IPCC6次報告書と森林-第1作業部会報告書の中の森林の記述(2021/9/5)


気候変動という難しい課題を、最新の科学的蓄積に応じて、政策決定者や、市民に伝えてきた、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)

その第6次報告書第1作業部会報告書が8月6日公表され、一連の報告書の公表がはじまりました。

気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第6次評価報告書第I作業部会報告書(自然科学的根拠)の公表について(環境省)

右の図にあるように、IPCCには3つの作業部会WGなどがあるのですが、森林の吸収機能などに関係があるのはWG3で、このサイトでも公表されるたびに、追いかけてきました。

IPCC第四次報告書第三作業部会報告書(2007/8/12)
IPCC第5次評価第三部会報告書と森林 (2014/4/29)

いよいよ、8年ぶりに第6次報告書の公表がはじまり、第3作業部会報告書は、来年の3月に公表なんだそうですが、とりあえずWG1の報告書の中に、森林の記述がどうなっているのか、チェックしてみました。

(WG1報告書とは)

WG1報告書のネット上の公表は以下の通り

Climate Change 2021: The Physical Science Basis, the Working Group I(原文)
IPCC AR6/WG1報告書 政策決定者向け要約(SPM)暫定訳[PDF 1.50MB](気象庁)
IPCC AR6/WG1報告書 ヘッドライン・ステートメント(HS)暫定訳[PDF 214KB](同上)

全体が、A気候変動の現状、B将来ありうる気候、Cリスク評価と地域適応のための気候情報、D将来の気候変動の抑制という5つの章立てにして、気候変動のリスクをいくつかのシナリオにわけて、分析しているのですが、今回の特徴はその分析を精緻にしたこと、だそうです。

気候変動、IPCCの最新報告書を解説、私たちの未来はどうなる?

シナリオで大切なのは、いまのパリ協定で各国が誓約している目標と一致している、「中間的なシナリオ」ですね。

(森林について、記載しているのは)

上記の政策決定者向けの要約の中で、森林に関する記述がどこにあるかな?

左の図にあるように、今後好ましい排出削減が進んでいった場合(左の二つ)、循環過程での陸域での吸収の比率が高まっていくとされています。多分、その中で森林の役割は重要な要素でしょう。

そのほかに、森林について、記述しているのは、以下の部分。

C.3 氷床の崩壊、急激な海洋循環の変化、いくつかの複合的な極端現象、将来の温暖化として可能性が非常に高いと評価された範囲を大幅に超えるような温暖化など、「可能性の低い結果」も、排除することはできず、リスク評価の一部である。

上記は、「非常に高いとは評価されないけれども、いろんなリスクがありますよ」、ということが記載されている部分ですが、その具体的記述の中に、森林に関して二点の記述があります。

@「南極氷床の融解の大幅な増加や森林の立ち枯れなど、気候システムの突然の応答や転換点(ティッピングポイント)を排除することはできない(確信度が高い)(C3.2)」、

A大西洋子午面循環(AMOC)(海洋の地球規模の深層循環で気候を安定させている)は、全ての排出シナリオで21 世紀を通じて衰える可能性が非常に高い。21世紀中の衰退は確信度が高いが、傾向の大きさには低い確信度しかない。2100 年までに突然停止しないことは確信度が中程度である。もしそのような突然の停止が起こった場合、熱帯雨林帯の南方シフト・・・など、地域的な気象パターンと水循環に突然の移動を引き起こす可能性が非常に高いだろう(C3.4)。

いずれにしても、地球環境の大きな変動の中で、陸域の自然のベースである森林に大きな影響、森林関係者の研究蓄積が求められているんでしょう。

こちらの翻訳IPCCAR6/WG1報告書;政策決定者向け要約(SPM)暫定訳でチェックしていますが、ご興味のあるかたは、原文をどうぞ
Climate Change 2021- The Physical Science Basis, Summar for Policymakers

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