持続可能な開発目標と森林の将来(2)、OWGの議論の結果、素案の中の森林(2014/9/21) (2015/1/25加筆)
リオ+20を契機として、作成することとなった、持続可能な開発目標に関して、検討をすすめていた公開作業グループ(OWG)が13回にわたる会合の結果を、まとめ、持続可能な開発目標に係る公開作業グループOWGの合意文書Outcome Document - Open Working Group on Sustainable Development Goalsを公表しました。

持続可能な開発目標公式ページに掲載

17の目標のうち、森林に関する指標が含まれているのは、目標6.すべての人に対する、持続可能な水源と水と衛生の確保、目標15.陸圏生態系の保護、回復および持続可能な活用の促進、森林の持続的な管理、砂漠化への対処、土壌侵食の防止および転換、生物多様性の損失の防止、の二か所

また、自然資源に関する指標が含まれているのは、目標1.すべての場所における、あらゆる形態の貧困の解消、目標5.ジェンダー平等の達成 すべての女性および少女のエンパワーメント、目標12.持続可能な消費および生産形態の確保などです。

関連部分を翻訳してみました

持続可能な開発目標に係る公開作業グループOWGの合意文書
Outcome Document - Open Working Group on Sustainable Development Goals
提示された持続可能な開発目標の森林に関連ある部分仮訳

目標1.すべての場所における、あらゆる形態の貧困の解消

1.4 2030年までに、特に貧困層や脆弱なすべての男性と女性は、経済資源に対する同等な権利と同様に、土地その他の財産、相続、天然資源、新しい適切なマイクロファイナンスを含む技術、および金融サービスに対する、基本的サービスへのアクセス、所有権と管理の権限をもっていることが保証される。

目標2.飢餓の終焉、食糧安全保障と栄養の向上の達成、持続可能な農業の促進

目標3.あらゆる年齢のすべての人に対する健康な生活の確保、福祉(well-being)の促進

目標4.すべての人に対する包括的、公正かつ良質な教育の確保、生涯学習の機会促進

目標5.ジェンダー平等の達成 すべての女性および少女のエンパワーメント

5.a 国内法に基づき、女性に対して、経済資源に対する同等な権利と同様に、土地その他の財産、相続、天然資源、および金融サービスに対する、基本的サービスへのアクセス、所有権と管理の権限をもっていることが保証される。

目標6.すべての人に対する、持続可能な水源と水と衛生の確保

6.6 西暦2020年までに山岳、森林、湿地、河川、帯水層及び湖沼など水に関連する生態系の保全保護を図る。

目標7.すべての人に対する、手頃で、信頼ができ、持続可能で、近代的なエネルギーへのアクセスの確保

目標8.継続的、包括的かつ持続可能な経済成長、すべての人に対する完全かつ生産的な雇用の促進

目標9.レジリエントな(回復力のある)インフラの構築、包括的かつ持続可能な産業化、およびイノベーションの促進

目標10.国内および国家間の不平等の削減

目標11.包括的、安全、レジリエント、かつ持続可能な都市および居住区の実現

目標12.持続可能な消費および生産形態の確保

12.1 持続可能な消費と生産の10年枠組み計画を実施し、先進国が主導し、途上国の開発と人的育成を考慮にいれ、全ての国が活動する。

12.2 2030年までに、天然資源の持続可能な管理と効率的な利用を達成する

12.6 企業に対して、特に大企業・多国籍企業に対して、持続可能な手法の採用、報告手順に持続可能な情報を組み入れることを要請する。

12.7 国内規則に基づいた持続可能な公共調達政策を推進する

12.8 2030年までに、全ての地域の住民も、自然と調和した持続可能な開発とライフスタイルのための情報入手し認識できるよう保証する。

12.a 途上国が、持続可能な消費と生産の態様に移行できるよう科学技術能力を強化について支援する

目標13.気候変動およびその影響と闘うための緊急の行動
(付記:気候変動に関する国際連合枠組条約が、気候変動に関する政府間協議の優先的な場である)

目標14.持続可能な開発のための海洋、海浜および海洋資源の保存および持続的な活用

目標15.陸圏生態系の保護、回復および持続可能な活用の促進、森林の持続的な管理、砂漠化への対処、土壌侵食の防止および転換、生物多様性の損失の防止

15.1 西暦2020年までに、国際協定において合意された義務に基づき、特に森林、湿地、山岳及び乾燥地において、陸域および陸域淡水における生態系とそのサービスの保全、保持及び持続可能な利用を確保する。

15.2西暦2020年までに、全てのタイプの森林の持続可能な管理を実施を促進し、森林減少を止め、劣化した森林を保全し、造林再造林を地球規模でX%拡大する。

15.4西暦2020年までに、持続可能な開発に不可欠な便益を供給する能力を確保するため、生物多様性を含む、山岳地の生態系の保全を確実にする。

15.5自然の生息・生育地の劣化を抑え、生物多様性を減少を阻止する緊急で重要な活動を実施し、西暦2020年までにこれらを保護し、絶滅危惧種の絶滅を防ぐ。

15.6遺伝資源の利用から生じる利益の公正かつ衡平な配分を確保し、遺伝資源への適切なアクセスを促進する

15.7西暦2000年までに、動植物の保護種の密漁及び輸送を終了する緊急の行動を実施し、違法な野生生物製品の需要と供給の両方に対処

15.9西暦2020年までに、国及び地方の計画作成、開発プロセス、貧困削減戦略及びその評価に、生態系と生物多様性の価値を統合

15.a生物多様性と生態系の保全と持続可能な利用のため、すべての財源からの投入を動員し、増加させる

15.b保全と森林再生を含む、持続可能な森林経営を推進するために、持続可能な森林経営の資金調達について、すべての財源からすべてのレベルで、大幅に資源を動員し、また、途上国への適切なインセンティブを提供する

15.c地域住民が、持続可能な生計の機会を追求する能力を向上させるなど、保護種の密猟や売買を防止するための取り組みの国際的支援を強化する

目標16.持続可能な開発のための平和でインクルーシブな社会の促進 、すべての人に対する公正へのアクセスの提供、あらゆるレベルで効果的かつ責任を伴う、包括的な公的機関の設立

目標17.持続可能な開発のための実施手段の強化および、グローバルパートナーシップの再構築

各目標の訳は一般財団法人CSOネットワーク仮訳を参照した
http://www.csonj.org/mdgsnews/sustainable-development-goals-draft 

っていますが、FAO林業委員会では森林は10の目標に関係あると指摘されているように、今回
 



 森林は目標6水源の管理、15 陸域生態系の管理の二つの目標の中に森林関係の指標が入っていますが、FAO林業委員会では森林は10の目標に関係あると指摘されているように、今回の目標、指標の案は不十分と言わざるを得ません。

SDGsの議論の中で、森林問題は、基本的には陸域生態系の保全と利用という枠内で取り扱われてきたことが反映されているようですが、再生可能エネルギーとしての木質バイオマスエネルギーや再生可能な建築資材としての違法伐採問題フリー持続可能な木材、など森林の生み出す財が、需要サイドの枠組みあるいは供給過程の経済枠組みの目標体系の中で、位置づけられてこそ、森林のもっている可能性が将来の持続可能な社会の中で正確に位置づけられるのでないでしょうか。

関連した目標は
標2 飢餓の終焉、食糧安全保障と栄養の向上の達成、持続可能な農業の促進
目標7.すべての人に対する、手頃で、信頼ができ、持続可能で、近代的なエネルギーへのアクセスの確保
目標11.包括的、安全、レジリエント、かつ持続可能な都市および居住区の実現
目標12.持続可能な消費および生産形態の確保
目標13.気候変動およびその影響と闘うための緊急の行動


これらの目標の中に、森林や持続可能な木質バイオマス、木材の利用に関する指標が重要な役割を果たすべきと考えます。

関連するウェブページ
Target the forests! Forests in Sustainable Development Goals – a view from Europe(UNECE国連欧州経済委員会)
COFO/2014/5.1 Forests and the Sustainable Development Goals(FAO林業委員会)

本サイトの関連ページ
持続可能な開発目標と森林の将来、FAO森林委員会での議論(2014/7/21)
持続可能な開発に関する公開作業グループ会合ー森林の行方(2014/5/31)

chikyu1-27(SDGsOWG13)

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