ニュースレター No.1232009年11月14日発行 (発行部数:1350部)

このレターは、「持続可能な森林経営のための勉強部屋」というHPの改訂にそっておおむね月に一回作成しています。

情報提供して いただいた方、配信の希望を寄せられた方、読んでいただきたいとこちら考えて いる方に配信しています。御意見をいただければ幸いです。 
                                                    藤原

目次
1 フロントページ:第13回世界林業会議の結果(2009/11/14)
2 モントリオールプロセス第二回国別報告書(2009/11/14)
3 木材・製材の合法性証明の意義と可能性:木材工業誌(2009/11/14)
4 書評:地球温暖化問題と森林行政の転換:林業経済誌2009/11/14)

フロントページ:第13回世界林業会議の結果(2009/11/14)


10月18日〜23日に、アルゼンチン共和国のブエノスアイレスで、第13回世界林業会議が開催されました。森林問題が地球環境問題になるずっと以前、1926年から開催されている伝統ある国際会議です。

地球環境時代に対する、伝統の森林関係者のメッセージがどんなものか、興味のあるところです。

林野庁のプレスリリース
IISDによる世界林業会議の毎日の日報(英文)

世界林業会議の大会最終日に「ブエノスアイレス宣言」が採択されました。、
本文はこちら(英文)

9のFINDINGS(知見)と27の戦略的活動が記載されています。

FINDINGSの冒頭は、「長すぎる期間、森林の課題は森林関係者の間でのみ議論されてきた。それなりの成果はあったが、今後の課題に挑戦するため、より包括的な対処が求められている。」と語られています。

27の戦略的活動について、以下に抄訳します。

  • 森林に対する悪影響を軽減するため、地球的、地域的、国家的、地方的レベルにおいて、気候変動、生物エネルギー、水、生物多様性、食糧確保そして貧困の緩和など重要な課題について、分野を超えた活動を始める。
  • 森林に対する政策と活動に関与するため、分野を超えたモニタリングと報告の仕組みを実施する。
  • 地域の土着の知識を重要な情報源として、持続可能な森林経営についての地球規模の情報蓄積に活かすための革新的仕組みの創設
  • 森林の知識と社会の関係の強化、特に地域の指導者を政策形成に活かす仕組み
  • 地方的、国家的、地球的レベルで、森林の所有者、森林の機能を管理するための森林所有者や地域の関係者に財政的なインセンティブを与えるため、森林の新しい価値を創設する仕組みの開発を強化する。
  • REDD課題に特に注目し気候変動関連のメカニズムに第一の優先順位をおく。
  • 森林と水の効果的な管理のための統合的な政策と戦略の開発する努力を傾注する。
  • 植栽された森林の経済的、社会的環境的な重要性を認識する
  • 劣化する森林の保全はじめ荒廃した景観に対する活動に焦点をあてる。
  • 植栽された森林の生産性を地域レベル景観レベルで維持改善するための技術開発を実施する。
  • 森林、農地、エネルギー産業に係る予期せぬリスクを回避するための持続可能な枠組みという政策の中で、燃料林を発展させる。
  • 持続可能なバイオエネルギーについての政策を実施する
  • 第2世代の技術(注1)を含むバイオマスの代替利用と効果的な生産についての技術開発を実施する。
    • (注1)糖質、デンプンなど可食資源を原料した第一世代に対して、セルローズなど非可食資源を原料としたバイオ燃料を第2世代バイオ燃料という
  • 森林を利用した炭素貯留機能を強化する方策及び気候変動に対応した新たな森林管理の手法を開発し、それを幅広く実行する。
  • 気候変動交渉に、科学的に証明され普及された見識を提供する
  • 森林造成に関するCDMルールを簡素化し、REDD+を実施する
  • 森林に対する地域住民がのニーズが国際的な気候変動の交渉において尊重され反映されるよう主張する
  • 気候変動への適応及び生態系、経済、社会に対する影響に関する研究の推進
  • 生態系の活力、気候変動・人間の影響への適応力を改善し、地域住民の食料、生活を含む生態系のサービスrを維持するため、分断された生態系を保全する
  • 林業に関連した活動による砂漠化防止への努力の改善
  • 森林産業に対する法的枠組み政策の創設
  • 新たなクリーンな技術、森林製品に関する研究の推進
  • 法令を強化する林業の制度を作る能力、国や民間レベルで持続可能な森林を促進するため、すべてのレベルのガバナンスを改善する
  • 公式非公式を問わず、助成の役割の価値を求める制度の提供する
  • 拡大する森林分野において安全で効率的な労働環境と従事者の技能の向上
  • 地域の住民の利用、管理の権限を認める条件で土地所有改革の推進
  • 林業分野いおける革新的な投資市場開発のを利用し、国家の林業計画に基づく財政的な戦略の構築

気候変動枠組み条約のCOP15直前ということもあり、「気候変動問題のメカニズムに第一の優先順位をおく」としているところが全体の特徴ですが、森林関係者の責務としてローカルな住民の権利や貢献を責任をもって外部に発信し、他分野から仕掛けられる地球環境のフレームワークの中に、明確に位置づけ統合するのか、といったところでしょうか。

その他に「世界林業会議からの気候変動COP15へのメッセージ」が採択されました。
大会のホームページから当該ページ
(英文)

また、モントリオールプロセスとしてサイドイベントとブース展示がされ、モントリオールプロセスの日本の第二回国報告書が会議で報告されました。英文と和文の報告書全文がこちらの掲載されています

chikyu1-17 <WFC2009>


モントリオールプロセス第二回国別報告書(2009/11/14)

国際的な森林の持続可能な管理を実現する道筋として、各国が自国の森林と管理状態を信頼できる基準に基づいて公表するという手続きがとられていますが、日本政府は日本が参加するモントリオールプロセスの基準指標に基づき、第二回の報告書を作成し、第13回世界林業会議の場で公表しました。

林野庁関連プレスリリース:モントリオール・プロセスの下での我が国の「第2回国別報告書」の作成について(本文はこちら日本語、英語

モントリオール・プロセスでは、基準・指標に基づき、各国の森林及び森林経営の状況を継続的に把握・報告する取組を進めています。本報告書は、2003年に作成した第1回国別報告書に続くもので、06年に決定された7基準64指標に沿って、我が国の森林及び森林経営の状況を様々な側面から記述しています。

2回の報告がでたところで、国際的な評価基準が日本の森林の管理政策にどのようにフィードバックされてくるのか興味深い点です。

林野庁HPによる、モントリオールプロセスの概要

基準指標作成時期の小HP関連ページ

chikyuu1-18<montrealreII> 


木材・製材の合法性証明の意義と可能性:木材工業誌(2009/11/14)

社団法人日本木材加工技術協会機関誌木材工業誌に「木材・製材の合法性証明の意義と可能性ー業界団体認定によるエコプロダクツ情報の伝達」を投稿させて頂きました。

はじめに

「木材産業が環境産業としてさらに発展するために貢献する」社団法人日本木材加工技術協会創立60周年記念宣言の結語である。

再生産可能で環境負荷が少ない素材である木材が化石資源を代替することは低炭素社会に重要な課題であり、その素材供給を担う木材産業は環境産業という図式だが、同宣言の冒頭にもふれられているが、「適正に管理された森林から生産される木材の活用」が前提である。

エコマテリアルである木材普及のネックになる可能性のある、原料の生産地点での環境負荷についての情報。この課題に取り組んだのが、違法伐採された木材は取り扱わない、合法性・持続可能性が証明された木材・木材製品(以下「合法木材」という)の供給システムに対する取り組みである。

筆者は(社)全国木材組合連合会で林野庁補助事業である「違法伐採総合対策推進事業」(06年から08年)「合法性等の証明された木材の普及促進事業」(09年から)の実施を担当してきたが、事業内容を紹介しつつ、21世紀の製材業・木材産業という大きな文脈のなかで、この取り組みの持つ意義と可能性を考えていきたい。 


興味のある方は、編集部の了解をえて、全文をこちらにおいてありますのでご覧下さい。

boueki4-42<goho-toukou>

書評:地球温暖化問題と森林行政の転換:林業経済誌2009/11/14)

依頼されて投稿した書評:滑志田隆著「地球温暖化問題と森林行政の転換」が林業経済誌 Vol.62 No.3 No,728 2009.6に掲載されました。

1 はじめに

林政ジャーナリストの会の主要メンバーで元林政審議会特別委員、毎日新聞記者の滑志田隆氏が表題の著書を出版された。

評者は1970年代のはじめから2001年までの30年ほど林野庁で森林林業政策に携わり、その後、独立行政法人森林総合研究所、社団法人全国木材組合連合会と林野行政とその隣接分野に勤務してきた。この期間は、世界中の森林管理行政の管轄部署が、林業行政から森林林業行政に転換を迫られた時期であった。

この転換は、本書が指摘するような森林問題の地球環境問題化というパラダイムシフトによるとともに、我が国の場合は行政改革すなわち、行政と一般国民との間の関係の変化という要素が重なり合って起こったものである。

この転換は、どこの国にとっても基本法令の改訂、組織の再編という外形的な形態のみならず、行政主体と利害関係者との関係、さらには、行政に携わる関係者の行動規範や問題意識の変換を要求するものである。

現在評者の仕事の重要な部分を違法伐採問題への取組が占めているが、行政と現場との間の乖離に発する違法伐採問題が広範に所在することは、この行政の転換と無関係ではないというのが、評者の考えである。 

長年、地球環境問題を追及してきた滑志田氏が、ジャーナリストの鋭い嗅覚で林業行政の転換をどのように見つめてきたのか、評者ならずとも興味のあるところであろう。


興味のある方は、編集部の了解を得て、全文をこちらにおいてありますので、ご覧下さい。

kokunai6-21<nameshida>



最後までお読みいただきありがとうございました。

藤原敬 fujiwara@t.nifty.jp

 

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