ニュースレター No.1252010年1月25日発行 (発行部数:1350部)

このレターは、「持続可能な森林経営のための勉強部屋」というHPの改訂にそっておおむね月に一回作成しています。

情報提供して いただいた方、配信の希望を寄せられた方、読んでいただきたいとこちら考えて いる方に配信しています。御意見をいただければ幸いです。 
                                                    藤原

目次
1 フロントページ:森林・林業再生プランの国際的視点(2010/1/31)
2 COP15の中の伐採木材製品についての合意(2010/1/31)
3 「地域材活用木造住宅振興事業」と合法性が証明された木材(2010/1/31)

フロントページ:森林・林業再生プランの国際的視点(2010/1/31)

林野庁のHP森林林業再生プランについて
森林・林業再生プラン(本文)  (PDF:176KB)森林・林業再生プラン(イメージ図) (PDF:171KB)森林・林業再生プラン概要(PDF:130KB)

昨年暮れ2009年12月25日農林水産省は森林・林業再生プランを発表しました。

緊急雇用対策(平成21年10月23日緊急雇用対策本部決定)を受け作成したものだそうですが、新政権の森林政策の骨子が明示されています。 

「コンクリート社会から木の社会」というキャッチフレーズに示されるように、森林政策の骨格が木の利用というところに着眼しているところが大きな特徴です。

2001年森林・林業基本法の制定時点は「多目的機能の総合的発揮」が林政転換のキーワードだったことを考えると、この十年で森林政策が環境的課題に中で位置づけられることが定着したことがわかります。

そして、木材の利用という新しい課題が基本法が目指す森林の多目的機能の総合発揮とどう関係していくのかよく議論が必要だと思います。

早速1月21日(木曜日)に、大臣を本部長とする「「森林・林業再生プラン推進本部」の第1回会合が開催され、今後のスケジュールなどが公表されていますが、この一年間森林林業基本計画の改定も含めて、新政策の具体化の検討がなされることになるようです。

木材利用が森林の多目的機能の総合発揮と結びつくとき、利用する木材の履歴ということが避けて通れない課題となります。

合法性の証明、持続可能性の証明などなどツールは開発がされてきました。プランの制度改革に位置づけられている、「(1)森林情報の整備、森林計画制度の見直し、経営の集中化(2)伐採・更新のルール整備、(3)木材利用の拡大に向けた制度の三つの課題が融合すれば、世界中が求めている、「持続可能な森林から生産された林産物を増やす」という森林に関する4つの国際目標(第三)(すべてのタイプの森林に関する法的拘束力を伴わない文書=NLBI)(UNFF4))をリードするものとなると思います。

再生プランの「目指すべき姿: 10年後の木材自給率50%以上」、は分かり易い目標でよいのですが、国際的視点にたった検討を期待します。

kokunai1-6<saiseiplan)


コペンハーゲン会合の中の伐採木材製品についての合意(2010/1/31

地球温暖化防止に関する森林吸収源の議論の中に伐採木材製品に固定された炭素を含める議論の行く末に関心があり、昨年12月コペンハーゲン会合の報告会に出席しました。

国際緑化推進センター平成21年1月:「CDM吸収源事業説明会 −COP15等報告会−」に林野庁担当者の報告資料が掲載されています。
COP15,CMP5コペンハーゲン会合における森林関連の議論林野庁研究・保全課赤堀聡之
COP15、COP/MOP5での植林CDM、REDD関連の議論について林野庁海外林業協力室武藤信之

既報のとおり、伐採木材製品に関しては、途上国が主張するオプション1(この部分を削除、すなわち現行ルールを継続し伐採木材製品を吸収源とはみなさない)と先進国が主張するオプション2(木材吸収分は収穫された森林所有国に計上、いわゆる生産法) の2選択肢が併記されているのでその行く末を質問してみましたが、この部分が全く削除されることにはならないのではないか、との感触でした。

該当の特別作業部会(AWG-KP会合)の報告書FCCC/KP/AWG/2009/L.15パラ21を和訳をしてみました。

伐採木材製品

21 付属書Tの締約国(先進国)は、以下の炭素貯蔵庫の全ての変化を計上しなければならない。地上の生物バイオマス、地下の生物バイオマス、リター、倒木、土壌有機物及び(伐採木材)(括弧付きで記載:選択肢を示す)。ただし、締約国は約束期間内にある貯蔵庫が排出源でないという透明で検証可能な情報が提供できる場合は当該貯蔵庫を計上外とすることができる。
21bis 略

伐採木材製品

オプション1 伐採木材製品の節を削除

オプション2 21terから21noviesまで

21ter 京都議定書第3条により森林吸収源として計上されている森林からから生産された木材からの排出については、木材生産国に計上することとし、伐出時点で排出に計上するか(default通常)あるいは、検証可能・透明性のあるデータが利用可能な場合、排出推定時点で計上する。
勘定は、伐採された森林を起源とする伐採木材と定義され、締約国の排出吸収の一部を構成する。

21quater京都議定書第12条により森林吸収源として計上されている森林からから生産された木材からの排出については、伐出時点で排出に計上するか(default通常)あるいは、検証可能・信頼性のあるデータが利用可能な場合、排出推定時点で計上する。勘定は、伐採された森林を起源とする伐採木材と定義され、その排出吸収は森林造成事業の活動に帰属する。

21quinquies木材の計上は国内において生産され消費された伐採木材製品の貯蔵庫のみの排出推定時点を基礎とし、また、輸出された伐採木材製品の貯蔵庫の排出推定時点を基礎とすることができる。

21sexies伐採木材製品からの排出量の推計は、製品のカテゴリー及び国内市場と輸出市場おける計算根拠を明確にする。

21septies輸出された材については、輸入国における木材の動向に関する当該国独自のデータに基づき、輸出された国ごとに報告されるべき。

21octies 廃棄物処理施設に埋設された木材はその時点で排出とする。

21novies(括弧付き:未合意) (90年以降)2007年12月31日以前に収穫された伐採木材プールからの約束期間中の排出は、上述と同様の方法で計上しなければならない。

21decies 付属書Tの締約国は参照レベル及び約束期間における伐採木材製品の取扱については一貫していなければならない。また、そのために必要な場合は勘定の調整をし、俣その調整の方法を報告しなければならない。

文書番号 FCCC/KP/AWG/2009/L.15
Report of the Ad Hoc Working Group on Further Commitments for Annex I Parties under the Kyoto Protocol to the Conference of the Parties serving as the meeting of the Parties to the Kyoto Protocol at its fifth session

所在アドレス http://unfccc.int/resource/docs/2009/awg10/eng/l15.pdf

kokusai2-35<HWPcop15>


「地域材活用木造住宅振興事業」と木材のトレーサビリティ(2010/1/31)

1月28日に成立した今年度の国の第二次補正で、国土交通省は地域材活用木造住宅振興事業を実施することとなり、公募情報が掲載されています

木造展示住宅の建設、木材生産現地研修会の開催に助成するという内容ですが、国土交通省が地域材活用を推進するロジックは何でしょうか?

09年6月に施行された「長期優良住宅の普及の促進に関する法律」では、「国産材(国内で生産された木材をいう。以下同じ。)の適切な利用が確保されることにより我が国における森林の適正な整備及び保全が図られ、地球温暖化の防止及び循環型社会の形成に資することにかんがみ」(4条3項)と規定され、社会政策、環境政策としての位置づけが与えられています。

産業政策でなく環境政策として木材の活用をとらえた場合、「木材なら何でもよいのか」という議論をクリアする必要が出てきます。

その点についての回答が地域材活用木造住宅振興事業手続きマニュアルの以下の部分です。

「1.1 木造展示住宅の建設」における補助の要件「産地証明等がなされている地域材」については、次のイからホまでのいずれかに該当するものとします。
イ都道府県により産地が証明される制度又はこれと同程度の内容を有する制度により認証される木材・木材製品(例:○○県産材認証制度など)
ロ森林経営の持続性や環境保全への配慮などについて、民間の第三者機関により認証された森林から産出される木材・木材製品(例:森林管理協議会(FSC)、PEFC森林認証プログラム(PEFC),「緑の循環」認証会議(SGEC) など)
ハ林野庁作成の「木材・木材製品の合法性、持続可能性の証明のためのガイドライン」(平成18年2月)に基づき合法性が証明される木材・木材製品
ニ産地、加工種などについて、民間の第三者機関により認証される木材・木製品(例:木材表示推進協議会(FIPC) など)
ホ上記イからニまでの方法によらず、企業等の独自の取組(森林の伐採段階から納入段階等に至るまでの流通経路等の把握など)によって、確実に産地が証明される木材・木材製品

今後、木材利用推進に関する法律などの議論が進んでいく中、重要な論点です。

kokunai6-17<kokkosyowood>



最後までお読みいただきありがとうございました。

藤原敬 fujiwara@t.nifty.jp

 

■いいねボタン