ニュースレター No.210 2017年2月25日発行 (発行部数:1394部)

このレターは、「持続可能な森林経営のための勉強部屋」というHPの改訂にそっておおむね月に一回作成しています。

情報提供して いただいた方、配信の希望を寄せられた方、読んでいただきたいとこちら考えて いる方に配信してます。御意見をいただければ幸いです。 

                         一般社団法人 持続可能森林なフォーラム 藤原

目次
1 フロントページ:合法性証明と森林認証―森林部門技術士会例会で(2017/2/25)
2. バイオマス発電所事業計画に関するパブコメ意見(2017/2/25)
3 クリーンウッド法の進め方に関するパブコメ(2017/2/25)
4. 森林環境税ー『林業経済』誌編集後記(2017/2/25)
5. 森林村の住人ー勉強部屋ニュース208号編集ばなし(2017/2/25)

フロントページ:合法性証明と森林認証―森林部門技術士会例会で(2017/2/25)

日本技術士会には19の部会があるそうですが、その一つ森林部門技術士会の2月7日の例会で、標記の話をさせていただきました。

(持続可能な森林経営に向けてサプライチェーンを通じて森林の環境的要素を消費者に伝達するツール―)

長い副題ですが、相手が、森林関係の土木技術や、測量、森林計画などの関係者が多いようなので、森林の仕事が本丸とすると、「その仕事を市民とつなぐ大切なツールとしてのサプライチェーンの話をしよう」という思いがこもっています。うまく伝わったかどうかはわかりませんが。

報告したデータが以下のページに掲載されています。
森林部門技術士会ページ合法性証明から森林認証ー持続可能な森林経営に向けて森林の環境的要素を消費者に伝えるツールー

あまり新しい話はないのですが、かいつまんでご紹介します。

(木材利用の促進の定着化とく森林関係者の責任)
 森林資源の循環利用に関する意識・意向調査概要

左の図は、内閣府「森林と生活に関する世論調査」(平成15(2003)年、平成19(2007)年、平成23(2011)年)などに加えて、農林水産省「森林資源の循環利用に関する意識・意向調査」(平成27(2015)年10月)を基に林野庁で作成したものです(昨年の森林林業白書より)。

森林に期待する役割の変遷がわかるのですが、1980年に国土保全について2番目だった木材の利用が、下がり続け1999年には8番目の最下位になり、再び上昇して2015年には3位に上昇、見事なUカーブを示しています。

内閣府と農林水産省では調査のタイトルが違うように、回答者への情報が全く同じなのか若干留保が必要かもしれませんが、前々回から続く傾向。

建築設計の中心にいる隈研吾さんが21世紀は木の世紀になるとはなすバックグランドになっています。

ただし、この流れは、地球環境問題をベースにできているので、森林の持続可能性がいろいろな意味で担保されていないと足元が崩れます。「みんなさんの役割は大切です!!」

(都市住民の消費者とのコミュニケーション)

皆さんに示した以下の図は公共建築物木材利用促進法に基づいて、埼玉県の市町村が木材利用方針を作成した現状です。

山林地域の西側から東京の続きの東部地域にだんだん拡大していますが、まだまだ都市の消費者の木材利用に関する関心は広がっていません。そこで、森林を伐採して木材を加工し市場まで流通させるサプライチェーンを通じた情報提供が必要になってきています。

(木材のサプライチェーンの特徴と日本の合法木材ガイドラインの先見性)

木材のサプライチェーン管理といえば、違法伐採対策で10年前にできた、「木材・木材製品の合法性、持続可能性の証明のためのガイドライン」が大切な役割をはたしてきました。
違法伐採問題に対する取組の意義と課題―日本を含むすべての森林の森林管理のガバナンスにも関連して―(2015/4/25)
違法伐採問題、木材のサプライチェーンの特徴と林野庁ガイドライン、林業経済学会での報告(2014/11/23)
(以下そのさわりも含めてをご紹介)

もっと前に開発されれた、消費者に森林の管理水準を提起する方法として、森林認証制度が広まっているますが、欧米と、日本では普及の度合いが違います。
世界と日本の森林認証の現状2015(2015/12/1)

天然資源の緑のサプライチェーン管理では紛争ダイヤモンド、紛争金属など原料の販売収入が紛争地帯の戦闘の原資になっていないことを証明する仕組みがあり、ダイヤモンドのようにその証明書がないと日本への輸入禁止になっているものもあります。これが、究極のサプライチェーン管理ですが、信頼のあるサプラーチェンの管理には、すべて、大企業がサプライチェーンの中核を握っていいます。それがサプライチェーン管理がうまくいく一つの条件です。
紛争ダイヤモンドと違法伐採木材

欧米の森林認証制度が広がるのも、その地域のグローバルな大企業の役割が大きいので、消費者が偉いのでは必ずしもない。アジア地域の森林認証の遅れは、サプライチェーンが中小企業による細い網の目になっていることが理由の一つ

そこで、業界団体の認定によるサプライチェーン管理を提起したガイドラインの意味があります。

レーシー法、EU木材規則とガイドラインを比べてみたのは下の表です

手法 概要 順守の誘因 課題
EU木材法 通関地点で輸入業者に注意義務を規程、サプライヤー情報の管理 罰則 域内流通管理
米国改正レーシー法 通関地点で輸入業者は原産地、樹種等の申告、 罰則 域内流通管理
森林認証制度 持続可能な管理森林の認証、当該森林産木材を原料とした製品を証明できるビジネスチェーンの第三者認証 優先的な購入についてのネットワーク 第三者認証のコスト
林野庁ガイドラインによる合法性証明 伐採森林に関する法令に適法な木材を確認、その原料による製品を証明できるビジネスチェーンの業界団体認定 G購入法での優遇、補助事業での優遇 信頼性
違法伐採問題、木材のサプライチェーンの特徴と林野庁ガイドライン、林業経済学会での報告より

(クリーンウッド法はその中でどんな役割?)

というのが、私の思いなのですが、業界関係者は「なんでこんな面倒くさいことをしなければならないのか?」、NGO関係者は「業界団体が仲間の認定をするなんてうさん臭い」と、どちかからもあまり評判がよくありません。そこにあるのは信頼性のリスク。

これを担保するために登場したのがクリーンウッド法なのですが、もう少ししたら詳しい政省令(案)などが公開されるので、関心を持っていてください・・・。(2月7日の段階ですこの意見募集についえては、別項で)

という話をさせていただきました。

(合法ならば持続可能なのか)

40人ほど集まった参加者からいくつか、質問がありました。
(SGECの認証のビジネスをしているが)最近森林法の改正があったが、それで持続可能性が担保できると思うか?4月1日施行の改正森林法には「伐採後の再造林を確保」とあるが、中を見ると「伐採後の造林の状況報告の届出義務」のみで、再造林の義務化というまでの拘束力はない。改正法の主眼はむしろ、木材の安定供給と成長産業化にある感じがします。そこにリスクを感る。

合法性と持続可能性の議論は、各地でどんな法律を施行しているかがバラバラなので理屈の意味で最初の一歩です。

一昨年林業経済学会で「持続可能な森林管理を担保する制度としての、森林認証制度と我が国における森林法・合法性証明システム」という報告をして勉強部屋につしてありますが(2015/11/24) 二つを比べると後者は実施を担保する仕組みのところがもう一歩。

この辺は林野庁の担当者もオープンに議論する姿勢なので頑張ってくださいね。

(消費者は関心がない)

もう一つ、「DIYショップにいっても木材の環境機能などみな関心がなり。安くて便利ばかり。」森林認証にどんな展望をもっているのか?

消費者が先か供給側が先か難しい質問ですが、オリンピックは一つの契機です。企業の力、行政の力が相俟っていくのではないでしょうか?

以上です
貴重な機会を作っていただきありがとうございました

kokunai3-52(gijutsusikai)

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バイオマス発電所事業計画に関するパブコメ意見(2017/2/25)

1月13日から2月11日締め切りで事業計画策定ガイドライン(バイオマス発電)案に関する意見公募が行われまました。

対象となったのは、事業計画策定ガイドライン(バイオマス発電)案

前々から、固定価格買取制度のバイオマス発電の原料供給に関する仕組みについては、サプライチェーンの管理に関して、木材供給者側に責任があり発電事業者は、最後の証明書を一枚保管しておけばよい、という仕組みになっていることに問題意識を持っていて、発電事業者が自ら使うバイオマスのサプライチェーンの管理に責任を持つような仕組みにならないか、と思っていました。

でも、クリーンウッドのパブコメに気をとられていて?、このパブコメを気が付くのがおくれて、おっとりがたで提出しました。

 該当
箇所

3.燃料の安定調達に関する計画の策定及び体制の構築
②国内森林に係る木質バイオマスの燃料調達及び使用計画の策定 

 意見
内容
  ②国内森林に係る木質バイオマスの燃料調達及び使用計画の策定に当たっては、発電用に供する木質バイオマスの証明のためのガイドラインにもとづく、トレーサビリティの明確な調達ができるよう、ガイドラインにもとづいた証明書の信頼性を確保するためサプライチェーン全体の管理ができるように配慮すること。という趣旨を加える。
また、解説にもガイドラインの説明をする
 理由   発電利用に供する木質バイオマスの証明のためのガイドライン
http://www.rinya.maff.go.jp/j/riyou/biomass/pdf/hatudenriyougaidorain.pdf
の趣旨には「再生可能エネルギー電気の固定価格買取制度に対する消費者の信頼を確保するとともに、発電の燃料としての間伐材等由来の木質バイオマスや一般木質バイオマスが、円滑に、かつ、秩序をもって供給されることに資するよう、これらの供給者が、間伐材等由来の木質バイオマスや一般木質バイオマス由来であることの証明に取り組むに当たって留意すべき事項等さだめる」とあり、これは国産材にも当てはまる
ガイドラインに基づく証明書の連鎖には常にリスクがあり、発電事業者が積極的な努力をする必要がある

 該当
箇所

3.燃料の安定調達に関する計画の策定及び体制の構築
216 輸入木質バイオマスの場合

 意見
内容
 輸入木質バイオマスの場合には、加工・流通を行う取扱者において、(以下を挿入)発電利用に供する木質バイオマスの証明のためのガイドラインに基づい(以上挿入)その木質バイオマスが由来証明されたものであり、かつ発電用途以外の木質バイオマスと混合することなく分別管理されていることを証明する書類の交付を受けるとともに、その信頼性を確保するために努力をすること。とする
解説にもガイドラインの説明をする
 理由  同上

経済産業省が発する文書ですが、林野庁の発電利用に供する木質バイオマスの証明のためのガイドライン のことが、全く言及されていないので、繰り返し意見をいいました。

(energy1-24<FITpubcom>

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クリーンウッド法の進め方に関するパブコメ(2017/2/26)

2月22日から「合法伐採木材等の流通及び利用の促進に関する法律施行規則案等についての意見・情報の募集について」が政府の電子政府の総合窓口に掲載されています(3月23日締め切り!意見公募要領 )。

対象となるのは以下の文章です。

合法伐採木材等の流通及び利用の促進に関する法律施行規則案  
木材関連事業者の合法伐採木材等の利用の確保に関する判断の基準となるべき事項を定める省令案  
合法伐採木材等の流通及び利用の促進に関する基本方針案  

持続可能でクリーンであることがな明確な木材が主流になる大切なステップアップとなるのか?グローバルなインパクトを発信できるのか?

次号(3月15日目標)のテーマとします

boueki4-62<CWpubcom>

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森林環境税ー『林業経済』誌編集後記(2017年1月号)(2017/2/25)
1948年以来、林業経済分野の専門誌として毎月発刊をつづけている 『林業経済』誌)の編集後記を執筆しています。

編集委員会の了解を得て、このページに転載することとします。

学会と業界、官界、市民との間と架け橋になれるかどうか、大切な役割です。

少しでも、『林業経済』誌の認知度が広がる(なかで、購読者が増える)ことを願っています。(ご購入はこちらから

 目次 編集後記 
2017年1月号
<やまがら>傀儡国家は(  )依頼か?.......あべしっ、ひでぶっ
 
新年のご挨..................箕輪 光博 
創立70周年を迎えて....藤原  敬 
林業経済研究所創立70周年記念企画 リレーインタビュー①
 私の研究史〈熊崎実)......
特集 林業種苗生産の現状と課題(4)論文
 戦前期における林業種苗政策の形成過程......田村 和也 
 
 平成29年度林業経済研究所研究奨励事業(小瀧奨励金)公募のお知らせ.
 『林業経済』投稿連絡票...
 誓約承諾書...
森林関係者の新年会を歩いてみると、今年のトピックスは森林環境税が決着する年。

与党の税制大綱に「市町村が主体となって実施する森林整備等の必要な財源に充てるため、都市地方を通じて国民に負担を求めることを基本とする森林環境税の創設に向けて検討し、平成30年度税英改正において結論を得る」とされた。

森林整備に関する予算が国の補正予算に依存し、安定的な財源確保が必要との長年の関係者の思にそったものだが、国民の側から見ると増税である。都市住民が森林への税の投入をどんなにみているかが問われるのだろう。その点、当研究所がかかわっている「森林整備保全事業の費用対効果分析手法検討調査事業」「森林整備保全事業推進調査」の二つの調査は、森林の公的投資が国民の便益を与えるのか、をテーマとしたもので、背筋を伸ばして取り組んでいきたい。

本号から70周年特集が始まる。
そのはじめはリレーインタビュー熊崎実筑波大学名誉教授の「私の研究史」。旧林業試験場から筑波大学での研究生活を通じた、「水源林の応益分担」、「熱帯林土地利用」など社会的課題解明の最前線にかかわる研究史である。「これからあなた方が何を訴えていこうとするかを問いたい」。「中堅・若手研究者へのメッセージ」という節の冒頭の言葉が重さを持って伝わってくる。

特集「林業種苗生産の現状と課題」の第4弾は「戦前期における林業種苗政策の形成過程」(田村和也)である。外見で評価できない種苗の質が数十年後に買手の資産に重要な影響を与えるという種苗供給の特質に基づく種苗政策の原点を示してくれている。

本号は本誌の二つの特集が、重要な情報発信になることをしっかり伝えていただいた。

roomfj <ringyoukeizaishi/hensyukoukin>

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 森林村の住人、勉強部屋ニュース210号編集ばなし(2017/2/25)

人に話をするのは、自分の考えを再認識する機会。

森林分野技術士会の会合で話をさせていただいたのはありがたかったです。11月にいただいた話でしたが、森林関係の業界関係者の新年会にでてみると、「今度技術士会で話をするんだってね」と、何人かから声をかけられ、関係者がずいぶいるな、と思っていましあが、会員が500人なんだそうです。

パブリックコメント、委託調査の報告書、勉強部屋・・・できるだけ、外に向けて広い方々に共有してもらおいうというのが、情報発信の大切な仕事ですが、今回の場は、内輪?の森林関係者。

何が内で何が外なのか、というのはおかしな話ですが・・・。原子力村という話がありますが、村人のロジックが、周辺住民の大切なものを壊す可能性がある。そういう意味で、森林村の周辺を歩こうという意識が勉強部屋の意味合いでもありますが、それ自身が村人の気持ちですネ。

それはそれで、よいとしましょう。

konosaito<hensyukouki>

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最後までお読みいただきありがとうございました。

持続可能な森林フォーラム 藤原敬 fujiwara@t.nifty.jp

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