鳩山イニシアティブ下の気候変動枠組み条約と森林(2009/10/24)

就任早々の鳩山総理が9月22日国連気候変動首脳会合で行った演説の中で「(温暖化ガスの排出削減)中期目標についても、1990年比で言えば2020年までに25%削減をめざす」との発言(外務省HP)が反響を呼んでいますが、新しい目標は森林吸収源対策にどんな影響をもたらすでしょうか。

もともと、「2020年までに1990年比25%の温室効果ガス排出量削減」は民主党の政策公約集の中に掲げられていたものですが、「25%削減目標には、排出量取引など海外からの排出枠購入や森林吸収の分も含むもの」と,、トヨタ労組の元幹部である直嶋経済産業大臣が解説しています(直嶋経済産業大臣記者会見)。

麻生総理が6月に発表した中期目標は「2005年比15%削減を目標とすることを決断」ですので90年比にすれば8%削減となりますが、「国内排出量削減いわゆる真水の目標」です。外国から排出権を買ってくる分や、森林吸収源を加算する分については除外されてます。

京都議定書では海外との取引、森林吸収源分で5.4%分が見込まれていますが、今後この分がどの程度になるのかが問題です。

後述するように日本の森林全体の温室効果ガス吸収量は今後徐々に少なくなっていく見通しです。今後決まるカウントの仕方によっては(森林吸収源の算定ルール)どんな数値になるか、予断を許しません。

京都議定書の時に6%削減が最初に決まって、あとで吸収源の大きさが決まったので、吸収源が大きくなると真水(排出量の削減目標)が少なくなるという問題点があり、一部の人たちから吸収量の取扱悪玉論となったのですが、今回も残念ながら同様の構図になりそうです。

(バンコク特別作業部会)

そういう中、9月28 日から10月9 日に、バンコクでCOP15に向けての気候変動枠組条約の2013年以降の次期枠組みに関する、二つの特別作業部会が開催されました。

林野庁:気候変動枠組条約次期枠組みに関する特別作業部会の開催結果について
外務省:国連気候変動枠組条約交渉バンコク会合(概要)

京都議定書の下での附属書I国の更なる約束に関する第9回特別作業部会(AWG-KP9)では、@森林吸収量の算定ルール(比較対照するレベルの問題下図参照)、A伐採木材の吸収源としての評価の仕方が重要ななところです。

林野庁作成「森林分野における国際情勢説明会」090716

森林吸収源の算定ルールは、左図のように何と比較して人為的な吸収源の評価をするかという大きな問題が選択肢として残されてています。

この点について、「我が国からは、1990年以降の森林吸収量の推移についてデータ提供するとともに、次期約束期間においては森林の高齢化により減少傾向が見込まれることについて情報提供しました」とされています。

日本が事務局に提出した文書(英文)はこちらに掲載されています

日本の森林全体の温暖化ガス吸収量は微減傾向だが、管理された森林からの吸収量は増加する、のだそうです。

また、伐採木材のについては、輸出材、輸入材の取扱をめぐって、選択肢が残っているかたちになっています。いずれにしても、吸収源に計算されている森林から生産された木材のみが算定されることになるので、そのストックを正確に把握するためにはなんならのトレーサビリティが必要です。

議論の詳細は、条約事務局のホームページに掲載されている、各作業部会で議長が提示しているコペンハーゲンの合意文書の草案に反映されています。

森林吸収源や伐採木材についての取扱が議論される「京都議定書の下での附属書I国の更なる約束に関する第9回特別作業部会(AWG-KP9)」についての森林に関する部分の文書は「土地利用、土地利用の変化及び林業(LULUCF)の取扱のための定義、に関する交渉の大枠、規則、ガイドラインの扱い方に関する選択肢と提案」に関する協同議長による非公式文書Non-paper by the co-facilitators of the spin-off group Options and proposals on how to address definitions, modalities, rules and guidelines for the treatment of land use, land-use change and forestryです。

もう一つの「条約の下での長期協力行動のための第7回特別作業部会(AWG-LCA7)」という特別委員会では、REDD(森林の減少・劣化による温室効果ガス排出の抑制が議論されています。

この辺のところはFOEジャパンが日本語の解説をしています。

朝日新聞の解説記事「市場の力」で森林を守る「REDD」

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