持続可能な森林経営の実現のための政策手段に関する勉強部屋
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ニュースレター 031
2002年3月11

494部発行

このレターは、表記HPの改訂にそっておおむね月に一回作成しています。情報提供していただいた方、配信の希望を寄せられた方、読んでいただきたいとこちらで勝手に考えている方に配信しています。表記HPも併せてご覧下さい。御意見をいただければ幸いです。  藤原

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目次

フロントページ:地域材利用の国際連携と「ウッドマイルズ」
FAOの機関誌UNASYLVAの森林条約特集

日米木材業界の違法伐採問題への取組

会員制寄稿誌「日本の森林を考える」最新号


フロントページ:地域材利用の国際連携と「ウッドマイルズ」

狂牛病問題など輸入飼料による食品の安全性に関する危惧や、大量の食料輸入の環境に与える負荷などに取り組むにあたって、食材の重量と輸送距離の積(フードマイレルズあるいは、フードマイレージ)を食品の基準として導入しようという取り組みが話題となっています。「Food miles」として英国で始まったといわれるこの運動を日本に始めて紹介した農林水産政策研究所の篠原所長が、その反響として「木材の普通の家一戸を国産材と外材で建てた時のWood Mileageを計算してほしい」という声が寄せられた、ということを最近雑誌に書かれています(「食品流通研究」ウェブサイト参照)小生が試算した輸入材の輸送過程消費エネルギーを使ってざっと試算しエネルギー換算してみると、木造住宅一軒をたてる時、地域材を使った場合欧州材を使った場合に比べ原油6キロリットルのエネルギーが節約できることになります。(試算結果) 全国で建築される年間50−60万個の木造住宅のことを考えると百万キロリットルのオーダーの原油節約という話になります。
林野庁はこの度、木材関係の施策の基本方針として、「地域材利用」を全面に掲げた木材分野の基本方針を打ち出しました(「地域材利用の推進方向及び木材産業体制整備の基本方針」全文はこちらから)が、そのバックグラウンドが上記の問題です。
ところで、食材だけでなく木材の輸送距離を問題にしようという動きは日本だけではありません。スイス在住の稲葉さんという方から、スイスのWWFが中心になって組織している環境に優しい木材を推進する木材業界グループの定款を紹介していただきました。その中に、会員が優先的に取り扱う木材として、FSC材等と共に「スイス、国境の近い地域またはヨーロッパ産の木材」という記述があります。(原文:こちらのウェブサイト一番下のワードファイル和訳)。農産物の場合空輸されたものは買わないという運動もあるようです。いずれにせよ製造の仕方だけでなく運ばれ方も消費者の関心になってきているということです。それぞれの家の建築に必要な木材の輸送のされ方その消費エネルギーを表示するなど、ローカルな取組の国際的な交流などということも必要になってくるのではないでしょうか。

FAOの機関誌UNASYLVAの森林条約特集

年に4回発行される国連食糧農業機関(FAO)の林業部の機関誌UNASYLVAの最新号は「国際森林条約」を特集しています。(FAOのウェブサイトから全文入手することができます) FAOは1980年代のはじめ熱帯林調査報告書を発表し森林問題を地球環境問題の一翼に引きづり出した主役で、林業部だけで世界に150人を越すスタッフを抱える強力な国際機関です。国際的に持続可能な森林経営を実現するため法的な強制力のある国際森林条約をつくることについてについてはその後地球サミットの準備等の中で議論されましたが、途上国の反対にあい実現しませんでした。その後のフォローアップは国連のUNFFなどで行われていますが、森林条約へのモチベーションは残念ながら弱まっています。この問題の一方の主役である環境NGOの方は、成果の上がらないUNFFの議論より生物多様性条約の場の方が具体的なアクションに結びつくという判断で、そちらの根回しに回っているようです。また、気候変動枠組み条約の方でも森林問題の議論が別の角度から深化しています。森林国際的な規制がバラバラの場で取り扱われているようになっているのです。森林の管理を真剣に考えるプロフェッショナルとしてのFAO林業部としては多面的機能を包括的に規定する森林条約が必要だとの思いがあるようです。今回の特集は、森林を取り扱う10の国際条約(下表参照)を分析し包括的な条約の必要性について指摘しています。
世界中の森林が無秩序に開発されている問題は、もちろん地球環境という観点で看過できない問題ですが、そのツケが輸入国の林業関係者にしわ寄せされているという側面があることは間違えのない事実です。輸入国の林業関係者がこの問題に真剣に取り組む必要があると思います。
森林に関連する多国間条約

条約

採択年月日
(dd/mm/year)

発効年月日 into force
(dd/mm/year)

加盟国数

ホームページ

森林にとって最も重要なもの

       

気象変動条約

09/05/1992

21/03/1994

186 (01/05/01)

www.unfccc.org

生物多様性条約

05/06/1992

29/12/1993

180 (21/06/01)

www.biodiv.org

砂漠化防止条約

17/06/1994

26/12/1996

174 (15/06/01)

www.unccd.int

その他の関連条約(採択時点順)

       

湿地に関するラムサール条約

02/02/1971

21/12/1975

124 (12/08/01)

www.ramsar.org

世界遺産条約

16/11/1972

17/12/1975

164 (15/05/01)

www.unesco.org/whc

ワシントン条約

03/03/1973

01/07/1975

154 (08/05/01)

www.cites.org

オゾン層保護に関する条約

22/03/1985

22/09/1988

177 (15/06/01)

www.unep.org/ozone

先住民・部族民に関するILO第169号条約

27/06/1989

05/09/1991

14 (01/05/01)

www.ilo.org;
ilolex.ilo.ch:1567/
scripts/convde.pl?C169

国際熱帯木材協定(ITTO)

26/01/1994

01/01/1997

56 (01/05/01)

www.itto.or.jp

世界貿易機関

15/04/1994

01/01/1995

141 (31/05/01)

www.wto.org


日米木材業界の違法伐採問題への取組

米国の全国の木材関連産業の団体はAmerican Forest and Paper Association(AF&PA)ですが、2月6日緊急な記者発表を行い、理事会で世界中の違法伐採に対処する方針を採択したことを報告し「違法伐採と戦うために世界中のリーダーになるつもりだ」との立場を表明しました。ウェブサイトに掲載されています。シアトルの木材総合情報センターの勝久さんによると、AF&PAの幹部は、今後業界による不買運動の動きもあり得るといっているそうです。世界で一番の木材消費国の動きが目を離せません。
我が国の全国木材組合連合会も、違法伐採問題についてのシンポジウムを横浜で開催しました。私も出席しましたが、ロシア局と経済研究所天然資源局長のアレキサンダー・シェインガウス博士は自分の30年にわたる経験と入手可能なデータにより、消費される木材の50%は違法伐採であると推定すると話されていました。少し詳しいデータがほしいとお願いしてきました。

会員制寄稿誌「日本の森林を考える」最新号

「林業の再生を求めて」という原点にこだわる会員制の寄稿誌の最新号を紹介します。2月28日発行の「シリーズ3環境の時代ー林業の再生を求めて 第三号」の目次は次の通り
1 新しい林政に向けて、新しい森林管理技術の確立を・・・藤森隆雄
2 環境の時代の森林づくりと林業活性化に向けて・・・依田和夫
3 こらからの国産材幸における大きな課題と対応・・・小野田法彦
4 ITを活用した木材流通の提案・・・村尾行一
5 森林政策の環境保全へのシフトは本物なのだろうか・・・土屋俊幸
森林林業基本法は新しい林政の議論の出発点という気持ちで、辛口の論考がさりげなく並んでいます。
詳しくは 
〒107−0052 東京都港区赤坂7−6−52 ハイツ赤坂103
第1プランニングセンター内「日本の森林を考える」編集室
tel 03−3588−0888 fax 03−3588−0873
e-mail LEP07652@nifty.com

藤原敬 
〒356-8687 独立行政法人 森林総合研究所
電話 0298-73-4751 FAX 0298-73-3795
email mailto:takashi.fujiwara@nifty.com?Subject=勉強部屋ニュースレター
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