ニュースレター No.161 2013年1月20日発行 (発行部数:1180部)

このレターは、「持続可能な森林経営のための勉強部屋」というHPの改訂にそっておおむね月に一回作成しています。

情報提供して いただいた方、配信の希望を寄せられた方、読んでいただきたいとこちら考えて いる方に配信しています。御意見をいただければ幸いです。 
                                                    藤原

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目次
1 フロントページ:緊急経済対策補正予算の中の木材利用((2013/1/27)
2. ドイツにおける木材産業の動向(2013/1/27)
3 持続可能な開発目標と森林勉強ノート(優先分野などの各国アンケート)2(2013/1/27)

フロントページ:緊急経済対策補正予算と木材利用(2012/12/27)

政府は1月11日「日本経済再生に向けた緊急経済対策」を閣議決定し、これに基づき1月15日の閣議で歳出総額13兆1千億円の大型補正予算が閣議決定されました。(財務省

緊急経済対策は、@復興・防災対策、A成長による富の創出、B暮らしの安心・地域活性化の3分野が重点とされ、Aの中の「攻めの農林水産業」という項目の中に「木材利用ポイント」、と 木造公共施設整備が記載され、それぞれ補正予算で410億円(木材利用ポイント)、920億円(強い林業・木材産業構築緊急対策(「森林整備加速化・林業再生基金」の拡充等))などが計上されています(関連予算を含む)。

注目される木材ポイントは、「地域材を活用した木造住宅の建築、内装木質化、木製品等の購入の際に、木材利用ポイントを付与し、地域の農林水産物との交換等を行う取組」と説明されていますが、2009年から始まった家電エコポイント、住宅エコポイントの事業仕組みを踏襲し、「地域材」の普及をはかろうというものです。

木材の利用そのものにメリットを与える予算制度として、重要な予算だと思います。

家電エコポイントが一定の統一省エネラベル、住宅エコポイントが一定の省エネ基準、をクリアする製品の普及という役割を担っていましたが、木材ポイントでいう地域材というコンセプトがどのように定義されるのか、一つの注目点です。

予算の背景には以下のような記述があります。

・「森林・林業基本計画」に掲げられている「平成32年の木材自給率50%」の実現を目指すとともに、森林資源が豊富な農山村地域の振興を図るためには、年々増加し続けている森林資源(地域材)の利用を拡大していくことが大変重要です。
・このため、地域の川上から川下までの関係業者や地方公共団体の関係者等が一体となって、各地域の特徴を踏まえた、地域材の需要を大きく喚起する対策を進めることが必要です。

また、政府の予算措置で「地域材」にメリットを与えている現行制度には、国土交通省の地域型住宅ブランド化事業があります。

同事業募集要領によれば地域材は、@都道府県産材または同程度の履歴が証明された木材、A森林認証木材、B林野庁のガイドラインにより合法性が証明された木材のどれか一つとなっています。

背景の記述を見ると、国内の森林資源の増加が念頭あるので国内の森林資源から供給された木材であると見られますが、先例から考えると、一定程度のトレーサビリティが確保されていて、違法伐採問題のようは環境負荷が問題にならないようなことを前提とする材という形になっています。

いずれにしても、この制度が数年続く永続的な制度となるとは考えられないので、この制度が普及しようとしている地域材がどんなものか、わかりやすい説明がなされい、コンセプトが定着することを望みます。

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ドイツにおける木材産業の動向(2013/1/27)

ドイツの森林や林業木材産業の動向は、去年のNHKクローズアップ現代でも日本の現状との比較で議論されていますが、菅直人元総理がドイツで林業の現状にふれて、日本の林業再生に関心を持っていたという話は有名な話で、民主党政権下の森林林業再生プランのポンチ絵にもドイツ並みの・・・を達成という言葉があります。

昨年の11月に開催された林業経済学会秋季大会で、ドイツにおける木材取り引きの大口化−シュバルツバルト地域の事例−という報告がされているので、その内容を報告者の森林総研堀靖人領域長の了解を得て、掲載します。

ドイツにおける木材取り引きの大口化−シュバルツバルト地域の事例−発表資料 資料室リンク

上記は、資料にも掲載されている日本とドイツの国産材の生産量の推移ですが、森林面積が日本の半分ほどのドイツと日本の森林供給力の差が鮮やかに示されています。(この傾向が持続可能なものであるかどうかのチェックは必要ですが、その作業は別途「ドイツの森林・木材産業」林業経営者協会「世界の林業」などで行われている)

彼我の違いの基本にあるのは、生産過程の協同化・大型化よりも、すぐ川下の原木供給体制の協同化・大型化というのがキーワードだ、との指摘がされています。

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持続可能な開発目標と森林勉強ノート2(優先分野などの各国アンケート)(2013/1/27)

リオ+20の中で持続可能な開発目標(SDGs)を作成することが決まりまり、この作成作業の中で森林に関する目標がどう取り扱われるかが重要な注目点として指摘きしてきました(「持続可能な開発目標」と森林(2012/8/18))。

作業部会(Open Working Group)が昨年の9月に設置され、今年秋の国連総会に報告書を提出するというスケジュールがリオ+20で決まっていますが、内容の検討についても、昨年各国へのアンケートが行われ、そのまとめのレポートが国連の持続可能な開発目標のページに公表されています。

67回国連総会に向けての報告書Initial input of the Secretary-General to the Open Working Group on Sustainable Development Goals

Questionnaire related to the development of Sustainable Development Goals、各国に対するアンケートの回答

日本政府の回答

質問事項はこちらQuestionnaire related to the development of Sustainable Development Goalsけいされていますが、以下に仮訳を掲載します。どななことが議論されることになっているかがわかります。

 1 持続可能な開発を達成するために貢献するためにSDGsを通じて取り扱うべき重要な優先分野を5から10分野指摘してください。

2 持続可能な開発の経済、社会と環境の柱についてSDGsはどの程度バランスをとるべきでしょうか。
a 関連するターゲットを通じてそれぞれの目標の中で三つの側面を反映させるべき
b MDGsを2015年以降に向けて適切に修正更新し 大きな持続可能な発展の枠組みに向けて統合する
c MDGの第七目標(環境の持続可能性)を事前と環境資源の次元(水、食料、エネルギーなど)のいくつかの分野に拡張する
d その他(具体的に記載すること)

3 SDGsその他の現在ある目標の実施過程で貴国にとって重要なSDGsの分野を2分野選んでください
a 国の方針の決定
b 国の予算配分への影響
c 国の政策の効果の評価
d 持続可能でない分野の取り組み
e 政策策定過程で経済、社会、環境の柱の均衡
f 国際協力への枠組み方向性
d その他(具体的に記載すること)

4 各国ごとに異なった発展のレベルに自薦的に対応して普遍的に適用出来るSDGsを作成すべきか(帰国の状況に基づいて作成してください)

5 SDGsは本質的に地球的とされている。目標に関するターゲットは
a すべての国に適用される
b 各国ごとに作成される
c 国の性格と発展状況に応じ共通だが格差のあるものとすべきである。Cを選択した場合具体的にどうすべきか記載してください

6 どの既存の目標ターゲット(例えばMDGs、アジェンダ21の目標とゴール、JPOI)がSDGs作成過程で統合されるべきか

7 国連の2015年以降の開発目標とSDGsが一貫して整合性のあるものにするため、どのようなステップをとるべきか

8 地球レベルの達成状況を評価するためどのような評価方法がとられるべきか

9 策定改定を包括的参加型にするためにどのようた手続きがとられるべきか。どのように市民社会とその他の利害関係者がさんかすべきか?

10 どの原則がSDGsの土台となるべきか(例えばTT reportは不公平の減少、人権の拡充、持続可能性の確保の三点を挙げている)

11 新たな開発のための国際パートナーシップをSDGsの中であるいは関連して構築すべきか

12 その他にSDGに関する作業部会を開始するにあたって必要と思われることがあれば

上記の 「1 持続可能な開発を達成するために貢献するためにSDGsを通じて取り扱うべき重要な優先分野を5から10分野指摘してください」の結果を表にしたのが以下の表です

 

森林に関連する分野は上位にエネルギー、気候変動などたくさん並んでいますが、森林を指摘した回答は極めて少なかったようです。

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最後までお読みいただきありがとうございました。

藤原敬 fujiwara@t.nifty.jp

 

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