日本型森林認証制度の論点(2003/02/11) | ||||||
12月25日に日本林業協会の森林認証制度検討委員会が報告書をまとめ、年明けの16日に「我が国にふさわしい森林認証制度『緑の循環認証会議』の創設に向けて」という発表を行いました。(関連資料:緑の循環認証会議ホームページ参照) 小生も作成過程で議論に参画したこの報告書の概要を紹介し、小生なりの解説を試みます。 報告書は、@日本における森林認証制度の必要性、A日本にふさわしい森林認証制度のねらい、B「緑の循環認証会議(SGEC、Sustainable Green Ecosystem Council)」の提言、の三つの章からなり、関係資料が添付されています。 第三章のいわば本文には、@認証基準(案)の骨子、A運営主体と期待されるSGECの運営と組織のデザイン、B製品の流通についての分別表示の考え方、C他の認証制度との連携の基本的考え方、などがのべられています。 報告書の全文は早速立ち上げられたホームページ(工事中の箇所が多く発展途上のサイトですが)から入手できます。今後この制度の発展を期待していくつかの論点に触れてみます。 (輸入国日本の森林認証制度の意味) 森林認証制度は木材輸出国が輸入国の消費者に自国の材の生産プロセスを説明するために作られら制度です。輸入国の日本でなぜ森林認証なのか?という点は議論があるところです。 小生は2年前にある雑誌に「地域木材認証ラベリング制度の提案」という小論を書き(小サイトでも紹介しています(こちら))、日本に認証制度を作るべきだと主張してきました。 小論では、「いくら木材業界が木材が環境に優しいといって利用促進を説いても、消費者は信用していない。身近な木材をきっちりした制度で認証し消費者にアピールすべきである。 出口の見えない国産材振興の展望を、消費者の環境指向の動きと連携して切り開くために、地域材認証ラベリング(LTL:Local Timber Labeling) 運動を提唱したい。」としています。 今回の報告書でも、認証制度のねらいとして、「(国産材が)循環型資源であることを保証し・・・市場を維持発展させる」という言い方で同様の趣旨を述べています。 もちろん、基準をクリアする過程で、日本の森林管理に欠けている「環境(だけではなく、「安全」や「効率」も含めたトータルの)マネジメント」が定着し、経営全体の底上げがはかられるということが期待されます。(この辺は森林施業計画認定基準とFSC認証基準の隙間参照) (先行する世界の制度との関係) もう一つの問題はFSCやPEFCなどの先行する世界の認証制度との関係です。(世界中で元気な森林認証参照) 問1、何故FSCではいけないのか この点について作業の過程でFSCの作業グループの方たちと議論しました。 国際的にFSCはPEFCなどの他の制度と衝突をしている場面があるわけですが、違法伐採問題など新たな事態に直面し、違法伐採だけを排除するラベリングの仕組みなど、いろんな形態の仕組みと共存できるという議論になってきているようです。 そういう意味では、FSC側でもFSC以外の認証制度とどうつきあってゆくか日本の場合テストケースになると思います。 問2,FSC陣営とPEFC陣営のどちらにつくのか ハッキリ言って参加者の意見も様々です。世界の状況を一口で言うと先行したFSCに対して、後発のPEFC(ちょっと古いですがいきさつは森林認証概論を参照)が北米のCAS(カナダ)、SFI(米国)等の制度と相互認証し巻き返しをはかり、認証面積ベースでは1年前に追い越し追い抜いているという状況です(世界中で元気な森林認証参照)。 当然、PEFCサイドでは唯一残った空白の先進国に「我が陣営の制度ができた」、というように見ていると思います。 (報告書のオリジナリティ) 同じ、「多角的相互認証」の節の最後(報告書全体の最後でもあるのですが)に、「経済的・社会的にも密接な関係にある近隣アジアの国や地域との連携を模索する」という一節があります。 そこに日本が目を向けてリードしてゆこうという意気込みです。極東ロシアの森林管理の質など我が国木材輸入の将来にとっても重要な点です。 (「ひよこ」というより・・・) 大言壮語をしたきましたが、実はこの報告書は大きな事業のほんの出発点です。 たくさんの関係者の協力がなければ認証はおろか、基準さえできないという事になります。日本林業協会という林業関係者の団体の提唱ですが、幸い環境団体や各県の方々も関心を持ってくれています。 とくに我が国の森林管理の最前線にたっている都道府県や市町村の関係部局のや森林組合などの協力がなければ一歩もすすまない、ということだと思います。 「ひよこ」というより卵ですが、殻が割られ「ひよこ」になり立派な鳳となることを期待します。 関連資料
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