1月23日24日と二日間、林野庁主催の森林減少ゼロに貢献するグローバル・サプライチェーンの推進に関する国際シンポジウムが、開催されました。
ネスレ、スターバックス・・・「森林の減少をゼロにす」るという、各国の森林管理行政当局の取組むべき課題に、グローバルなサプライチェーンをコントロールしている企業群が、どのように関与・貢献してくる可能性があるのか?
興味深いイベントに、出席してきましたので、概要報告します。
二日間のプログラムとスピーチで紹介されたデータ(日本の講演者も英語で情報提供)が、林野庁の以下のページにつるされています
森林減少ゼロに貢献するグローバル・サプライチェーンの推進に関する国際シンポジウム
(背景と趣旨)
上記サイトの4プログラムからダウンローされるデータに少し長い「背景と趣旨」が掲載されてますが、要約すると・・・
シンポジウム開催の背景と目的(プログラムから)抄 |
(背景)
世界の森林面積は、依然として熱帯地域を中心として年間3.3百万haの森林が失われており、地球規模の課題をもたらすため、生物多様性条約の第10回締約国会議( COP10) で採択された愛知目標では、「2020年までに、森林を含む自然生息地の損失が少なくとも半減、可能な場合にはゼロに近づく」ことを掲げるとともに、国連の持続可能な開発目標(SDGs)においては、「2020年までに、あらゆる種類の森林の持続可能な経営の実施を促進し、森林減少を阻止し、劣化した森林を回復」することとされるなど、森林減少に歯止めをかけることは、国際社会の公約となっている。
森林減少の原因の8割は食料の増産を目的とする農地の開発によるものと言われていることから、「森林を犠牲にせずに将来的に増大が見込まれる食料需要に応えていくことが不可欠であり、森林減少を伴わない形で生産された商品作物を取り扱うことにコミットする取組(ゼロ・デフォレステーション)が様々な形で国際的に広がりつつある。
我が国においても、民間セクターの主導により同様の取組が広がる傾向にあり、今後、さらなる拡大が期待される。
(シンポジウムの目的)
以上を踏まえ、国際的なゼロ・デフォレステーションの動向について理解を深めるとともに、SDGsや愛知目標の達成を目指す我が国の取組について国際社会に対する情報発信力を強化し、さらには民間セクターを含む多様な利害関係者の参加を得て世界の森林減少に歯止めをかけるための行動を促進することを目的とし、本国際シンポジウムを開催する。 |
ということで、食品産業を中心とした「優良事例」の紹介がありました。
以上の他に、国際機関、や途上国の取組についても報告されています。
林野庁の関係サイトをご覧ください。
採択されたモモデレータズサマリー(日本語、英語)
「森林減少ゼロに貢献するグローバル・サプライチェーンの推進に関する国際シンポ ジウム」モデレーターズ・サマリー(のサマリー)
2018 年 1 月 23−24 日、東京において、林野庁、国連食糧農業機関、国際熱帯木材機 関の共催により、森林減少ゼロに貢献するグローバル・サプライチェーンの推進に関
する国際シンポジウムが開催された。
国際的なゼロ・デフォレステーションの動向について理解を深めるとともに、SDGs や愛知目標の達成を目指す日本の取組について国際社会に対する情報発信力を強化 し、さらには民間セクターを含む多様な利害関係者の参加を得て世界の森林減少に歯 止めをかけるための行動を促進することを目的とし、様々なステークホルダー延べ約 350 名が集まった。
2 日間のシンポジウムを通じて議論された主要なポイントには、以下の事項が含まれ る。
(1) 森林減少ゼロに貢献するグローバル・サプライチェーンは、持続可能な開発目 標(SDGs)の多く、さらには生物多様性愛知目標 5 及び 7
の達成に 決定的な役割を同時に果たす。
(2) 森林に関するニューヨーク宣言に掲げられた目標は、ゼロ・デフォレステーショ ンへのコミットメントの実施にとって優れた参考となりうる。
(3) 世界 の主要経済国である日本において事業活動を行う民間セクター及び海外事業展開 を行う日本企業としては、現在及び将来の世代が持続可能で快適な暮らしを送れるような調達方針を確
立するとともに、その実施状況を継続的に公表するために必要な措置を柔軟な方法 で講じるべきである。
(4) 証明された形で合法的かつ持続可能なサプライチェーンを確立するためのキ ャパシティ・ビルディングの努力が強化されるべきである。
(5) 事業活動において環境の問題に対処するためには、競争的ではなく、むしろ共 同的かつ透明性をもって取り組むことが重要である。
(6) さらに、より確実なトレーサビリティの仕組みの構築、特にリモートセンシング技術については、少なくとも サプライチェーンを通じた一次産品流通が始まる生産現場を特定する上において、
さらに役立つツールとなることが期待されている。
(7) 森林生態系にプレッシャーを与える潜在的なリスクを有する一次産品のサプ ライチェーンに関わるあらゆるステークホルダーは、ゼロ・デフォレステーション
へのコミットメント及びその実施状況の開示が世界規模での ESG 投資の流れに関 連付けられる状況にある事実を認識するべきである。
(8) 金融及び投資セクターとしても、森林減少を伴わない一次産品の生産や関連するサ プライチェーンに対する融資を強化することにより、それらステークホルダーに対
して持続可能な生産及び消費に向けた変革を促すことが可能である。
(9) 森林減少を伴わないサプライチェーンの推進のため、森林減少を伴わないグローバル・サプライチェーンを普及し、拡 大することを目指した官民連携が強化さ
れるべきである。
(10) 森林減少を伴わないサプライチェーンの推進に向けた民間企業の取組を後押 しする上では、日本の消費者の役割も重要である。
(11) 森林劣化が森林減少よりもさらに多くの CO2 の排出源となっており、、森林劣化に対処 することの重要性に対しても十分な注意が払わなければならない。
(12) 森林の保全並びに世界の食料需要が増加を続ける状況の下での食料安全保障 の達成という目標が本質的には二律背反の性格を抱えることを考慮しつつ、森林減 少を伴わないグローバル・サプライチェーンの推進を図っていくためには、適切な 行政単位レベルで全ての関係者により十分に調整が図られた土地利用計画に即し、 包括的なアプローチを実践することが重要である。 (13) 主要輸入国が整合的で協調したアプローチを目指す可能性を追求する必要があ る。
(14) 今回のシンポジウムの成果としてとりまとめられた本サマリーは、森林に関 する協調パートナーシップが主催して 2 月にローマで開催される「森林減少の阻
止と森林面積の拡大〜野心から行動へ」と題する国際会議をはじめ、森林減少ゼロ に貢献する一次産品サプライチェーンに関する国際的な政策対話に伝達していく
ことが期待される。
林野庁に対しては、 様々な主体による実施状況を継続的に把握するとともに、その進捗を共有した上で、 関係省庁との連携を図り、さらに必要な活動を議論するための機会を定期的に用意す
るなど、本シンポジウムのフォローアップ活動を促進するための触媒的な役割を果た し続けることへの期待が示された。
また、今後の議論に当たっては、生産サイドと消費サイドの相互補完的な役割を踏ま え、生産国のより広範な参加が促進される必要性についても強調された。
本シンポジウムのモデレーターは、粟野美佳子・一般社団法人 SusCon 代表理事及び 末松広行・経済産業省産業技術環境局長が務めた。
2018 年 1 月 24 日 |
サプライチェーンを管理できる大企業の可能性を感じるとともに、まだ、出発点に立ったばかりということでもあると思いました。これがよいコミュニケーションの切っ掛けになるとよいと思います。
森林管理は第一義にその国の行政当局の責任でしょうが、広い地域のガバナンスを確実にしていくためには、需用者側の応援が必要という意味で、これらの要素が不可欠なものであるという、考えるべきだと思います。
木材業界のクリーンウッドの取組などは、自分のことなので、もっと動きが見えてよいですよね。
kokusai4-4<zerodefsympo>
|