ニュースレター No.072 2004年8月7日発行 (発行部数:1200部)

このレターは、「持続可能な森林経営のための勉強部屋」というHPの改訂にそっておおむね月に一回作成しています。

情報提供して いただいた方、配信の希望を寄せられた方、読んでいただきたいとこちらで考えて いる方に配信しています。御意見をいただければ幸いです。 
                                                    藤原

目次
1.
フロントページ:地域材利用推進とウッドマイルズ(2005/8/7)
2 21世紀の森林整備の推進方策のあり方に関する懇談会(2005/8/7)
3. グレンイーグルスサミットと違法伐採問題(2005/8/7)
4. 林業経済学会の分科会報告のスケジュール(2005/8/7)
5. 新たな住宅政策についての審議会部会報告への意見募集(2005/8/7)

フロントページ:地域材利用推進とウッドマイルズ(2005/7/10)

道府県産材認証の広がり
7月21−22日にウッドマイルズ研究会と京都府の共催で「ウッドマイルズ地域材セミナー2005in京都」が開催されました。

地域材利用を推進している自治体や業界関係者を対象にして開かれたもので、50名の方が参加されました。

<地域材利用推進とウッドマイルズ>

私も概論部分を担当し、表記のタイトルで以下のような話をさせて頂きました。

近年、県産材を認証(上図)しそれを利用した住宅への助成など、地域産材の普及をはかる動きが急速に拡大していますが、「公的機関の主導」から「民間への波及」という段階には至っていません。その理由は、県産材の利用というコンセプトに若干不鮮明なところがあるからではないでしょうか?ウッドマイルズは「地域材利用推進と、環境にこだわる消費を結ぶツール」とです。(資料pdf)

<全体のプログラム>

そのほか、昨年から始まった京都府産材のウッドマイレージを使った評価や、新しくできたマニュアルの説明、また、「地域材を使って森林をまもる事例報告」など興味深い内容でした。

プログラムは以下の通り
1.「ウッドマイルズは何を明らかにするのか:地域材利用推進とウッドマイルズ」

藤原敬((社)全国木材組合連合会・全国木材共同組合連合会常務理事
ウッドマイルズ研究会代表運営委員)
2.「ウッドマイルズの算出方法と事例」
滝口泰弘(NPO法人WOOD AC代表理事、ウッドマイルズ研究会事務局長)
3.「ウッドマイレージCO2を組み込んだ京都府産木材認証制度」
白石秀知(京都府農林水産部林務課林業普及指導員、ウッドマイルズ研究会運営委員)
4.意見交換会
5.交流会(18:00〜20:00)
(7月22日:2日目)9:00〜12:00
6.「地域材を使って森林を守る事例報告」
@山の立木を購入して取り組む家づくり
大津の森の木を使って家をつくる会株式会社坂田工務店坂田徳一氏
A環境貢献度で山の立木を販売するサウンドウッズ
木材コーディネーター有限会社ウッズ能口秀一氏
B地域材を使って森林を守る府民運動(京都府)
京都・森と住まいの百年の会企業組合もえぎ設計田村宏明氏

配布された資料を資料室に置きます。

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21世紀の森林整備の推進方策のあり方に関する懇談会(2005/8/7)

林野庁で開催していた表記の懇談会の中間報告案が公表され、意見と情報の募集が始まっています。(→林野庁HPこちら

地方の公社造林についての検討会だと思っていたのですが、森林整備についての幅広い検討をしています。

研究会の過程で配布された以下の資料を資料室におきます。

日付 資料名
第一回 4月12日 資料1   我が国の森林と森林整備に関する施策の経緯
資料2   民有林造林の推進手段としての公社造林
第二回 5月17日 資料    これからの森林整備政策の推進方向
第三回 7月5日 追加資料 木材の利用推進と供給体制整備について
       公的機関による分収造林について
       既往のコスト・債務について

特に、第一回の資料の「我が国の森林と森林整備に関する施策の経緯」は第二次大戦直後の政策当局が置かれていた立場や、その後の展開について大変わかりやすく解説されていて、参考になります。

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グレンイーグスルサミットと違法伐採問題(2005/7/10)

7月英国のグレンイーグスルで開催された主要国首脳会議(G8サミット)はアフリカと気候変動・地球環境が二つの大きな議題で、12の文書が作成されました。

そのうちの「気候変動、クリーン・エネルギー、持続可能な開発」と題する地球環境問題をあつかった文書は(総論行動計画)に分かれており、行動計画の、最後の部分に、違法伐採への取り組みというタイトルで三つのパラグラフがあります。

違法伐採への取組

  1. 我々は、違法伐採が、アフリカ及びその他すべての地域における最貧国の多くの人々の生計に与える影響、また、環境劣化、生物多様性の損失と森林破壊、そして世界的な持続可能な成長に対する影響を認識する。我々は、特にコンゴ盆地、アマゾン地域を含む、世界的な炭素吸収源の重要性を認識する。
  2. 我々は、違法伐採に取り組むことが、森林の持続可能な管理に向けた重要な一歩であることに合意する。この問題に効果的に対処するためには、木材生産国及び消費国双方の行動が必要である。
  3. 我々は、G8環境・開発大臣会合の違法伐採についての結論を承認する。この分野における我々の目的を更に推進するため、我々は同会合において支持された結論を、各国が最も効果的に貢献できる分野において行動することにより、推進する。
グレンイーグルス行動計画 気候変動、クリーン・エネルギー、持続可能な開発(外務省仮訳)
GLENEAGLES PLAN OF ACTION: CLIMATE CHANGE, CLEAN ENERGY AND SUSTAINABLE DEVELOPMENTpdfファイル
この問題に取り組むためには「生産国のみでなく消費国の行動が必要である」として、日本のような木材の消費大国での具体的な取り組みが始まろうとしています。

<違法伐採問題の背景>


サミットで違法伐採問題が取り上げられたのは7年前の1998年バーミンガムが最初で、ブレア首相のこの問題についてのこだわりがわかります。

違法伐採問題が国際政治の舞台に登場したのは、90年代の半ばで英国に本部を置くNGOである、EIA(Environmental Investigation Agency)によるインドネシアの国立公園の報告書だとされています。
The Final Cut -Illegal logging in Indonesia's Organgutan Parks

地球サミットで議論された「持続可能な森林管理」が、特に熱帯林問題では全く改善されない状況に対して、NGOと欧州の政治家が風穴を開けようとした構図が見えます。

<地球サミットの教訓>

海外における不適切な森林管理についての指摘が、自国の森林管理の透明性についての課題としてブーメランのようにはね返えってくる、ということは、92年の地球サミットの時の教訓です。

90年代の初め盛んになった、途上国における熱帯林の管理についての問題提起は、地球サミットの議論中で「すべての森林の持続可能な管理」という形で、問題設定がしなおされ、その後、多くの先進国は自国内の経済林のかなりの部分を第三者認証の枠組みにのせるという形で説明責任を果たそうと努力してきました。

今回の違法伐採問題も具体的な方策に一歩踏み出せば、G8側も自国の森林管理や流通の透明性についての説明責任問題に直面する性格を持っています。

10数年にわたる各国の森林政策の水準がグローバルスタンダードをもとチェックされる機会であるともいえます。

参考資料
Welcome to illegal-logging.info 英国政府が関与している情報源
全木連の関係ページ
FOEの関係ページ
グリーンピースジャパンの関連ページ

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林業経済学会の分科会報告のスケジュール(2005/8/7)

11月12-13日に愛媛大学で開催される2005年林業経済学会秋季大会で、「地球規模での持続可能な森林管理への課題」という分科会を設置することとしましたが、の事前のスケジュールが発表になりました

とりあえず、重要な日程は
◆大会発表の申込締切:8月16日(火)簡易書留にて必着
◆大会参加の申込締切:8月31日(水)郵送にて必着

グレンイーグルスG8首脳会議での違法伐採問題への関心、気候変動枠組み条約など本来別の目的をもった環境条約の中での森林に関する議論の展開・・・・

他方で、地球サミット以来10年以上がすぎてもいっこうに展望がひらけない、国際的な森林管理の枠組み。

G8の一国である日本で活動する森林林業政策に関わるアカデミックな集団がどんなスタンスで取り組むのか結構重要なテーマだと思います。

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新たな住宅政策についての審議会部会報告への意見募集(2005/8/7)

国土交通省では次期通常国会での上程にむけて、住宅基本法を策定すべく検討をしています。

関連して、国土交通省の社会資本整備審議会住宅宅地分科会基本制度部会(部会長:八田達夫 国際基督教大学教授)は、「新たな住宅政策に対応した制度的枠組みはいかにあるべきか」という審議結果の報告案を公表し、意見公募(8月12日締め切り)をしています。(報告書や応募要領など)国土交通省のHP

報告書は
T これまでの住宅政策を支えてきた制度的枠組みの見直しの必要性
U 住宅政策の方向性を示す制度的枠組みの構築
V 新たな制度的枠組みの下での政策展開
の三つの章に分けて記述していますが

背景や課題を記述しているTの部分には以下のような重要な記述があります。
3.住生活をめぐる諸課題への対応

p.8(pdf版)
3(2)環境問題への対応
また、森林経営により、約3.9%の温室効果ガスの吸収が可能と推計されており、国内の健全な森林整備がすすめられるよう、木材の主要な利用先である住宅において木材の利用を推進する必要がある。

p.11(同上)
3(6)地域の伝統・文化等と調和した美しい居住環境づくり
(前略)
住宅もそれ(地域ごとに多様に育まれた伝統・文化)を反映した豊かな地域性を持つものであり、地域材等地域の資源を活用し、気候・風土に即した伝統的な木造軸組住宅の価値をあらためて見出すなど、地域性に根ざした住宅のあり方を問い直す必要がある。

この記述が基本法のどの部分に活かされることになるのか、パブリックコメントなども含めた議論の深化が望まれます。

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最後までお読みいただきありがとうございました。

藤原敬 fujiwara@t.nifty.jp

 

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