となる新国立競技場が、「木と緑のスタジアム」を主なコンセプトにしたA案(大成建設・梓設計・隈研吾建築都市設計事務所共同企業体)となることが公表されました。

新国立競技場整備事業 優先交渉権者の選定結果

(木と緑のスタジアムの中の木材)

「日本の伝統的な木構造を現代の技術で甦らせ、世界に向けて発信します」技術提案書新国立競技場整備事業提案書ー日本らしさに配慮した計画2/3)としているように、観客席の上部の大屋根が鉄筋と集成材の混構造になっており、下部のスギとカラマツの集成材が観客を包むようにデザインされているところが、「木と緑のスタジアム」のデザイン上のポイントになっています。提案書施設計画の概要1/3

「新国立競技場の整備計画」(8/28)第4回新国立競技場整備計画再検討のための関係閣僚会議
技術提案を求める課題、審査方法等について(新国立競技場整備事業の技術提案等審査委員会

「木材を使った大規模建築」の新国立競技場(!)ができるのですが、もともと、「技術提案を求める課題、審査方法等について」(新国立競技場整備事業の技術提案等審査委員会)の中で、加点要素として「日本らしさを考慮した計画(日本の気候、風土、伝統をふまえた木材の利用の方策)」と記載されており、その背景には公共建築物の木材利用促進法があります。また、公募の過程で、日本建築士会連合会の新国立競技場における「木造の屋根架構に向けた提言」(2015/8)、政府内での2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会における 木材利用等に関するワーキングチーム(2015/10)」、などの動きがそのあとを押したことでしょう。

(ロンドンオリンピック・パラリンピックの伝説から学ぶ)

オリンピック施設の木材調達では、森林認証材の普及がはかられ、ロンドン大会2012では木材使用料中の認証木材割合約95〜100%で建設されたといわれています。特にロンドンで注目されたのは、FSCとPEFCの二つの国際潮流の森林認証システムが合同して取り組みを進めたことです。

オリンピックサステイナブルサプライチェーン(FSCジャパン事務局)
Learneng Legacy-Lessons learned from the London 2012 Games construction project. Dr Ed Suttie Director of Timber, BRE (英文)

ロンドン大会では、自転車競技のトラックに使われるロシアのシベリアマツから、外壁に使われる南米のルーロベメッロ(Louro- Red )に至るまで、世界中の木材を利用するため、持続可能なサプライチェーン管理を怠ると決定的な批判に直面するリスクがあった」(Learneng Legacy)とされています。

東京大会でのその流れをどのように引き継のかが、課題のひとつであることはまちがいないでしょう。。

林野庁が森林認証取得を支援
新国立競技場の知られざる不安。デザイン案にある木材は調達できるのか?

(ロンドンを超えて何を発信するのか?)

東京大会の新国立会議場は、「国産材で和のおもてなし」ということなので少し心配なことがあります。、「こんなことをできるのが日本ですよ(ほかにはないからまた来てね)」、というのでなく、「こんなことをしましょうね」、という世界への発信(ロンドン大会の神髄)、なにができるかです。

その一つが前述の木材の持続可能な管理に関する情報提供ですが、その他に今回のプロジェクトでロンドンでできなかった、二つの情報発信があると思います。

(ローカルウッドとしての国産材)

ロンドンでできなかった重要な点の一つは、国立競技場で使われる木材が国産材であるということです。ただ、「日本でやるのだから、日本産の木材で建てたのだ」、というのでは、なんの発信力もありません。大切なことは国境の中と外という意味での国産ではなく、プロジェクトに近いローカルウッドであり、産地が明確で、環境に優しい、ということです。

日本では、国産材マーク都道府県産材認証制度木材表示推進協議会ウッドマイルズフォーラムなど様々な産地認定の仕組みが提案されてきました。日本ではここからここまでは、北海道産のカラマツ、そちらは信州のカラマツ、九州のスギ、東北のスギ、福島のスギ、そんなスキームができると、この会場の木材の意味をグローバルに発信することができるでしょう。また、この施設がその後使われるときにも、地方との連携が広がると思います。

ローカルウッドの環境貢献は、各国の緑の建築基準でも記述されています(米国の緑の建築基準最新版)。それを踏まえて、地球環境の視点から、地域材ローカルウッドでできた国立競技場がアピールしてもらえないか、と思います。

(みんなでウッドファースト社会を)

また、もう一つは「木材を優先して使っていく」ウッドファーストというコンセプト(「ウッドファースト社会」の実現」に向けた行動宣言について)。

バンクーバー冬季大会ではこのコンセプトがありましたが、ロンドン大会では残念ながら、「木材を使うなら森林認証材」でした。

東京大会では、世界の人に、公共建築物の木材利用促進法の役割、木材に固定された二酸化炭素の量、ローカルな資材を使うことの環境評価、トレーサビリティのシステム、大規模建築物での木材利用の技術開発、などなど、来るべき循環社会の主役である木材を建築物につかっていくことを大切さと、その手段が、しっかり発信されることを期待します。

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