ニュースレター No.065 2005年1月16日発行 (発行部数:1150部)

このレターは、「持続可能な森林経営のための勉強部屋」というHPの改訂にそっておおむね月に一回作成しています。

情報提供して いただいた方、配信の希望を寄せられた方、読んでいただきたいとこちら考えて いる方に配信しています。御意見をいただければ幸いです。 
                                                    藤原

目次
1.
フロントページ:「儲かる林業」研究会(2005/1/16)
2. 気候変動枠組み条約COP10の結果(2005/1/16)
3. 国際熱帯木材機関理事会から(2005/1/16)
4.

木材貿易が生産国の森林管理に与える影響に関する研究(「林業経済研究」投稿小論)(2005/1/16)

5. エコマテリアルとしての林産物とグリーン購入(「WIDE」寄稿小論)(2005/1/16)

フロントページ:「儲かる林業」研究会(2005/1/16)

鹿児島を拠点に広く木材業や住宅事業を展開されている山佐木材佐々木幸久社長から送って頂いた社内報に、「儲かる林業研究会」の呼びかけが掲載されています。

なぜ、国産材時代がこないのか。輸入材は何故安く、そしてかくも大量に流入しているのだろう。

その供給先は北米やヨーロッパであって、国情は安定し国民は豊かな生活を営んでいる国々である。決して悲惨な生活の中から、木材を切り売りして外貨を稼ぐ必要がある地域からのものではない。

北欧を中心にこの10年間進んだ生産システムの改革で合理的な林業・木材加工体制が確立、国際競争力を確保している。

それを学ぶことで国産材の国際競争力を大幅に向上させることができるし、そうしなければならない。

(国内で)最近下がったと言われる丸太価格も、工場土場価格では国際的に見て決して安い方ではない。

この価格条件で、林業も一定の収益が出る「儲かる林業」のシステム構築が必要である。

以上が、研究会の呼びかけの趣旨です。

「国産材の困難の原因はいろいろあるけれども、林業の現場で解決できる問題もかなりある。」という、きわめて前向きの問題提起だと思います。

小サイトでは、ウッドマイルズや森林認証など「環境と林業」という視点で、国産材・地域材と輸入材の問題をフォローしてきました。国産材・地域材と環境にこだわる消費者との結びつきが重要だという主張です。が、それだけでは国産材の問題が解決しないのも明かです。

「儲かる林業研究会」の指摘するオーソドックスな視点は重要であり、小サイトでもこの研究会の今後をフォローしてゆきたいと思います。

「儲かる林業研究会呼びかけ」pdfファイル
佐々木社長の執筆文集(佐々木木材HPより)

儲かる林業研究会についての問い合わせはこちらへ



気候変動枠組み条約第10回締約国会合の結果(2005/1/10)

条約の発効10周年、京都議定書の発効目前という節目となった表記会合COP10が、12月6日から17日までアルゼンチンブエノスアイレスで開催されました。(外務省HP概要

全体として、京都議定書後の枠組みを議論する取り組みが始まったことが重要な点として報道されましたが、森林吸収源対策については、@CDM植林(先進国が途上国内で吸収源対策として植林を行ったものの一部を先進国の削減目標達成に利用するしくみ)の細部が合意され、熱帯林の森林造成についての先進国の協力の重要なチャンネルが動き出すことなり、A小HPでもフォローしてきた「伐採木材の取り扱い」について各国のデータに基づく検討を行うことになったりました。

CDN植林

CDM植林については、COP9で、植林の結果吸収量をどう計測するかという手法(仮に植林プロジェクトが行われなかった場合と当該プロジェクトの実施の差を計測)、伐採や火災などで植林の結果が永続しない場合の担保など、植林特有の技術的な性格に基づくルールが合意されています。(COP9の決定概要林野庁林野庁CDM植林ヘルプデスク合意本文事務局HP英文

今回の会合では、積み残しになっていた、小規模の植林を簡単に実施するための手続きが決められました。(決定概要林野庁HP合意本文事務局HP英文

伐採木材の取り扱い

また、伐採木材製品につては、いろいろな計測方式の影響について本年11月に行われる科学技術補助機関会合(SBSTA23)で検討をすること、各国の関連データを事務局に提出するなど、手続きについての合意がされました。
林野庁の記者発表資料pdf:気候変動枠組み条約COP10・SBSTA21結果概要(伐採木材製品関係)

また、ウッドマイルズにとって関係がある、国際海運からの排出規制についても議論が行われました。



国際熱帯木材機関第37回理事会から(2004/12/12)

12月13日から18日横浜で、表記会合が行われました。

主な議題およびその結果は以下の通り(林野庁HPより)

(1) 1994年の国際熱帯木材協定改定交渉(議題12)
 1994年の国際熱帯木材協定が2006年末に終了するため、2007年の新たな協定の発効に向け、現在、協定改定交渉が行われている。協定改定交渉会議のパラニョス議長およびUNCTAD事務局より、04年7月にジュネーブで開催された「第1回協定改定交渉」の報告及び05年2月14日から18日までジュネーブにおいて予定されている「第2回協定改定交渉」の説明があった。

(2)ITTO目標2000(議題13)
 第29回理事会決議において、生産国に対し@ITTO目標2000の達成及び持続可能な森林経営の障害となっている要因の特定、A障害要因を克服するための行動計画を策定すること、が決議されている。今次理事会では、フィジーパナマ及びカンボジアに対しての調査報告が行われた。

(3) 持続可能な木材生産及び貿易との関連における森林法の施行(議題14)
 第31回理事会において、@生産国・消費国の自主的な協力の下、熱帯木材製品の国際貿易に関する輸出入データについて調査・分析の実施、A森林法の施行、違法貿易等に対処していくための生産国の取り組みや人材育成の支援、B違法な木材製品の貿易を阻止するため他の国際機関と協力し、本問題に関する地球規模での調査を行うこと、が決定している。今次理事会では、マレーシアで実施した調査結果報告が行われたほか、ホンジュラスについての違法伐採と森林法の施行に関する報告が行われた。これに対し、スイス、EU、コロンビア、PNGの各国から、ITTOの違法伐採への取組みの重要性が述べられたほか、日本からは、「生産国と消費国が協力してこの問題に取組むことが重要であり、お互いにアイデアを出していく必要がある。ITTOの活動と、国際的な議論への積極的な貢献等において違法伐採対策が一層強化されることを期待する」旨発言をした。

 (4) アジア森林パートナーシップ(AFP)の強化(議題15)
 第34回理事会決議3に基づき、AFPイニシアティブの進歩状況に関する報告が行われた。本年8月には、ITTOの協力の下、AFP強化のための地域ワークショップがジョグジャカルタで開催され、また、12月8日〜10日に東京で開催された「第4回実施促進会合」において、違法伐採問題等について具体的な議論が展開されたことが報告された。日本からは、「AFPの特徴は、各国政府、国際機関、市民社会(NGO、産業界等)、学会等から幅広い参加を得ていることにあり、それらが共通の目標のために協力して取組んでいる。今後ともAFPを積極的に支援していく考えである。」旨発言をした。

(5)段階的な森林認証(議題18)
 ITTO事務局より、段階的な森林認証を進めていく際の手順及び森林認証の費用対効果の調査報告が行われ、マレーシア、スイス、コンゴ等からは、「森林認証が普及することは、持続可能な森林経営の達成のために重要であり、今次理事会で報告された具体的な実施手法により、今後、森林認証の普及が促進されることを期待したい」旨の発言があった。

(6)持続可能な森林経営のための基準・指標(議題21)
 事務局から、本年11月にアーボン(スイス)で開催された「ITTOの基準・指標及び報告フォーマットの改訂に係る専門家会合」の報告が行われた。

(7)プロジェクト及び提案決議案の承認(決議1,2,3)
 今回の理事会では、34件のプロジェクトについての承認が決議され、日本は、これら承認されたプロジェクトに対し、483万ドル(外務省422万7千ドル、林野庁60万3千ドル)の拠出を決定した(決議1)。また、事務局より「ラミンとマホガニーの貿易に関するITTOとCITESとの協力強化」(決議2)及び「ITTOのプロジェクトサイクルの改善と強化のための方策」(決議3)の決議案が提案され、承認された。

林野庁プレスリリース
外務省HP
国際NGO IISDによる報告(Earth Negotioanion Briten)(英文)

なお、決議1でImproving Utilization and Value Adding of Plantation Timbers from Sustainable Sources in Malaysia(マレーシア持続可能な資源に由来する人工林木材の付加価値と利用の改善)というプロジェクトに資金の拠出が決まりました。日本の森林総合研究所とマレーシアの林業研究所との間の共同プロジェクトです。 
プロジェクト提案書(ITTO公式サイトよりpdfファイル 英文)

木材貿易が生産国の森林管理に与える影響に関する研究:緑の消費者が森林管理に与える影響(「林業経済研究」投稿小論)(2005/1/16)

2003年の5月に投稿していた表記小論が、昨年11月発行の林業経済学会学会誌「林業経済研究」 に掲載されました。(「林業経済研究」 Vol.50 No.3 (2004) pp.11-18)

なかなか実現が難しい、国際的な持続可能な森林管理を達成する契機として、林産物輸出先の消費者の環境指向が一定の役割を果たしていると仮定し、その程度を分析したものです。

「世界の中でも大きな市場の一つである我が国の木材市場が環境指向を強めることが、世界の森林管理水準を引き上げる上で重要な役割を果たす可能性があることを示している。」という、結構実践的な意義を持ったものと、(自分で)思っています。

許可を得て、テキストを資料室におきます。

エコマテリアルとしての林産物とグリーン購入(「ワイド」寄稿小論)(2005/1/10)

日本木材総合情報センターの木材流通と経営の情報月刊誌「ワイド」に表記小論を寄稿しました。
(「ワイド」2004年12月号通巻194号 pp.6-9)

紙製品・木材製品などの林産物に関するグリーン購入の動きを概観し、「新たな木の時代」の到来の可能性を検討しようとするものです。

編集部の許可を得て、テキストを資料室におきます。

最後までお読みいただきありがとうございました。

藤原敬 fujiwara@t.nifty.jp

 

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