ニュースレター No.095 2007年7月14日発行 (発行部数:1350部)

このレターは、「持続可能な森林経営のための勉強部屋」というHPの改訂にそっておおむね月に一回作成しています。

情報提供して いただいた方、配信の希望を寄せられた方、読んでいただきたいとこちら考えて いる方に配信しています。御意見をいただければ幸いです。 
                                                    藤原

目次
1 フロントページ:国産材の供給動向と「持続可能な森林経営」(2007/7/14)
2 ウッドマイルズ研究会の総会とウッドマイルズフォーラム2007 in つくば(2007/7/14)
3. 違法伐採対策推進国際セミナー2007in東京報告「熱帯林業誌」掲載(2007/7/14)
4. 大手住宅メーカーの木材調達方針(2007/7/14)

6.

日本のFSCの展開 Foresta(続き)2007/6/17)

フロントページ:国産材の供給動向と我が国の「持続可能な森林経営」(2007/7/14)

農林水産省が毎月の製材業者の素材(原料丸太)入荷量をサンプル調査した結果を公表しています(製材統計)が、今年に入ってから製材業界に対する国産材の入荷量対前年比10パーセント増という動きになっています。

製材用素材入荷量の推移
国産材 輸入材
千m3 対前年比 千m3 対前年比
2007 1 1 663 1.159 615 0.861
2 1 822 1.149 671 1.003
3 1 882 1.057 736 0.996
4 1 718 1.124 663 0.885
5 1 740 1.119 658 0.884
出所 農林水産省「製材統計」

また、7月2日に林野庁は「主要木材の短期需給見通し(平成19年第3四半期及び平成19年第4四半期)」を公表しましたが、上記のことが今回の公表にも現れています。

この数値は、四半期ごとに林野庁が発表する恒例もので、国産材や輸入材の供給見通しが品目ごとにどよようになるのか、半年先までの見通しを公表しているものです。

短期的な需給動向がもしもはっきりわかればビジネスにとっては大変重要な情報ですが…、それはそれとして、今回の公表で国産材を巡る木材供給の構造的な変化がわかります。

下表は発表された四半期ごとの短期需給見通しを暦年にまとめて、対前年比をとったものです。注目点は国産材の動向です。この数値は製材業者に対する国産材丸太の入荷量をベースとしたもので、他の材種のほとんどは数値が前年と比べて減ないし横ばいなのに比べて、国産材の入荷量は前年比5パーセント以上の拡大が見通されています。

表 主要木材の短期需給見通し(概要)
区分 2006年実績 2007年見通し 対前年比
国産材 丸太 12019 12645 105.2%
米材 丸太 3240 3208 99.0%
製材 3441 3096 90.0%
欧州材 製材 3045 3057 100.4%
南洋材 丸太 1372 1199 87.4%
製材 516 496 96.1%
NZ材 丸太 852 915 107.3%
製材 477 486 102.1%
合板 国内生産 3263 3255 99.8%
輸入 4881 4708 96.5%
構造用集成材 国内生産 1490 1480 99.4%
輸入 806 801 99.4%

木造住宅会社の国産材使用量が増加している(国産材の使用状況の変化調査「日刊木材」)などエンドユーザーの動きや、中国の木材需要増大などの国際的な木材需給環境の変化を背景に、国産材をめぐる風向きが変わってきたといわれています。このことが、各地で国産材製材工場が生産能力を上げるなど国産材の具体的な需要の拡大となってマクロな数字となって現れてきといえます。

日本政府は、長い間「国産材の利用推進」を政策に掲げてきましたが、利用圧力の拡大という急速な環境の変化の中で、伐採されたあとの森林の再生などが課題となっています。「持続可能な森林管理」という国際的な課題が、我が国の森林の現場にとっても切実な問題になっているといえるでしょう。

kokunai6-9<kokusanzaiSF>

ウッドマイルズ研究会の総会とウッドマイルズフォーラム2007 in つくば(2007/7/14)

6月30日ウッドマイルズ研究会の総会がつくば市内で開催され、また、ウッドマイルズフォーラム2007があわせて開催されました。

(4年たったウッドマイルズ研究会総会)

木材の輸送過程の環境負荷やトレーサビリティについての問題提起をコンセプトとするウッドマイルズ研究会発足してから4年たちました。活動の内容を中心とした書籍も出版され、80名ほどの会員に支えら着実に活動の基盤が作られてきました。(総会の報告はこちらから)

その間に関連する分野の動きを見ると、@木材行政の関係では、京都議定書の達成と国産材の利用推進を結びつける「3.9木づかい運動」がうまれ、都道府県では地域材の普及に関する認証制度や合法木材の供給体制などが進展し、またA建築関係でも建築物の環境負荷の評価手法が開発されなど、研究会の問題提起はけっこう世の中の先取りをしていたと考えています。

総会でも議論されましたが初期段階の助成制度がそろそろおわりことになるので、多くの会員にささえられた持続可能な組織にしていくことが課題となっています。

それに向けて、夏から秋にかけて、地域の工務店関係や市民向けのフォーラムを熊本(8月23日)と北海道(8月下旬札幌、下川)で、また、地域材の利用推進に取り組む行政関係者向けセミナーを9月下旬京都で開催予定です。

(ウッドマイルズフォーラム2007inつくば)

つくば市で総会を開いた機会に標記のフォーラムを開催しました。
ウッドマイルズフォーラム2007inつくばの概要

茨城県は、つくば市を中心とした県南では住宅建設が進んでおり、他方で県北には八溝・高萩など歴史のある林業地帯があり、この2つを結びつけるという大変わかりやすい「つくばスタイル木の家クラブ」という活動があります。フォーラムの会場はこの運動の中心となっているいばらきの家モデルハウスでした。

各地のこのような運動を「ウッドマイルズレポート」などの形で支援するのが研究会の原点です。

フォーラム終了後、環境NGOFOEジャパンの副代表岡崎さんの新築住宅を見学しました。FSCのヒノキ床材、壁材、地マツの梁材など、徹底的にトレーサビリティにこだわった住宅です。

「いうは易く行いがたい」といいます。普通の住宅では、施工業者やプレカット業者が使い慣れた木材を使うことになるわけですが、「施主が木材を支給する」ということにするためには、ご自身で現物を確認に日本中を探し回ったり、いやがるプレカット業者に説得をしたりと、大変なご苦労だ
ったそうです。

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違法伐採対策推進国際セミナー2007in東京報告「熱帯林業誌」掲載(2007/7/14)

財団法人国際緑化推進センターが出版している熱帯林業誌の69号に標記小論が掲載されました。

このセミナーの概要は、報告の詳しい内容に至るまで合法木材ナビ上に公開されています(こちら)。また、質疑の内容も含めた報告書が作成されており、これも、同じくHP上に公開される予定です。

私自身は今回のセミナーの主催者という立場でロジ関係をやっていたため、内容についてのつっこんだ議論をする機会がありませんでしたが、小論では、「輸入材の合法性証明の方法の評価」という課題を念頭に企画した、今回のセミナーの評価に若干踏み込んでみました。

当該部分を以下に引用します
 現在実施中の12の証明方法を比較してみると、@公的機関ないし第三者機関がすべての物件を証明するもの(インドネシアBRIK、マレーシアサラワク州STIDC、パプアニューギニアSGS)、A第三者の認定手続きにより資格を与えられた事業体が証明するもの(ロシアDEL、日本木材表示協議会及びSGEC、ケベック州Q-web、米国SFI及びATF、パプアニューギニアとロシアのSGS-VLTP)、Bその他のもの(日本製紙連合)に分類出来る。

以上のように地域によって変化はあるが、今回の説明された証明方法は、林野庁ガイドラインが要求している、@伐採時点の合法性を証明している、A第三者などによる認定により、事業者本人の申し立てを補強している(あるいはそれと同等以上の信頼性を確保している)こと、という最低の基準をどれも満たしているといえる。

 問題は、これらの建前が現場レベルでどれだけ有効に機能し、信頼性のある合法木材を供給することができているかどうかだが、そのことは今回のようなイベントによって確認することは難しい面がある。

 この点で重要なのは表2のように、@システムに対する批判および問題点の認識、A改善の手続き、B今後の展望、という項目を設定して記述を要請したところである。管理責任者自身が、システムの問題点を自己認識し、改善に向かうという姿勢が現れているかどうかが、そのシステムの運用の実態を反映しているといえないこともない。とくに、情報の公開制と外部からのクレームを処理する体制が一つのポイントになるのではないと考えている。


主催者の了解を得て、pdfファイルを掲載します。(こちらからどうぞ

boueki2-29<semi07NR>

大手住宅メーカーの木材調達方針

大手住宅メーカーであり木材輸入業大手の住友林業「木材調達の理念と方針」を発表しました

木材調達方針として以下の4つの方針を取り上げています
4つの基本方針となります。
 
1.合法で持続的な木材調達のために
2.信頼性の高いサプライチェーン構築のために
3.ライフサイクルでの環境負荷低減と木材資源の有効利用のために
4.ステークホルダーとともに
また、山林部門、輸入、国内流通、住宅など全ての事業部に共通する行動計画の中で、「2009年までに合法性を確認した木材・木材製品の取扱い100%にする」ということで、違法伐採問に取り組む木材業界にインパクトを加えていますが、その他2008年中に「持続可能な森林の基準を策定」というのも注目すべき点です。

住宅メーカー最大手の積水ハウスも、「木材調達ガイドライン」を公表しています

1)

違法伐採の可能性が低い地域から産出された木材。

2)

貴重な生態系が形成されている地域以外から産出された木材。

3)

地域の生態系を大きく破壊する天然林の大伐採が行われている地域以外から産出された木材。

4) 

絶滅が危惧されている樹種以外の木材。

5) 

消費地との距離がより近い地域から産出された木材。

6) 

木材に関する紛争や対立がある地域以外から産出された木材。

7) 

森林の回復速度を超えない計画的な伐採が行われている地域から産出された木材。

8) 

国産木材

9) 

自然生態系の保全や創出につながるような方法により植林された木材。

10) 

木廃材を原料とした木質建材。
環境NGOや主要取引先と連携し、これらの指針に関する調達実績調査を実施しているそうです。

kokunai3-31<HMakerG>

日本のFSCの展開 Forsta(続)(2007/7/14)

既報の通り、第1回Forsta国際セミナーが以下の通り開催されました。
以下に資料が掲載されています
http://www.forsta.or.jp/2_top_news/seminar.htm

日時:2007年6月26日(火) 13:00〜17:00
場所:東京大学 弥生講堂 一条ホール
出演: Kevin Jones氏 (Soil Association/FSC森林認証チーフプロデューサー)
                            (逐語通訳あり)
      「最近の木材需給の変化に対応する森林資源管理の在り方―FSC認証の世界での現場から―」(pdfForstaページ)
    山田 稔氏 (株)山田事務所代表
     世界・日本の木材市場の動向と日本の木材需要の変化」(pdf小サイト内)
    古河 久純氏 古河林業(株)代表取締役社長
     「今求められる木材と林業―林業とハウスメーカーの立場から―」(pdfForstaページ)

コーディネーター: 速水 亨 Forsta副代表 速水林業椛纒\

イギリスに本拠地を置くKevin Jones氏は国際的な木材需給関係の変化を切り口にFSCについてのイントロをしまいたが、その問題については山田稔さんの詳しい資料が参考になります。小サイト向けに掲載用のファイルを頂きましたので、上記に掲載してあります。

日本の森林にとって森林計画制度上の収穫規制や、森林認証が本当に実力を発揮するのは、これからかもしれません。

sinrin2-12<Forsta>

最後までお読みいただきありがとうございました。

藤原敬 fujiwara@t.nifty.jp

 

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