ニュースレター No.068 2004年4月5日発行 (発行部数:1160部)

このレターは、「持続可能な森林経営のための勉強部屋」というHPの改訂にそっておおむね月に一回作成しています。

情報提供して いただいた方、配信の希望を寄せられた方、読んでいただきたいとこちら考えて いる方に配信しています。御意見をいただければ幸いです。 
                                                    藤原

目次
1.
フロントページ:現代社会の課題と森林総研(2005/4/5)
2. 「消費者の環境指向と地域材活性化の課題」日本森林学会報告から(2005/4/5)
3. 京都議定書目標達成計画案への意見(2005/4/5)
4. G8環境開発大臣会合違法伐採問題への取り組み(2005/4/5)

フロントページ:現代社会の課題と森林総研(2005/4/5)


森林総研HP
自然探訪から
個人的なことで恐縮ですが、3月末で4年間勤務した森林総研を退職いたしました。

研究所の勤務といっても研究に従事していたわけではなく、小HPは所属先とは関係なしに運営していたのですが、勤務先が森林総研であることは、手近に層の厚い情報源があるという意味で、小HPの運営上大変メリットのあることでした。(森林総研の皆様いろいろお世話になりました)

HPの検索サイトから日本語で「森林」とだけ入力して検索すると、森林総研のページが一番最初に検索されます。地球温暖化問題などをきっかけに急に拡大した森林に関心を持つ方々が、信頼おける情報源として森林総研のHPを頼ってきた査証でしょう。

森林総研のHPから
数千ページという膨大な情報量の森林総研のホームページからトピックスを紹介します。

林業・林産関係国内文献データベース(FOLIS)森林総合研究所の図書館に受け入れられている国内刊行の 学会誌、雑誌等から約400誌を選び、そこから林業・林産関係の論文 ・記事を選出し、その書誌情報を収録したものです。収録データ件数 128989件
その他、こちらに、森林動態データベースなど7つのデータベースが公開されています。
研究成果を知りたい方に
研究最前線:投稿論文が各種学会誌へ掲載・発行されるタイミングを図った内容紹介です。研究の第一線の動きを知ることができます。
90年から始まった「開かれた研究所」の先駆け、研究瓦版「研究の森」全132号が全文掲載されています。
最近の研究成果:毎年度の研究推進評価システムの集約としての研究成果選集や、森林総研(林業試験場)研究報告の創刊号(1904年)からの全タイトル、1967年からの全文にアクセスできます
四国支所が作成した地球温暖化と森林の二酸化炭素吸収、京都議定書についてのよくある質問よく利用されています。その他にマツとマツ枯れに関する質問と回答小中学生のための質問箱 高知県森林環境教育プロジェクトのQ&A (高知県森と緑の会) などが掲載されています。
プロジェクト紹介:土壌炭素・温室効果ガス研究グループ 、鳥獣害研究プロジェクト 、荒廃熱帯林のランドスケープレベルでのリハビリテーションに関する研究 、森林総合研究所フラックスネット 気候変動影響研究グループ 、スギゲノム解析研究グループ 、小笠原森林生態系研究グループ 、森林生態系モニタリング研究グループの、9のプロジェクトの、背景、プロジェクトの概要、成果など
この季節多摩森林科学園サクラ保存林開花情報八王子市JR高尾駅近くの森林科学園に収集されている200種類の桜の開花情報を週に二回リアルタイムで順次伝えてゆきます。

ご希望の方は、ニュースレターを配布していますので、こちらあてにどうぞ。

現代社会の課題と森林総研

森林総研所報3月号の巻頭言に「時代と課題と森林総研:ミッションステートメントの議論に寄せて」という小論を掲載せていただきました。

了解をえて、小サイトに掲載させて頂きます。

現代社会の課題と森林総研:ミッションステートメントの議論に寄せて
藤原敬

森林総研所報05年3月号より

本年11月の森林総研百周年記念の式典での発表に向けて、森林総研では「ミッションステートメント」(組織の基本理念を示す文書)の作成することとし、その作業が行われている。独立行政法人は説明責任と運営の透明性が求められているが、森林総研の存在意義を国民の皆さんに分かりやすく説明するための文書をつくろうということは、その最も重要な作業である。

どんな文言でアピールするかは研究所のセンスと力量が試されるところであり、苦労が多い作業でもあるが、幸いにして、森林総研の存在意義がこれほど国民に分かりやすく理解される条件が整っているのは、この百年の歴史の中で一度もなかったのではないだろうか。

森林総研が生まれ育った100年間の間に、地球上の人口は4倍、エネルギー消費は12倍になり、人類が生まれて400万年の間に消費したエネルギーの半分以上を、このたった100年間で消費してしまったといわれている。現在の社会がこのままでは将来に亘って持続することが不可能であることが多くの人の認識になりつつあり(地球サミット・リオ宣言第八原則など)、その転換の端緒が「京都議定書」という形で国際政治のプロセスにのりつつある。私たちは、化石資源に依存した大量消費社会を、再生可能な資源に立脚した持続可能な社会に転換するという、大きな課題に直面している。

世界銀行の経済学者ハーマンディリーは、持続可能な社会の条件として以下の三つを提示している。

1 「再生可能な資源」の利用速度は、再生速度を超えてはならない。

2 「再生不可能な資源」の利用速度は、再生可能な資源を持続可能なペースで利用することで代用する程度を超えてはならない。

3 「汚染物質」の排出速度は、環境がそうした物質を循環し無害化出来る速度を超えてならない。

1番目の基準が再生可能な資源である森林にとって当然の条件であることは言を待たないが、「化石資源の埋蔵量を使い果たした後も同等量の再生可能エネルギーが入手できるように、石油の使用による利益の一部を太陽熱吸収器や森林造成に投資する」必要がある(ドネラメドウス他「限界を超えて」)という趣旨である2番目の基準、また、林産物を利用する場合の環境負荷を一定以下に押さえることを求める3番目の基準など、森林の管理に関連する基準が全ての点に関係しているといえる。

森林の知見とその生産物の利用に関する人類の英知の水準が、持続可能な社会のデザインを左右するともいえる。

新たなミッションステートメントは、百年の区切りを迎える森林総研が、この大きな課題の達成のための不可欠な位置にいることをふまえた重要なメッセージになるだろう。



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「消費者の環境指向と地域材活性化の課題」:日本森林学会報告から(2005/2/12)

日本林学会改め日本森林学会の第106回大会が3月下旬に、まだ残雪の多い北海道大学キャンパスでありました。その中の「日本林業再構築のモーメントと方向をどう考えるか」という報告者が40人近くに及ぶ大変大きなセッションで「消費者の環境指向と地域材活性化の可能性」と題する報告をしました。

論旨は、
@木材の消費構造を分析すると商品選択のアクターとして政府・企業の役割が大きい、
Aグリーン購入法、企業の社会的責任論、緑の建築基準の展開により、政府・地方自治体・企業の木材を巡るグリーン調達の条件は成熟しつつある、
B林業・木材産業側が「エコプロダクツとしての木材」に戦略的取り組むことによって、地域材の市場拡大の展望がある
というもので、認証材やウッドマイルズの展望に関したものです。

木材木製品の商品選択の主導権が、消費者にではなく政府調達や企業による組織的調達にあるということを、産業連関分析を援用して明らかにしようとしたものです。日本森林学会のサイトから要旨がダウンロードできます→こちらpdfファイル
要旨より少しバージョンアップした当日配付資料を資料室におきます。

森林学会では初めての試みとして全報告者の要旨をHPで公開しています。こちらから

なお、セッション全体の報告は森林技術誌、林業経済誌で報告される予定です。

kokunai3-19 <sinringakkaime>

京都議定書目標達成計画案への意見(2004/12/12)


G8環境開発大臣会合違法伐採問題への取り組み(2005/4/2)

3月17日から18日まで、ダービーシャー(英国)において、G8環境・開発大臣会合が開催され、違法伐採への取組についての声明が発表されました。

「合法的な木材を優先する公共木材調達政策を奨励、採択または拡大する、等の提言をするとともに、対策の進展状況を点検するための会合を06年6月までに開催すると」などが内容となっています。

この内容は7月のグレンイーグルズ・サミットに報告されることになります。

環境省による日本語仮約
英国政府によるプレスリリース
英国政府による違法伐採ホームページ
boueki4-7 <g8daininihou>

最後までお読みいただきありがとうございました。

藤原敬 fujiwara@t.nifty.jp

 

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