持続可能な森林経営の実現のための政策手段に関する勉強部屋
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ニュースレター 034
2002年6月21

590部発行

このレターは、表記HPの改訂にそっておおむね月に一回作成しています。情報提供していただいた方、配信の希望を寄せられた方、読んでいただきたいとこちらで勝手に考えている方に配信しています。表記HPも併せてご覧下さい。御意見をいただければ幸いです。  藤原

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目次

フロントページ:県産材認証とFSC認証の間ー県産材・地域材認証にグローバルスタンダードの視点を
「地球環境と森林管理の課題」−横浜市立大学総合講義


フロントページ:県産材認証とFSC認証の間ー県産材・地域材認証にグローバルスタンダードの視点を

昨年、会員制寄稿誌「日本の林業を考える」第九号に「地域材認証ラベリング制度」を提案しました(本サイト内掲載pdfファイル)。その後反響があり愛知県東三河地域でこの提案に関して話をする機会がありました。その準備の過程での議論を踏まえ、また、最近の日本独自の森林認証制度の動きや県産材認証などの地方行政の動きを踏まえて、表記小論を同誌五月号(五月号目次)に寄稿しました。編集部の許しを得て、全文を掲載します(→こちらから)。
要旨は次の通りです。
@    我が国で認証制度を設計する場合、我が国の森林計画制度を基本にしながら少なくともFSCが課しているハードルは越えるというグローバルスタンダードの視点を持つべきであり、それは、十分可能である。
A    FSCは世界市場を念頭に置いて設計されているということに起因する制約があり、日本市場を念頭に置く独自の制度がFSCと共存する可能性がある。
B    最近数県で始まった県産材認証制度の動きは最終需要者に山側がアプローチする手法として積極的な面を持っているが、環境的側面を加えないと発展性を持った制度として成立するのは難しい。
C    これらの動きにグローバルスタンダードの視点を注入し、新たな制度を作ってゆくことができれば、FSCの動きとも連携した新たな展開が可能になる。
D    そうなったとき、世界中の木材を輸入している輸入大国日本から世界に対して、地球の温暖化対策の柱として、違法伐採された木材等を拒否し、持続可能な森林経営を呼びかける、強なメッセージが発信されることになるだろう。

「地球環境と森林管理の課題」−横浜市立大学総合講義(2002/6/21)new

6月14日横浜市立大学で、初めて大学の教壇で話をするという体験をしました。同大学の総合講義、「国際社会の将来」:環境と開発のガバナンスーリオ会議からヨハネスブルグ会議までーという一連の外部講師の話の一部として、「地球環境と森林課題の課題」というテーマで話をしました。4時10分から始まる授業時間は、たまたま3時半からワールドカップの日本チュニジア戦が進行中というタイミングで、いつもの半分ほどの聴講生だそうでしたが、それでも40人の学生がサッカーの試合より講義を選択(?)してくれました。
ことの始まりは今年の1月にこの総合講義を企画されていた同大学の毛利勝彦助教授から突然メールを頂き、小生のホームページを見てコンタクトをされたこと、「なぜグローバルな森林条約が成立しないのか」という設問に答える形で、話をするように、という大変魅力的なお誘いでした。小生としては毛利先生はお会いしたこともなかった方でしたが、3年ほど続けてきたホームページ上の情報発信がこんな形で実を結ぶというのは思ってもない提案でしたので、二つ返事で了解し、準備をしてきました。森林問題は息の長い話だし、特に若い学生さんに話をする機会を与えられて大変ありがたく思いました。

使用したパワーポイントの資料を掲載します。(html版開始pptダウンロード
三部構成の話の概要は次の通りです。
1 人と森林の関わり
地球環境問題前史 生活環境としての森林(森林は地球環境という前に生活環境として長いこと意識され、各国でそれに基づく調整システムが作られ、国や所有者関係者の権利が入り組んでいるため、地球環境として取り扱う場合の制約になっている)
2 地球の森林の状態と地球環境問題
森林の管理が「自国の資源管理問題」とだけいえないで、「地球環境問題」とされるのは、生物多様性保全・二酸化炭素貯蔵の二つの点に着目して議論されているが、もう一つ、循環社会で不可欠なエコマテリアルとしての木材を生産する人類共有装置を守という重要な側面がある。
3 国際的な森林レジーム形成の取組と国際社会の将来
森林の国際管理への道は遠いが、緑の消費者など森林条約につながる契機はある。また、途上国と先進国、都市と農村など開発の基本問題の解決抜きにはできない課題であり、森林の国際管理は持続可能な開発のメルクマールである。

1時間半の話を若い学生さんがどうとらえてくれたか、丁寧な感想を全員が書いて頂きました。温暖化対策としての森林の吸収能力の将来の可能性、エコマテリアルとしての木材と森林破壊の問題、など学生さんの問題意識の広がりに充分応えきれないところがあったかもししれません。ただ、小生の話を大変前向きにとらえ手頂きました。今後のコミュニケーションの出発となることを期待しています。そしてワールドカップの試合結果も併せて大変ハッピーで嬉しい一日でした。毛利先生・横浜市立大学の学生の皆さん有り難うございました。

藤原敬 
〒356-8687 独立行政法人 森林総合研究所
電話 0298-73-4751 FAX 0298-73-3795
email mailto:takashi.fujiwara@nifty.com
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