気候変動枠組み条約の今後の展望と吸収源の位置づけ(2018/9/23) | |||||
環境経済・政策学会2018に出席しましたが、そのポイントの一つは、気候変動枠組み条約の議論の進展の大きな枠組みのなかでの、森林の位置づけ、取り扱いの方向性です。 気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の主要なメンバーであった地球環境産業技術研究機構 山口光恒氏が「2030年及びそれ以降の気候変動戦略-短期・中長の観点から」ど題する報告をされたので、その内容を紹介します。 2030 年及びそれ以降の国際枠組みの検討と題する論文(以下SEEPS2018山口論文)がネット上に掲載されています。 (パリ協定の長期目標と各国の短期誓約(プレッジ)のギャップ) パリ協定は気温上昇を(工業化前の時代に比べ)2度C以下に抑えることとし(第2条1a)、その達成に向けて参加国は自主的目標(プレッジINDC)と提出し(第3条)、それをチェックしていくというしくみになっています。 SEEPS2018山口論文では、提出されたINDCの内容と長期目標との関係を、既報のさまざまな論文を根拠に詳しく分析しています。 その結果をしめすのが、図1で、現在提出されているプレッジが達成されたとしても、2度Cに向かっていくことは難しい、としています。 根拠とされた引用論文:UNEP (2017), “The Emissions Gap Report 2017, A UN Environment Synthesis Report”, November 2017 (ギャップを埋める大量の吸収量)
このギャップの整合性をとるためには、大量のマイナス排出(MNEs)が必要となります。 その例示が、図2です。 時間軸は2010年から2100年までですが、排出量から吸収量を差し引いたネットの排出量は2090年ごろまでにゼロにする必要があり、2010年の段階でGHG排出量は20Gtほどあるが、それを上回る吸収量が必要となります。 吸収量は茶色のバイオマス地中埋設(BECSS),と、灰色の土地利用(ほとんどが森林(植林・再造林)からなっています。 BECCSについては、森林を畑にしてバイオマスを地中化するBECCSの功罪ーNature Communication掲載論文(2018/8/18)などを参照していただくことにして・・・ 「AR/RF であるが、同じく2℃目標を前提にすると、吸収量は2100 年に中央値が1.1GtC(最大で3.3GtC)となり、こちらはha あたりの吸収量を中央値の3.4tC とすると、1.1-3.3GtC を吸収するのに必要な土地面積は3.2〜9.7 億ha となる」(SEEPS2018山口論文25ページ)としています。 (一定の森林の吸収量(若齢)がそのままカウントされ、若齢に維持されたまま、収穫された木材が、腐朽せずに隔離される、という前提でモデルがのようですが、引用論文までチェックしていません) その他、大量の吸収源METsの評価に関して引用された文献以下の通り SEEPS2018山口論文では「寡聞にしてモデル計算以外で数百億トン単位でのNEs を可能とする説得力のある文献は見ていない。こうしたこと、それに種の多様性とのTrade-off や住民の反対を含む社会経済的要因を加味すると、ほとんどの専門家はMNEs は実現困難と考えていると思うし、こうした状況の中でこれほど多量のBECCS を前提にして目標を組むのは一種の賭けではないかと思う」としています。(SEEPS2018山口論文29ページ) SEEPS2018山口論文では根拠の論文が丁寧に紹介されており、是非多くの森林関係者が、,この論文を一読されることを期待します。 以下に目次を掲載します
kokusai2-61(MNEmirai) |
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