ニュースレター No.203 2016年7月27日発行 (発行部数:1390部)

このレターは、「持続可能な森林経営のための勉強部屋」というHPの改訂にそっておおむね月に一回作成しています。

情報提供して いただいた方、配信の希望を寄せられた方、読んでいただきたいとこちら考えて いる方に配信してます。御意見をいただければ幸いです。 

                         一般社団法人 持続可能森林なフォーラム 藤原

目次
1 フロントページ:地方再生と木材利用を考える(2016/7/26)
2. グリーンウッド法でどうなる-合法木材供給事業者認定団体研修会開催結果(2016/7/26)
3.  合法伐採木材利用促進法ーその意義と展望(週刊農林誌投稿)(2016/7/26)
4. 森林認証制度の広がりー『林業経済』誌編集後記(2016/7/26)
5. アベノミクスと森林林業の未来ー勉強部屋ニュース202号編集ばなし(2016/7/26)

フロントページ:地方創生と木材利用を考える(2016/7/24)
 

一般社団法人ウッドマイルズフォーラム恒例のウッドマイルズフォーラム2016が、7月13日東京で開催されました。

副タイトルは「地方創生と木材利用を考える」。

地域と都市部の二つの取組に焦点をあて、木材利用の最新動向を学ぶと共に、地方と都市部の連携や地方創生との関係、木材のトレーサビリティの果たす役割などについて理解を深めます」(フォーラムちらしより)

団体の創設から関与していた大切な団体のメインイベントに参加してきました。内容が盛りだくさんという心配をしましたが、川下と川上のコミュニケーションの要点がよくわかる素晴らしい内容でした。

主催者による概要ページ

以下の4人のスピーカーによる講演とパネルディスカッションです

【基調講演】
『地方創生と木材利用』
有馬孝禮氏/東京大学名誉教授
『木材利用の拡大について』
吉田誠氏/林野庁木材利用課長【取組事例報告】
『根羽村のトータル林業、環境建築による持続可能な村づくり』
大久保憲一氏/長野県根羽村長
『CLTによる都市部での木材需要拡大』
有賀康治氏/一般社団法人日本CLT協会業務推進部次長
【質疑応答・意見交換会】
上記後援者+藤本昌也氏 藤原敬氏 三澤文子氏 ほか

(消費地と生産地の連携はうまくいっているか)

有馬先生の基調報告は、「長年木材と木造にかかわってきた」経験を踏まえて、建築への木材利用の風が吹いている現局面について、いくつかの課題を提起されました。

生産地と消費地の連携が重要な課題で、それがうまくいかないと今の木材利用の流れが資源の再生産に結びつかないリスクがある。住まい手と山の顔の見える関係が当初期待されるような運動として形成されなかった点なども指摘され、ウッドマイルズフォーラム自体がしっかり受け止めなければならない点でもありました。

連携問題では、矢作川の最上流・長野県最南端の羽根村の村長のお話は迫力がありました。下流の安城市の公共建築物利用促進方針に羽根産木材の利用が規定さているのだそうですが、ここにいたる過程には、大変長い明治用水土地改良区時代からのコミュニケーションの歴史があることが紹介されました。

(CLTは建築だけでなく国産材製材・ラミナーの供給体制を変える?)

「ブームになっている」、CLT話。推進するCLT協会の有賀さんだけでなく、有馬先生、吉田課長の話の主題にもなっていました。住宅以外の木材利用の一つの方向となっているCLTについては、建築物の軽量化・熟練技術の軽減など建築自体の合理化に貢献(吉田課長)という製品性能に関してだけでなく、その製造過程から、断面が複雑な国産材製材の加工流通の全体にわたる、変革のプロセスの出発点になる可能性?期待?がある、という指摘(有馬先生)がありました。

是非ウッドマイルズフォーラムウェブページから、内容を参照してください。

energy2-71(WMF2016)

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「グリーンウッド法」でどうなるー合法木材供給事業者認定団体研修(2016/6/26)

 7月7日恒例の合法性証明伐採木材の供給事業者を認定している団体を対象とした研修会があり、出席してきました。

平成28年度版 合法木材供給事業者認定団体研修会開催結果

(グリーンウッド法)

注目されたのは、「合法伐採木材等の流通及び利用の促進に関する法律」が成立し、それがいままでのガイドラインにもとづく合法性証明木材の体制とどう関係してくるのか?ということ。

これについて、林野庁の責任者である林野庁木材貿易対策室長から「合法伐採木材等の流通及び利用の促進に関する法律」(クリーンウッド法)の 経緯と今後の方向についてという話がありました。

来年5月の施行にむけて準備中で、検討事項が山積しているようですが、その内容を紹介します。

 
 

上の図が、配布資料の中で、今回の法律の内容として示された図です。

(事業者に課せられる努力義務)

事業者に対しては、①木材関連事業者は「木材等を利用するに当たっては、合法伐採木材等を利用するよう努めなければならない」という(努力)義務が課せられ[5条]、②合法伐採木材等の利用を確保するための措置を適切かつ確実に講ずる木材関連事業者は、登録により「登録木材関連事業者」という名称を用いることができる[8条、13条1項]と、という二つのことがかかれています。

これに対して、国は(果たすべき義務に関連する)木材関連事業者の判断基準となる事項をさだめ、指導助言するとされています。

事業者の義務となる合法伐採木材の利用につとめる、とは、いったい何をすることなのか、業種業態によってかき分けられるようです。特に輸入業者に対しては、原産国や木材種類に応じたリスクの違いによって、求められるものが違ってくるようです(配布された参考資料)。

(ガイドラインはどうなるか?)

ガイドラインとの関係はどうなるか、今後のことになりますが、配布された「参考資料」には以下のような説明があります。

Q4  「判断の基準」では、どのような木材が「合法伐採木材」とみなされるのですか。これまでの林野庁の「ガイドライン」に基づく合法性証明制度との関係は、どうなるのですか。

「. 本法では、木材関連事業者の判断の基準として、法第六条第一項第一号により「取り扱う木材等が我が国又は原産国の法令に適合して伐採されていることの確認に関する事項」を主務省令で定めることとしています。

2. 主務省令では、木材等について、製品名、伐採国、数量、供給元、供給先等の一般的な情報と法令の遵守に関する書類を確認することを求めることを基本として、そのための方法の一つとして、林野庁の定める「木材・木材製品の合法性・持続可能性の証明のためのガイドライン」に基づいて行われる合法性の証明を位置付けることを考えています。

3. 従って、これまでの「ガイドライン」に基づ<証明方法が、引き続き、経営上の仕組みとして位置づけられ、これにより合法性が証明されたものについては、本法において、合法性が確認されたものとして取り扱われることになります。,(なお、これまでの「ガイドライン」による証明制度を利用して合法性を証明していた木材関連事業者であっても、本法に基づく登録木材関連事業者になるためには、登録に関する申請手続きを行う必要があります。)

ガイドラインに基づく合法木材の供給体制はそのまま残る(のでないか)。

輸入材などガイドラインに基づく供給体制がはっきりしないものは、追加的な確認が求められる(のでないか)。

サプライチェーンを通じた合法性情報を業界団体に認定というツールで届けるのがガイドダインのポイントですが、この信頼性の確保という重要な課題がどのようになっていくのか、今後の課題のようです。

(合法伐採木材のワンステップアップ)

いずれにしても、「木材関連事業者」が、「木材を使用して建築物その他の工作物の建築又は建設をする事業その他木材等を利用する事業」といって木材のユーザーが含まれ、これらの事業者に合法伐採木材の利用をもとめ、そのトップランナーを登録しようということです。需要者が主導する緑の消費、グリンサプライチェーンの構築がワンステップ進むことは、間違えないところです

boueki4-61(goho2016)


合法伐採木材流通利用促進法ーその意義と展望(週刊農林誌投稿)

地方自治体の農林水産行政の担当者などをターゲットに発刊されている「週刊農林」誌農林出版社の依頼を受け、標記を投稿しました。

7月5日号農林抄に掲載されました


boueki4-60<syukannourin>

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合法伐採木材利用促進法ー『林業経済』誌編集後記(2016年6月号)(2016/7/26)
1948年以来、林業経済分野の専門誌として毎月発刊をつづけている 『林業経済』誌)の編集後記を執筆しています。

編集委員会の了解を得て、このページに転載することとします。

学会と業界、官界、市民との間と架け橋になれるかどうか、大切な役割です。

少しでも、『林業経済』誌の認知度が広がる(なかで、購読者が増える)ことを願っています。

 目次 編集後記 
2016年6月号
<やまがら>クラフトビールと地ビール・ブーム.........クラフト飲ん兵衛
 
研究ノート
 山梨県内の非合併山村自治体における高齢化・町村財政・ー女性就業率の推移─水源林地元村に着目して─.泉 桂子
論説
 TIMO・REITと育林資本─餅田論文への疑問─..村嶌 由直
書評
 奥田裕規編著『「田舎暮らし」と豊かさ─コモンズと山村振興─』
  .......沢畑  亨
 
 『林業経済』掲載規............... 30
 平成28年度 一般財団法人 林業経済研究所研究奨励事業
  (小瀧奨励賞)助成対象者決定のお知らせ...... ii
 13日参議院本会議で、「合法伐採木材流通・利用促進法」が全会一致で可決成立した。欧州木材規則、米国レーシー法などの動きを受け違法伐採問題に対応する我が国の姿勢を示そうと、G7サミット前のタイミグで新たな法律ができたものである。木材の加工と流通にたずさわる無数の中小企業者のネットワークを管理して、消費者に森林のガバナンス情報をとどけようという10年前にできた林野庁ガイドラインの提案は画期的なものだと思うが、さらにその信頼性を高めるためのツールが、登録した登録実施機関による「木材関連事業者」の登録制度。業界団体と一線を画した登録実施機関による何万社という木材事業者登録という大変な作業が始まることになる。登録実施機関という緑のサプライチェーン管理の大切な役割を研究所として果たすことができないか、検討のしどころだろう。
本号の内容は論文・書評・研究動向報告各一編づつである。
論文「北海道における苗木生産の現状と生産力拡大に向けた課題―苗木生産業者2社の実態調査を中心として」は先月号から始まった特集「林業種苗生産の現状と課題」の一編。今後期待される苗木生産者の生産能力の拡大に向け、製品基準の緩和や、専業機械メーカーへの存続施策など大胆な内容を含む提言となっている。是非、山林種苗業界の関係者にも読んで頂いたものである。
書評は「森林社会学への道」。今年「みどりの学術賞」を受賞された当研究所の評議員でもある三井昭二三重大学名誉教授の著作集である。自然しか見ていない自然保護活動と経済しか見ていない一部の林業経営者の対立構造に対して、学術的ないかなるアプローチがありうるか、きわめて実践的内容を含む問題提起である。
さらに、海外研究動向「カルロヴィッツ300年」は、現代のキーワードとなっている「持続可能性」という言葉で、300年前森林問題を論考したドイツの鉱山技師カルロヴィッツの業績の紹介である。
林業経済学のアカデミアの住民以外の方にも広く読んで頂きたい論考がそろった充実した内容となっている。

roomfj <ringyoukeizaishi/hensyukoukin>

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 アベノミクスと森林林業の未来ー勉強部屋ニュース203号編集ばなし(2016/6/26)

参議院議員選挙の結果が明らかになました。

改憲勢力が2/3、与党が勝敗ラインとしていた改選議席の半数を大きく上回る、といいながら、3年前の結果に比べると一人区の野党の健闘など「揺り戻し」という要素もあります。

米国の大統領予備選挙、英国の国民投票など最近の先進国での国民の投票行動は、既成のシステムへの反発の風が吹き荒れているようですが、日本の有権者は、新たに投票権を獲得した若者を含めて、ほとんど風が吹かせなかったといええます。

アベノミクス・地方創生、どれも「道半ば」の経済政策の推移が、今後、問われることとなるでしょう。

第二次安倍政権の経済政策をアベノミクスと称していますが、その成果が地方に及んでいないので、これからが本番、だということのようです。

地方のその恩恵が及ばないという声をうけ、ローカルエコノミクス・地方創生という旗が振られていますが、競争力をつけて大都市の企業がもうけ、それで終わるのか、その成果が地方に国民にと波及していくのかどうか、森林周辺の事情がよくわかる指標となるでしょう。

勉強部屋の勉強材料です。

ある時期に外部に発信した情報発信を整理してニュースにする、ということなので、読者が異なるのですが、今月号はグリーンウッド法関連が三つになりました。

konosaito<hensyukouki>

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最後までお読みいただきありがとうございました。

持続可能な森林フォーラム 藤原敬 fujiwara@t.nifty.jp

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