会員制寄稿誌「日本の森林を考える」(年四回)通巻12号
シリーズB「環境の時代」林業の再生を求めて(4)
一、森林を維持管理する労働者のプロを育てよ 小池 正雄 4
新基本法林政への転換は、外材支配体制の深化するなか、わが国の林業が限定された地域
でしか産業として成立しなくなったという背景がある。……森林資源維持管理の担い手で
ある労働者は、旧来の木材生産に従事する林業労働者ではなく、もっと広く森林の多面的
機能を発揮するために必要な森林への働きかけのすべてを手がけるような、専門的な技能
者に育てる方向性が鮮明にされなければならない。
二、緑の雇用事業と緊急地域の雇用創出 服部 崇 24
緊急地域雇用創出特別交付金制度は、森林整備を「環境」分野に位置付けた。森林整備が
、林業の活性化の観点だけでなく、地球環境や自然環境の保全の観点から捉えられること
に対する違和感が関係者の間で減じてきているものと思われる。
三、やっぱり……。林野庁の林業敗北宣言 田嶋 謙三 31
日本林業が不況のどん底にあえいでいるとき、なぜ林野庁は森林のゾーニングを試みよう
とするのか。モントリオールプロセスで森林のゾーニングは合意済みであるというのかも
しれないが、そもそも日本林業は国際路線から脱落してしまったのであるから、モントリ
オールプロセスを引き合いに出すのは的はずれではないか。
四、戦後住宅建設の去今来 脇元 裕嗣 39
これまでの林政の資源政策と経済政策の並立時代を経て、日本の森林資源はかつてないま
でに成熟しつつある。各林業地では、この成熟した森林資源を木材商品化するために必死
の努力が続けられている。したがって、今日の林政の基本方向の大きな部分は、この森林
資源の木材商品化でなければならない。
五、県産材認証とFSC認証の間 藤原 敬 50
−地域材認証にグローバルスタンダードの視点を−
我が国で作られる森林認証制度……規準は、@地球サミット以来の「持続可能な森林経営
」の国際的議論をふまえたものとすること、A輸出国側が売り物にしてくる可能性のある
規準を最低限クリアしていること、が必要だろう。
* 「藤原敬のホームページニュースレター 032〜033」より
持続可能な森林経営の実現のための政策手段に関する勉強部屋 58
六、間伐材と豊かさのデザイニング 岡崎 恭子 62
なぜ間伐材を使うのか?目的意識が「間伐材の余剰対策」だけではユーザーの心に響くも
のにはならない。ユーザーの意識やライフスタイルの変化と共に、目的意識を変革しなけ
ればならないと思う。つまり「木材を使わなくてはできない」魅力的なデザインを如何に
提案できるか、なのではないだろうか。
● タイトル・著者名一覧 シリーズ@A「国産材時代」(1)〜(4) (既刊) 、
シリーズB 「環境の時代」(1)〜(4)(既刊) 86