第五次IPCC報告書温暖化緩和策としての森林管理の効率性(2014/11/22) | |||||||||||||||||||||
気候変動枠組条約の政治的な動きの根拠となる気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の第五次報告書の統括報告書が、同パネル第40回大会が開催されていたコペンハーゲンで11月2日公表になりました。 Summary for Policymakers これで、三つの作業部会報告書とそれを受けた統合報告書のすべてが公表されたことにとになります。 各報告書の日本語版(政府による「確定訳」)は以下に掲載されています
上記の環境省の解説資料は、図版を中心に分かりやすく解説しているうえ、部会報告書の政策決定者向け要約のどこを引用したかが丹念に記述されているので便利です。 (2度未満シナリオ) 報告書で注目されたのは、気候変動を産業化前に比べて2度未満に抑えるというCOP15、,COP16での合意に関して、可能なシナリオが描けるのかどうかというポイントでした。 気温上昇2度未満に抑える「道筋ある」 IPCC報告書 (朝日) この2度未満を達成するためには、21世紀末には排出量0とするようなドラスティックな取組みが必要とされていますが、そのためには、21世紀後半には炭素分離貯蔵CCSの技術の確立と大規模な植林の二つが両輪となることが指摘されています。 その辺については、小HPのIPCC第5次評価第三部会報告書と森林(2014/4/29)を参照下さい。 (森林による削減の費用効率性論議) これらの議論の中で、森林の管理に注目が高まるのはよいことですが、少し気になるのは、森林による削減の費用効率性に関する議論です。 温暖化対策の国際的運動に大きな影響を与えた、スターン報告書でも、森林の減少対策は、「他の緩和策に比べて比較的安価に行えることを示唆している。」として気になっていたところです。(13ページ) 第5次報告書では全体に削減経路ごとの費用を分析した結果を掲載した部分はありませんが(ないと思います)、土地利用と森林の部分には左図の解説があります。 「供給側の対策の経済的な削減ポテンシャルは、削減費用100ドル/t-CO2以下に相当する対策について2030年において7.2〜11GtCO2(森林・農業の双方を対象とした全ての研究成果を含めると0.49-11GtCO2)と推計され、そのうち、約3分の1は20ドル/t-CO2以下で削減可能」としています。 他の分野の削減も含めた削減費用推計を、排出削減に関するコスト面からの分析((財)地球環境産業技術研究機構(RITE)秋元圭吾)で見てみると、先進国の全体で、10GTまでの削減で600ドル/t-CO2をコスト推定され(上記14ページ)ており、今回の推計が極めて安価なことが読み取れます。 どんな計算がされているのか、今回の報告書ではわかりませんが、植林による二酸化炭素吸収源を管理をするのは、人と金と場合によっては地域の産業構造を変えることも含むきわめて困難な作業であること(ではあるが、不可能ではないやりがいのあるタスクである)など、共有される必要があるように思います。 kokusai2-49 <ipcc5-tou>
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