持続可能な森林経営の実現のための政策手段に関する勉強部屋
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ニュースレター 021
2001年6月25日
このレターは、表記HPの改訂にそっておおむね月に一回作成しています。情報提供していただいた方、配信の希望を寄せられた方、読んでいただきたいとこちらで勝手に考えている方に配信しています。表記HPも併せてご覧下さい。御意見をいただければ幸いです。 藤原
目次
フロントページ:アマゾンの森林から考える
「自足的社会」とバイオマスエネルギー
地球環境戦略研究機関(IGES)の森林保全プロジェクトj
セーフガードの対する制裁についてのリアクションwatch
「近くの山の木で家をつくる運動」ホームページ
日伯のアマゾン森林研究の夢
6月3日から17日まで15日間仕事でブラジルアマゾンの森林地域に行って来ました。目的はアマゾンの森林についての日伯共同研究についての打ち合わせです。国際協力事業団と森林総研が協力し、ブラジル側の国立アマゾン研究所との間で地道な熱帯天然林の動態についての息の長いモニタリングを行う基盤が整ったところです。この基礎的な研究の結果が具体的な荒廃地の回復のための事業のバックアップとなってゆくことが期待される夢の多い事業です。
プロジェクトのコンセプト
プロジェクトを紹介する科学技術省のウェブサイト
大型の森林研究プロジェクトが投入されるアマゾン地域
世界の熱帯雨林の50%、全世界の被子植物の37%の種があるといわれているアマゾン地域の森林については、世界中の援助機関・研究機関が共同研究・研究支援に乗り出しています。90年のヒューストンサミットで提唱された熱帯アマゾンの森林保全に関するパイロットプロジェクトPPG7、LBAとよばれる大規模生物圏大気圏循環プロジェクト、など、米国とECが肝いりで支援する大型のプロジェクトが実施されています。その結果質量ともに高水準の研究成果が公表されています。ちなみに、世界中の総合自然科学誌の中で論文平均被引用指数(インパクトファクター)が最も高い英国の科学誌Natureに昨年(西暦2000年)1年間に掲載されたアマゾンに関する論文は17件もあります。アマゾンの自然研究は紛れもなく人類の知の領域を広げる最前線の一つとなっており、これが人類の未来の幸福につながることを願うものです。
アマゾンの森林経営の質
このようにアマゾンの研究は進んでいますが、実際のアマゾンの森林管理の質はといえばあまりほめたものではありません。1999年のアマゾン天然林の伐採は、87%が違法、のこりの11%だけが合法で、合法伐採のうち10%は森林管理計画に基づかない略奪的伐採で、1%が合法的計画的伐採である」との報道がされている(ブラジルの代表的報道紙Veja1999年6月9日号)ほどです。他の資源国同様、90年代後半には様々の森林管理に関する法的整備を行ってきたのにもかかわらず、それを地べたにおろす人材がいないという、これも世界に共通する問題のようです。
ブラジル国内においても未開発地いえるアマゾン地域における人材養成は重要な課題であるとブラジル政府もいっていましたが、持続可能な森林経営というのは、中進国ブラジルにとっても大きなハードルがあるようです。
資源国のリーダーとしての大国ブラジル
ブラジルは9年前に地球サミットが開催された国で、地球サミットの森林条約を巡る攻防の中で、自国の資源の開発権の主張に基づき法的な拘束力を持つ条約反対の立場を主張した資源国側のリーダーです。地球サミット以降東南アジアの資源国が森林条約に対して柔軟な姿勢に変化してきた中で、反対の姿勢を一歩も変えなかったブラジルの立場は際だったものでした。ブラジルが真の資源国のリーダーとして、持続可能な森林経営実現のための先頭に立ってほしいと願います。
科学技術振興事業団が実施している戦略的基礎研究j事業の中に「農山村地域社会の低負荷型生活・生産システムの構築」というタイトルの研究があります。戦略的基礎研究費というのは「『科学技術創造立国』 を目指し、明日の科学技術につながる知的資産の形成や新産業の創出を図るため」、生命活動のプログラム、環境低負荷型社会システムなどいくつかのテーマに沿って応募されたプロジェクトを助成するものです。あくまで発案者個人のアイディアに対して助成していこうというところが興味深いところです。農山村社会の・・は小生の友人が中心となって進めているものです。この研究は環境負荷のできるだけ少ない「自足型社会」という概念を提出し、いくつかの地域でその具体的な実現方法を提示しようという野心的なものです。
中間報告書 研究年俸報告
この興味深い研究の勉強会で話をする機会がありました。東北大学で開かれた勉強会で「循環社会の中での森林・林産物と関連政策の課題」というテーマで話をさせてもらいました。ベースはセクション1に掲載されている「来るべき循環社会と森林林業の将来」ですが、特にバイオマスエネルギーについて関心が深いようなので、そちらの資料をいろいろあさっ準備をしてみました。
森林に関するバイオマスエネルギーについては、林野庁の「国有林のエネルギー資源利用検討会」が作成した報告書が大変まとまっていて参考になります(報告書要旨、目次、若干の余部があるようです必要な方はこちらへメールを下さい、本文ダウンロード28mb工事中)。
その中に一部掲載されていますが、日本中のバイオマスエネルギーのポテンシャルがどれだけあるか、という興味深い報告が最近いくつか公表されています。下表のとおりで、二つの報告に少し差があるようですが前者はポテンシャルそのままの、後者は技術的な制約を勘案と数字の性格が違うようです。日本の化石燃料によるエネルギー消費量の中でのオーダーを見ると約2%から約4%といったところのようです。山側には結構増やせる余地があると見ました。
原田寿郎
*南英治・坂史朗** 山から ササタケ 万トン 330 <941 里山広葉樹 万トン 900 270−320 間伐 万トン 500 197 林地残材 万トン 300 50 街から 工場廃材 万トン 40 216 建築廃材 万トン 800 206 古紙 万トン 1400 <280 合計 万トン 4270 <2210 石油換算 万トン 1800 930 備考 農林水産技術研究ジャーナル
2000/6
*森林総合研究所第51回木材学会大会
**京都大学
財団法人地球環境研究機関で森林保全プロジェクトというのが動いています。このたび第一期が終わり第二期に入るに当たり、第二期のコーディネーター役の井上真さんから「サポーター」にならないかというお声がかかり、5月の末に都内で行われたワークショップに出席しました。第一期から第二期へのつなぎの方向を探る議論です。
第一期は林産物貿易の国際取引規制の提言を視野に入れた、大変野心的な活動方針でした。まだ、アウトプットは出そろっていないようですが、IFFと森林条約に関するブレインストーミングフォーラム報告書(76KB) などは森林条約に関す包括的な検討資料として貴重なものでです。第二期については各国の参加型森林管理についての方策を探るというように地べたについた具体的提言をしてゆく方向に転身してゆくようです。それはそれで興味深い点ですが、森林条約についての検討集団が解散してしまうのは少しもったいないような気もします。岩手大学の法学部の磯崎先生が中心になっていたのですが、できれば、直接プロジェクトと離れてでも森林条約についての情報交換のネットワークを残しておいていただけたらと思います。
いよいよ中国が制裁措置を発動することとなり、マスコミの報道が様々な角度からなされています。関連報道
日本の経済外交の基本が問われることになります。それにしても、通商政策をつかさどる某大臣の最初の反応の報道にはびっくりしました。ロイター電。「3品とも対中国輸出の絶対量は大きくないことをあげ、『中国も、日本との関係を大切に思って、ある意味の意志表示を行ったのではないか』」。世界中でWTO違反の制裁を発動されて、「自国を大切に思っている意思表示だ」という貿易担当大臣がいるでしょうか。多分いろいろ発言されたうちの、その文脈だけが報道されてしまった、ということなのだと思いますが。
その後、中国側に「撤回要請」が行われたり、経済産業省の次官が制裁措置は日中貿易協定違反だと言及したりで、軌道修正されています。
「近くの山の木で家をつくる運動」ホームページ(2001.6.25)
近くの山の木で家をつくる運動 ネットワーキング集会「緑の列島フォーラムin東京」の開催が迫っています。大きな期待を背負って生まれた運動が、どんな方向に展開してゆくか、注目のフォーラムです。詳しくはこちらをどうぞ