ニュースレター No.265 2021年9月15日発行 (発行部数:1531部) | ||||||||||||||||
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このレターは、「持続可能な森林経営のための勉強部屋」というHPの改訂にそっておおむね月に一回作成しています。 情報提供して いただいた方、配信の希望を寄せられた方、読んでいただきたいとこちら考えて いる方に配信しています。御意見をいただければ幸いです。一般社団法人 持続可能森林なフォーラム 藤原敬 |
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フロントページ:第6次エネルギー基本計画案ー森林や木材・バイオマス政策との関係は(2021/9/15) 9月3日付で、第6次エネルギー基本計画案(以下計画案)が公表さて、パブリックコメントの公募が始まっています(10月4日締め切り) 第6次エネルギー基本計画(案)に対するパブリックコメント(意見募集) 上記のページにパブコメの対象となる、計画案、のほかに、計画案の概要、30年度におけるエネルギー需給見通し(参考資料)という二つの文書が掲載されています。 なんといっても、2050年カーボンニュートラル(以下50CN)という目標にむかって、排出量の8割以上に関係するエネルギー政策がどんな方向にいくのだろうか?森林や木材の吸収源、固定量、化石資源代替機能といった面が、しっかり位置づけてられているのだろうか?自分自身の日常生活がどのように制約されることになるんだろうか? せっかくの機会なので意見を言おう、と思って少し勉強してみました。締め切りまで少し時間があるので、とりあえず勉強の結果を共有します。 (目次) 右は目次です。 計画案は50CNに絡んで原発問題という大きな課題を抱えているのでそのことが大きなテーマになっています。が、このページでは重要なそのテーマは、この場ではおいておて・・・・ 計画案の50CNと森林・木材について、青い枠組みで囲った、具体的な政策の枠組みが提起されている、4章「2050年カーボンニュートラル実現に向けた課題と対応」と、5章「2050年を見据えた2030年に向けた政策対応」という部分の内容を、上記の「計画案の概要」という文書でみてみて、どんな意見をいうかな、という検討をしてみます。 (4章の概要) 左の図は、4章の「2050年カーボンニュートラル実現に向けた課題と対応」という部分を一枚にまとめた概要 冒頭の、「産業界、消費者、政府など国民各層が総力を挙げた取組が必要」大切な一言ですね。 そのあと、電力と非電力と・供給側にたった、まとめが記載されています。 「最終的に、二酸化炭素の排出が避けられない分野は、DACCSやBECCS、森林吸収源などにより対応。」とありますね(真ん中三つ目の●の最終行) 吸収力によるカーボンオフセットが一つのストーリなんですね。森林や木材のこの部分がどのように具体的に記載されているのかいないのか、本文を読む場合の重要なチェックポイントです(チェックポイントAカーボンオフセットと森林・木材の評価)。 それと、課題と対応を一枚にまとめたこの左の図には、、この中に電力・非電力と供給側の立場にたった記述がありましが、需要の話がこの全体の一枚に入っていないこと、気になります。 (需要サイドの取り組み) それでは5章の各論のなかに、需要サイドの取り組みというページをみてみましょう。右の図 なんといっても「徹底した省エネの更なる追及」!その通り!! 部門別にみた一番上の●、三つ柱のうちの、業務・家庭部門には、建築物の省エネ性能。この中で木材の化石資源代替機能などがどのように記載されているかが需要なポインドですね(チェックポイントBエネルギー需要の削減と建築材料としての木材利用)。 それから運輸部門が三つの柱の一つになっています。化石資源でなく電動でうごく車がポイントなんでしょうが。「地産地消」のような運輸部門の需要量の重要な視点の話がしっかりはいっているか、重要なポイントです(チェックポイントC地産地消と運輸部門のエネルギー) (木質バイオマスエネルギーは?) さてそれでは、供給側の木質バイオマスエネルギーは? 5章の各論「再生可能エネルギー」の概要が、左の図です。 太陽光、風力は記載してあるけど、バイオマスは?記載していない? 残念ながらこの概要説明版にバイオマスの記述はありません。 木質バイオマスが太陽光や風力のように全体をリードする主電源にはなりそうもないので、まとめのペーパーには欠落しているようです。が、パブコメの対象は、概要ペーパーでなく本文なので、バイオマスの地域活性化への貢献だとか、熱利用の重要性、輸入バイオマスのリスク評価など、しっかり記載されているか、パブコメのポイントです(チェックポイントD木質バイオマス貢献など(三つに再分類後述))。 (パブコメの対象セッション) 以上のようにパブコメのカテゴリーを、A カーボンオフセットと森林木材の評価、B エネルギー需要の削減と建築材料としての木材利用、C 地産地消と運輸部門のエネルギー、D1 木質バイオマスの多面的貢献度評価、D2 木質バイオマスの熱利用、D3 輸入木質バイオマスのリスク評価と6つに想定し、計画案のセッションごとに整理してみたのが、次の表です。 緑のセルが、関連する記載があるセッション(要チェック)、黄色のセルが、関連事項が記載されるべきはずなのに、記載がないと思ったセッションです いかがでしょうか?(ご意見いただけるとありがたいです) これに基づいて作業をしてパブコメを提出します。ご報告しますね。 energy1-40<6thEBP> ■いいねボタン |
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2050年カーボンニュートラルの実現に向けた住宅・建築物の対策(2021/9/1)
8月23日付で、経産省のサイトでに2050年カーボンニュートラルの実現に向けた住宅・建築物の対策」という記事が載りました。 「国土交通省、経済産業省及び環境省は、令和3年4月より「脱炭素社会に向けた住宅・建築物の省エネ対策等のあり方検討会」において、6回の議論を重ねて」きた結果なんだそうです。 「新築される住宅・建築物について省エネ性能・太陽光発電設備」などが記載されているんだろーなー・・・と思ってみてみたら・・・ Ⅲ.吸収源対策 という章があって、以下が提言されていました。 -------------------- ? 木造建築物等に関する建築基準の更なる合理化を進めること ----------------------------------- ウッドマイルズフォーラムが提唱してきた、地域材の環境性能評価!がここまで来た! 林野庁の施策への提言みたいな部分もありますが、省庁の垣根をこえて循環型資材である木材に利用推進に取り組むんだそうです。 原文の背景説明にもありますが、「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律」が改正され、題名が「脱炭素社会の実現に資する等のための建築物等における木材の利用の促進に関する法律」に見直された、パワーですね。 原文をどうぞ。→「脱炭素社会に向けた住宅・建築物における省エネ対策等のあり方・進め方」本文、概要、検討過程、ロードマップ energy4-2<CN&const> ■いいねボタン |
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日本の違法伐採問題ー「盗伐:日本にもあった違法伐採の実態」(2021/9/1) 8月25日、第57回フェアウッド研究部会 「盗伐:日本にもあった違法伐採の実態」というイベントが開催されたの参加してみました。 講師は森林総研の東北支所御田成顕研究員。 最近増えている、日本国内の盗伐の内容を分析して、どんなメカニズムで盗伐がおこるのか?どうしたらいいのか?勉強になりました。 ご本人のプレゼン資料をいただいたので、それにそって、概要を報告します。 (盗伐発生のメカニズム) 右の図は、2019年に、国内で行政や警察に相談があった盗伐の件数。その半分以上が九州で、故意に伐採したことが立証された5件が起訴されて有罪に。 加害者は1件が、素材生産事業者、4件が山林仲介業者なんだそうです。 山林仲介業者とは?左の図が宮崎市での発生事例です。山林所有者が立ち木を売るとき、素材生産をする事業者に立木を売るんだとだれでも考えるでしょうが、必ずしもそうではないんですね。 この場合、山林所有者は仲介事業者(被告人)に販売、その仲介事業者が別の仲介事業者に販売、その事業者が素材生産事業者に販売、その事業者が別の仲介事業者に販売、その事業者が素材生産事業者に販売してその人が伐採をしたんだをうです。 小規模な山林事業者が立木を売りたいと思ったとき、隣接した場所の森林で売れそうなものはないかな、など生産過程の利便性を考えて周辺の山の事情に詳しい人が仲介にはいる、ということなんですね。 仲介事業者の、このような役割は、特に小規模な山林所有者がたくさんいる地域では循環資源が山づくりに役立つためには、絶対に必要な仕事ですよね。 こんなにたくさんの仲介者が何ではいったのかはよくわかりませんが 右の図は研究者である御田さんが、犯罪社会学?の一般理論から援用した盗伐発生のメカニズム。日常活動理論(Routien Activity Theory) 公的な対象(材価格と需要の上昇)、動機付けられた犯罪者(仲介事業者の動機)、管理体制の不備(山林所有状況など)の三つがそろっているで、要注意。 本文には詳しい分析があります (対応策は) ではどうしたらいいの?報告の内容でかたられたのは、信頼できる素材生産業者からの調達と、森林認証を活用した調達の二つ。 原文には、詳しくは下記のウェブへと紹介されていますので、ぜひ参考にしてください。 責任ある素材生産事業体認証(CRL認証)がひむか維森の会より始めれれている (クリーンウッド法は?) 報告にも触れていますが。クリーンウッド法との関係はどうなのかな? 左の図は、報告の中に図です。クリーンウッド法の木材関連事業者という対象としている赤い視角に中に、素材生産事業者や仲介事業者が入っていません。 社会的に大切な仕事をしている、山林の仲介事業者について、信頼できる事業者に認定、業界団体による社会的責任などの活動をサポートしていく必要があるのでないかと思います。 このサイトでも、クリーンウッド法が、欧州や米国のように、海外の違法伐採をとりしまるんではなく、我が国及び海外の違法伐採問題に対処するためと、素晴らしい目的規定をもった世界にほこれる法律。 これが、しっかり実効あるものとなっていくために、木材関連事業者の範囲の拡大!、業界団体の社会的責任!などをしっかり位置付ける必要があると思いました。 いただいたファイルをこちらにおいておきます。→ ぜひご覧ください。 boueki4-46<ihoujapan> いいねボタン |
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IPCC6次報告書と森林-第1作業部会報告書の中の森林の記述(2021/9/5)
気候変動という難しい課題を、最新の科学的蓄積に応じて、政策決定者や、市民に伝えてきた、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)。 その第6次報告書第1作業部会報告書が8月6日公表され、一連の報告書の公表がはじまりました。 気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第6次評価報告書第I作業部会報告書(自然科学的根拠)の公表について(環境省) 右の図にあるように、IPCCには3つの作業部会WGなどがあるのですが、森林の吸収機能などに関係があるのはWG3で、このサイトでも公表されるたびに、追いかけてきました。 IPCC第四次報告書第三作業部会報告書(2007/8/12) いよいよ、8年ぶりに第6次報告書の公表がはじまり、第3作業部会報告書は、来年の3月に公表なんだそうですが、とりあえずWG1の報告書の中に、森林の記述がどうなっているのか、チェックしてみました。 (WG1報告書とは) WG1報告書のネット上の公表は以下の通り Climate Change 2021: The Physical Science Basis, the Working Group I(原文) 全体が、A気候変動の現状、B将来ありうる気候、Cリスク評価と地域適応のための気候情報、D将来の気候変動の抑制という5つの章立てにして、気候変動のリスクをいくつかのシナリオにわけて、分析しているのですが、今回の特徴はその分析を精緻にしたこと、だそうです。 気候変動、IPCCの最新報告書を解説、私たちの未来はどうなる? シナリオで大切なのは、いまのパリ協定で各国が誓約している目標と一致している、「中間的なシナリオ」ですね。 (森林について、記載しているのは) 上記の政策決定者向けの要約の中で、森林に関する記述がどこにあるかな? 左の図にあるように、今後好ましい排出削減が進んでいった場合(左の二つ)、循環過程での陸域での吸収の比率が高まっていくとされています。多分、その中で森林の役割は重要な要素でしょう。 そのほかに、森林について、記述しているのは、以下の部分。
上記は、「非常に高いとは評価されないけれども、いろんなリスクがありますよ」、ということが記載されている部分ですが、その具体的記述の中に、森林に関して二点の記述があります。 ①「南極氷床の融解の大幅な増加や森林の立ち枯れなど、気候システムの突然の応答や転換点(ティッピングポイント)を排除することはできない(確信度が高い)(C3.2)」、 ②大西洋子午面循環(AMOC)(海洋の地球規模の深層循環で気候を安定させている)は、全ての排出シナリオで21 世紀を通じて衰える可能性が非常に高い。21世紀中の衰退は確信度が高いが、傾向の大きさには低い確信度しかない。2100 年までに突然停止しないことは確信度が中程度である。もしそのような突然の停止が起こった場合、熱帯雨林帯の南方シフト・・・など、地域的な気象パターンと水循環に突然の移動を引き起こす可能性が非常に高いだろう(C3.4)。 いずれにしても、地球環境の大きな変動の中で、陸域の自然のベースである森林に大きな影響、森林関係者の研究蓄積が求められているんでしょう。 こちらの翻訳IPCCAR6/WG1報告書;政策決定者向け要約(SPM)暫定訳でチェックしていますが、ご興味のあるかたは、原文をどうぞ kokusai2-80<IPCC6_1rep> ■いいねボタン |
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持続可能な森林経営のための勉強部屋Zoomセミナー第2回御案内(2021/9/15)
持続可能な森林フォーラムでは、皆さんとのコミュニケーションを双方向で深めていくため、ゲストをむかえて、Zoomセミナーを開催しています 基本計画の策定過程から(海外・他分野の計画と比較も)ー第1回勉強部屋Zoom会議やりました 第2回目はゲストに、ウッドマイルズフォーラム会長 前日本建築士連合会会長藤本昌也さんを迎えて、「ある建築関係者のまちづくりへの経験と森林への想いー新ローカリズムの思想から」と題して話をしていただきます。 社会資本がマーケットを通じてどのようにできていくのか、まちづくりの視点から森づくりを考えます どうぞ皆さん、ご参加下さい。 参加はこちらからどうぞ(参加申し込み窓口).(会員の方には別途ご案内します) konosaito3-2<zoommt2nd> ■いいねボタン
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霞が関の政策作成過程の意見募集ー勉強部屋ニュース265編集ばなし(2021/8/15)
今月のフロントページは第6次エネルギー基本計画案ー森林や木材・バイオマス政策との関係は。 このところ、新たな森林・林業基本計画に続いて基本計画のパブコメが続きます。森林・林業の場合は林政審議会、エネルギーの場合は総合資源エネルギー調査会 基本政策分科会といった、専門家に意見を聞きながら、原案を作成してネット上に公表して広く関係者の意見を聞く(日本語だから日本語がわかる人だけですが)。 森林・林業基本計画が業界・行政や地域の関係者だけでなく、地球環境・流域の環境という形で、利害関係者が広がってきたのと同じに、エネルギー基本計画も・・・ 各種産業政策や国民生活の実態から生まれるエネルギー需要を前提として、どのように(環境的)効率的にそれを供給していくか、という産業政策を前提として組み立てれてきた(であろう)エネルギー基本計画が、カーボンニュートラル2050で、再生可能エネルギーを前提として需要面にも切り込む、国民生活全体に影響をあたえる(可能性がある)基本計画(産業政策から国民生活全般に対する総合政策に)なってきました(といえるかな?)。 第2回Zoom会議、10月30日に開催します。前日本建築士連合会会長藤本昌也さんを迎えて、「ある建築関係者のまちづくりへの経験と森林への想いー新ローカリズムの思想から」 楽しみにしてくださいね。 次号以降の予告、カーボンニュートラル2050と木材利用、地球温暖化対策計画(案)意見募集、サプライチェーンマネジメントってどんなこと?地域の未来自伐型林業で定住化、地球温暖化対策の推進に関する法律改正は?森林所有者は幸せか?森林に関する主観的幸福度論文が公開、森林の間伐等の実施の促進に関する特別措置法改正ー2050年カーボンニュートラルの実現にむけた法律改正、御殿場の木質バイオマス発電ーローカルな林業の可能性、欧州の炭素国境調整措置の内容 、konosaito<hensyukouki> ■いいねボタン
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