天皇のインドネシア訪問とインドネシアの森林問題(2023/7/5)

天皇皇后両陛下は、6月17日から23日の日程で、インドネシアを訪問されました。即位後はじめての外国訪問

両国関係が結ばれて65年、アセアンとの関係がむすばれてから50年など節目の年、といった説明がされていますが、前の天皇いまの上皇が1991年初めて外国訪問されたのもインドネシア(タイ・マレーシアとともに)なのだそうです。

ネット上のグローバルな情報が飛び交い、G7・ウクライナ・グローバルサウス・・・など関心が広がりますが、地政学的に日本のいる位置は東アジア、そこで海外との関係をどのように伐り結んでいく必要があるか?と考えた場合、日本とインドネシアはの関係は重要なのでしょう。

世界で三番目の熱帯林大国インドネシアでもあり、あらためてインドネシアとの関係を森林の視点から考え直してみました。

(戦後の日本森林木材ビジネスとインドネシア木材輸入そして森林保全)

戦後日本の合板産業は、東南アジアの熱帯林に生育する均質な大径木(フィリピンのラワン材)に着目して大量に輸入し製品を一部輸出するなどビジネスを広げました。そして、輸入の範囲はフィリピンのラワン材から、マレーシア・インドネシアのメランティ材へと広がり、世界の丸太輸入量の半分を日本が輸入していた時代(1980年代)がありました。

そして、グローバルな森林保全が共通の課題となってきたときに日本への批判に

1970年代から日本は先進国として国際開発援助ODAに力をいれはじめ、JICAなどが活動し始めますが、その中で、フィリピンのパンタバンガンプロジェクト(1976-92)-、インドネシアの東カリマンタン・ムラワルマン大学援助プロジェクト(熱帯降雨林造林研究センター設立1979-整備拡充1995-、など森林関係のプロジェクトが進行しました。(これらのプロジェクトには藤原もサポート体制の一員として少し関与しました)

森林の開発保全という分野は途上国にとっても取扱いが難しい分野ですが、インドネシアは過去の歴史と決別しても、国内の森林資源のガバナンスを守る、議論が進行しました。「環境と貿易」のインドネシアの教訓(2003/07/21)

((第3の熱帯林大国の森林破壊ゼロへのグローバルな取り組みは))

(インドネシアの、森林の近況は?)

右の図はGlobal Forest Watchというサイトからインドネシアの森林の推移をみたものです

2002年から21年の間に9.95百万ha(11%)の一次林(Humid Primary Forest)を失いました(上の図)。また、同じ期間に28.6百万haの森林(tree cover)を失いました。とされています。(少しその減少傾向は下がってきているようですが)

(森林ガバナンスの最近の状況:インドネシア)

林野庁のクリーンウッドナビ「合法伐採木材等に関する情報提供」というページにインドネシアの森林の最近の情報と木材の合法性証明のシステムについての情報が掲載されています

インドネシアでは、2016年ごろからSVLK(Sistem Verifikasi Legalitas Kayu)という木材合法性証明システムが」構築され、近年、その内容が合法性だけでなく持続可能性に、また対象範囲が拡大など、進展しているようです。

また、クリーンウッドナビには、インドネシアから輸出される木材製品には、合法性証明書(EU向けにはFLEGTライセンス、日本を含むその他の国に対してはV-Legalドキュメント)が発行されるとして、すこし詳しい証明書の内容などが掲載されています。

インドネシア国内の現場から輸出に至るサプライチェーンがどのように管理されているか、(現場管理のシステムも含めて)など少しわかりにくいですが、EUへの輸出などを背景として、進展がはかられているようです。

(作成過程で林野庁の本件の情報源であるIGESの関係者、インドネシアからの輸入ビジネスをしているエイピーピージャパンの関係者に情報を伺いました。ありがとうございました今後その辺の内容もふくめて、フォローしていきますね)

(30年までに森林の消失を反転させるには)

さて、「2030年までに森林の消失と土地の劣化を阻止し反転させるというコミットメント」(G7サミット)として、森林の減少問題に歯止をかける動きが国際的な合意になってきています。

ブラジル、コンゴ民主共和国について、世界で3番目に熱帯林をもっている大国、インドネシアの動向は?

先ほどの30年までに反転のという動向に出発点となった、気候変動国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)で100カ国以上が署名した、「2030年までに森林破壊を止める」とした共同宣言

当時のニュース気になるものがありました。
「森林破壊ゼロ強制は不公平」 インドネシア閣僚が共同宣言に反論
インドネシア、森林破壊の終了合意を「不公平」と批判

大統領が署名した文書に閣僚が反対?

本件については、今年の11-12月開催の気候変動枠組み条約COP28にむけて、「森林、自然及び気候に関するカントリーパッケージ」、など、森林減少の反転に向けたシステムづくりの話が進展していくので、アジアを代表するインドネシアの動き、しっかりフォローしてまいります。

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機会があれば、天皇陛下のお耳に入るといいですね。

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