ニュースレター No.261 2021年5月15日発行 (発行部数:1580部) | |||||||||||||||||||||||||||||||||||
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このレターは、「持続可能な森林経営のための勉強部屋」というHPの改訂にそっておおむね月に一回作成しています。 情報提供して いただいた方、配信の希望を寄せられた方、読んでいただきたいとこちら考えて いる方に配信しています。御意見をいただければ幸いです。一般社団法人 持続可能森林なフォーラム 藤原敬 |
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フロントページ:森林のガバナンスからみた「人新生と『資本論』」(2020/4/11)
コロナ渦の大型連休中、何人かの方に勧められ、今評判(?)の「人新生(ひとしんせい)と『資本論』」という新書本を、読んでみました。筆者は斎藤幸平35才(34才?) ーーー 生産の基盤が私的所有され、「使用価値」とは別の市場が求める「価値」を追い求めて矛盾(不平等と環境問題と・・・)を拡大する資本主義。この問題をどのように解決するのか? 行政が社会保障、環境政策といった政策を積み重ねて市場の失敗を修正する。企業もESGやSDGsといった市場からの圧力をうけて失敗の是正をする。・・・ といった、資本主義の色にどっぷりつかった方法では本質を見誤る(「SDGsはアヘン」なのだ)(そうです)。 初期のマルクスも資本主義を成長の成果を踏まえてコミュニズムをいっていたが、間違っていた。 キーワードは「脱成長のコミュニズム」(①使用価値経済への転換、②労働時間の短縮、③画一的な分業の廃止、④生産過程の民主化、⑤エッセンシャルワークの重視の5つの柱から成る)(第7章) そのような社会への転換の兆しがバルセロナに(第8章) 温暖化に対応せざるを得ない「人新生」で「脱成長」という主張が、分かり易くなっているという面もあります。成長しながらカーボンニュートラルな社会ができるのか?莫大な開発投資をしてすべての(先進国の)自動車を電動化して再生電力のみにした場合、リチウム電池のリチウムは乾燥地の地下水を大量にくみ上げて製造・・・地球のバウンダリーを超えるのでは・・・ それはそれとして、このような本(失礼)が売れているということは、今の社会のある断面を「しっかりきりとっている」ことは、間違えないのでしょう。 ということで、現代社会の森林問題をこの本に沿って少し考えてみました。 (犠牲を不可視化する外部化社会ー地球の矛盾の外部化の最後が熱帯林?) 資本主義が自らの矛盾を拡大するシステムの一つが、先進国の豊かな社会がその代償を遠くに転嫁して不可視可するプロセスがあるからだ、という。「先進国はグローバルサウス(途上国)を犠牲にして豊かな生活を享受している。途上国の低廉な労働力だけでなく、地球環境も。そろそろ外延ができなくなり行き詰まりつつある。」(33ページなど) 豊かな社会の最も外延部に位置するのが途上国の首都から離れた(アマゾンやカリマンタンの)熱帯降雨林です。矛盾が集積し熱帯林の自然と、そこに居住する原住民に、豊かさの矛盾が集積します。未だに続く熱帯林の減少。地球上で、最も難しいガバナンスの問題が表出する熱帯雨林。その最も大切な課題に答をだすのが、グローバルサウスの森林関係者、市民、世界中の森林科学者です。そこのガバナンスをどのように構築していくのかが、齋藤の問題提起に答える一つの道でしょう。 (排他的なプロセスと「コモン」という第三の道ー森林管理は最先端をいけるかも) 新しいどんな社会をつくるのでしょうか?当ロジックの重要な部分が、昔共有化されていた水などの自然資源を、資本が管理し、希少性をつけて価値(儲け)を生み出してきた資本主義。ここにコモンを取りもどして、「市民」有化して新しい社会にいたる(マルクスも晩年になってそのことに気がついたんだそうです)。(251ページなど) 電力の場合、原子力とか火力とちがって、太陽光や風力は排他的な利用がなじまないので、希少性が作りづらく「市民営化」で可能、(260ページ)など。 それでは、(我が)森林管理プロセスはどうなのでしょうか?天然資源由来のものでも鉄やアルミニウムのようなものは原料採取や生産過程で、「閉鎖的なプロセス」(巨大なインフラの中の専門家しか解らないシステム)が必要ですが、それが不要な、「開放的な」木材や木質バイオマスの生産過程です。 そのためにサプライチェーン管理が逆にむずかしく大変なんですが、「自伐的林業」など、生産過程の市民的管理の実験が可能なのかも。 民主的管理については、森林では、入会い林など、共有資源としてのとしての長い実績と研究の蓄積があります。コモンズとしての市民管理が資源管理から波及していくという過程を想定すると、森林分野の役割は注目されるかも。 (小さな林業と大きな林業なども関係あるかな) グローバルマーケットの立ち向かって国産材を消費者にとどける、大型の国産材製材工場の流れ(グローバルに課題を転嫁させているのが輸入材だとすると国産材は何に転嫁させている?山づくりは大丈夫なのか?)。 それに対して、近くの山の木で作った家を市民に供給する顔の見える関係。大きな林業に対する小さな林業。難しい課題ですが。市民とともに課題を解決する仕組みでもありそうです。 ーーーー 私的所有権をベースにした生産基盤という資本主義、近現代の常識に、基本的な問題提起をしてインパクトを与えている「人新生の資本論」というおとぎ話のような本でした。 そんな道がこの社会にありうるのか?といのが基本的な疑問で、それは自分の中ではそのままです。(おとぎ話) が、この本を読んでみて、森林ガバナンスに関わる様々な課題が、森林分野だけでなく、「人新生」というの社会のガバナンスに広い影響をあたえる可能性をもっているのではないか?というポジティブな物語だったように思います。 junkan1-27<CapAnthfore> ■いいねボタン |
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成長産業化は?次世代にむけたの山づくり・カーボンニュートラルに向けた木材利用などー森林林業基本計画改定案へのパブコメ提出(2021/5/15)
森林・林業基本計画(案)が4月末に公開われパブコメの募集がされました。 作成過程でもこのページでも関心をもってフォローしてきました。 市民と森林との関わり(など)ー「新たな森林・林業基本計画に関する意見」提出 (2020/7/24) そこで、計画案を読んでみました。 成長産業化はどうなるんだ?次世代に向けた山づくりは?カーボンニュートラルとの関係は?
kokunai1-19<kihonkeikaku2021_3> ■いいねボタン |
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全ての炭素排出量をオフセットするのに必要な樹木は地球上に未来永劫ありませんー人新生における森林の役割(2021/5/15) The Conversationというサイトに、There aren’t enough trees in the world to offset society’s carbon emissions – and there never will beと題する、記事が掲載されています。 翻訳すると、「全ての炭素排出量をオフセットするのに必要な樹木は地球上にありませんー未来永劫ありません」 筆者はBonnie Waring Senior Lecturer, Grantham Institute - Climate Change and Environment, Imperial College London(写真右:コスタリカのらセルバ生物研究所で研究を行っている筆者、だそうです) ーーーー 一番のポイントの部分を翻訳して紹介します
上記にもあるように文献のレビューをした結果なForests and Decarbonization – Roles of Natural and Planted Forests等も紹介しながら、最近、森林の一部の機能に着目した過大な期待が寄せられていることを心配する、丁寧な説明をしています。 もちろん森林はカーボンニュートラルな社会をつくるために大切な役割を、果たすことは間違えないのですが、それに過大な期待が寄せられて大切なチャレンジがおろそかにならないように、という忠告ですね。、 最後の一文を紹介して終わります。
もちろん、カーボンニュートラルに向かう非常事態の社会に森林の炭素貯蔵機能は大切な役割をもっています。が、カーボンストックより、沢山の未来へのドラマ詰まった・・・森林は、人新生にとって大切なモノですね。 kokusai2-77<NE_offsettree> ■いいねボタン |
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管総理の森林問題への言説ー緑の式典(2021/5/4)
緑の月間の中心行事として、4月23日第15回みどりの式典が開催されました。 植物や自然保護の研究者などに贈られる「みどりの学術賞」の授賞式なども併催。 総理大臣が式辞を述べました。年に一度の国行政の最高責任者である総理大臣の森林に関する現状と施策の方向性に関する認識の表明。 一昨年の安倍総理の式辞(昨年はコロナで中止だったので一番最近)と比較してみました。
一昨年は明治元年から150年という特殊な年だったかから特別だったからなのか、総理大臣が替わったからなのか、「みどりを守り育てる」だけでなく、「伐って、使って、また植える、循環利用を進めましょう」と具体的、そして、背景説明も「災害の防止や、2050年カーボンニュートラルの実現」、「新型コロナを契機に、・・・。森林豊かな環境への関心が高まり、地方への移住が増え」具体的な言葉が並びます。 式典では、総理は、式辞を述べた後、みどりの学術賞の授与及び緑化推進運動功労者内閣総理大臣表彰の授与を行いました。 kokunai1-20<sugasinrin> ■いいねボタン |
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気候変動サミットの中の森林問題(2021/4/11)
4月22、23日にかけて、アメリカのバイデン大統領の主催による、「気候変動問題」をテーマとした首脳会合、すなわち「気候変動サミット」が、オンラインで開催されました。 米国のバイデン新大統領が地球環境問題で新たなイニシアティブを示す場となった(バイデン氏、気候変動対策の「勝負の10年」 サミットでCO2削減の新目標を発表)、管首相がこの会議にむけて、会議直前に菅首相 2030年の温室効果ガス目標 2013年度比46%削減を表明と、注目されるイベントでした。 オンラインで開催されたこの会議のすべてが、米国国務省のLeaders Summit on Climateというサイトに掲載されています。 このページでは、森林問題がどのように取り扱われたのか報告します。 (プログラムの構成と森林問題) 二日間にわたるサミットはのプログラムはLeaders Summit on Climate: Scheduleに掲載されていますが、概要以下の通りです。
(森林保全に言及したリーダー) 1日目冒頭のSession 1 Raising Our Climate Ambition、Session 2 Investing in Climate Solutionsという二つのセッションが、首脳クラスのプレゼンテーションでした(以降のセッションは担当大臣クラス) これらのセッションで登場した首脳で、森林について言及したブラジルのPresident Jair Bolsonaro大統領。「30年までにアマゾン違法伐採ゼロ」ブラジル大統領(朝日新聞)など日本のマスコミでも報道される大きなトピックスでした。 ブラジル大統領、森林「保護」へ急転換 支持低迷に焦り(日経新聞) 、40地域の首脳のプレゼンテーションをすべてをチェックしたわけではないですが、途上国を中心に多くの首脳が森林問題に触れました。 (自然を基礎にした解決策) 1日目の午後から、各国大臣クラスが参画するテーマ別のセッションがあり、その中で、Nature-based Solutionsと名付けた、セッションがあります。 「森林破壊と湿地の喪失を減らし、海洋と陸域の生態系を回復し、持続可能な農業慣行を促進する取り組みを含む、排出量の削減と気候回復力の強化における自然ベースのソリューションの重要な役割に焦点を当てる」とあります。 登壇者は、以下の通り 上記からそれぞれのプレゼンテーションを録画で見ることができます。テキストがないので、正確にこのページで内容をつたえることは、できませんが、是非ご覧下さい。 関係ページに記載している説明分(英文を和訳)は以下の通りです。
もちろん、自然を基礎にした解決策ですので、陸地と海洋の全てについて対象としているのですが、内務省が作成したであろう、上記の文章では、森林のことが少ししか記載していないですね。 内容をご覧になると、森林の保全について原住民の生活を守ることが保全の原動力になるといった、事例が多く述べられています。 先進国はカナダだけ。自国の森林についての言及はないみたいでした(途上国支援の話が中心。)、議長の内務長官の発言も米国内の取組でないですね。 先進国の木材利用の話は残念ながらないみたいです。 kokusai2-77<LSumtC> ■いいねボタン
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地球環境時代と木材ー連載が始まりました(2021/5/4)
クボデラ株式会社(東京都中野区、代表取締役:窪寺 伸浩)のサイトで、「地球環境時代の木材」という連載をさせていただくこととなりました。 プレスリリース「地球環境時代の木材」 ~消費者と生産者を結ぶ環境ビジネスの可能性~ 2021年5月より連載開始によりますと・・・ 「昨年度から開始しましたアカデミアとの連携・協業活動の一環として・・・・当社は2020年10月から6回にわたり、千葉大学環境健康フィールド科学センターの宮崎良文グランドフェロー、池井晴美特任助教に「木材と快適性~科学的エビデンスに基づいて~」を執筆していただきました。 なんだそうです。 第1回 地球環境時代って何?―循環しない異常な社会を、子孫のための循環社会に 頑張ります kokunai3-61<kubodera> ■いいねボタン
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22年間メールニュース発信ー勉強部屋ニュースが日刊木材新聞に(2021/4/30) 木材業界向けの超メジャーな日刊紙「日刊木材新聞」4月28日号に、勉強部屋ニュースの紹介記事がのりました。 見出し「22年間メールニュース発信ー産学官民ネットワークをつくる」ー持続可能な森林フォーラムの藤原代表が発信するメールニュースが先頃260号を迎えた。タイトルは「持続可能な森林経営のための勉強部屋」で毎月一回22年間欠かさず会員に配信を続けた・・・・(こちらに記事のコピーをを置いておきます) きっかけは、ニュースレターの読者でもある記者のかたから、「木造の本社ビルもできたことだし、一度遊びにきませんか?」とお誘いをうけたこと。 4月中旬に遊びにいってきました(自転車にのって)。お話をしている内に、「お話の内容をコラムにしましょうか」(やったー!) 毎日、全国の木材関係ビジネスの関係者に4万部ほど配達されている、業界紙。 読者の最近の関心は「第三次ウッドショック」(でしょう)。 木材製品の値上がり、どの製品の値段があがり、どの製品がそうでもないか、はビジネスの最も関心事(でしょう)。(日刊木材以外にたよるものがない) ただ、このような業界紙が、もう少し先をみて環境問題とビジネスの関係情報も大切な課題。すこし、環境が動き出しているので、勉強部屋も日刊木材さんとコラボレーションができないかなーなどと、考えて(妄想して)います konosaito<nitimoku2104> ■いいねボタン
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森林にはカーボンニュートラルより大切な仕事がー勉強部屋ニュース261編集ばなし(2021/5/15)
コロナ渦の大型連休。じっと自宅になんですが・・・結構気になるネット上イベントもふくめた情報が一杯。そして本も読んで。皆さんに報告したい情報があふれて8本のニュースとなりました。 このところ、2050からカーボンニュートラルという大きなトピックスに関連した記事が多くなり、今月号もバイデン大統領の主催する気候リーダーズサミットという大きなイベントがあり、それを追いかけた記事(全ての炭素排出量をオフセットするのに必要な樹木は地球上に未来永劫ありませんー人新生における森林の役割)を作成しました。 が、森林という奥深いポテンシャルをもったテーマを取り上げる、このサイトで、そればかりいっていてはもっと長期的大きなテーマがン受け落ちるんではないか、という指摘の材料があり(全ての炭素排出量をオフセットするのに必要な樹木は地球上に未来永劫ありませんー人新生における森林の役割)、そういう視野からしっかりページ作りしなければ・・森林・林業基本計画改定案へのパブコメ提出、森林のガバナンスからみた「人(ひと)新世と「資本論」」。すこし大変な連休でしたが、充実したともいえる、大型連休でもありました。 日刊木材の記事も事前に掲載をしていたら、木材関係者からの反響がありした。 6月19日に一般社団法人持続可能な森林フォーラムの総会を行います。今後の方針などに関して会員の方々と議論をするばとなりますが、それまでに、読者の方々には会員になるとどんないいことがあるの?といったことも含めてご連絡しますので、よろしくお願い会います。 今月からアンケートの場所を設けました。この記事はおもしろかった。この記事はもうすこし、こうしたら?以下のページからよろしかったらお願いします。 次号以降の予告、バイオマス熱利用の普及拡大への道筋、地域の未来自伐型林業で定住化、「論語と算盤」と森林の関係(2)、地域的な包括的経済連携(RCEP)協定と森林・木材ーTPP/EPAとの比較、森林の間伐等の実施の促進に関する特別措置法改正ー2050年カーボンニュートラルの実現にむけた法律改正、御殿場の木質バイオマス発電ーローカルな林業の可能性、欧州の炭素国境調整措置の内容、林業と木材利用の気候変動対策の潜在的可能性 、konosaito<hensyukouki> ■いいねボタン
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