9月9-10日インドニューデリーにおいてG20ニューデリー・サミットが「一つの地球、一つの家族、一つの未来(One Earth, One Family,
One Future)」のテーマの下、開催されました。
G20の首脳は、15年前から「我々の世代における最も深刻な金融危機に直面する中、初めて会合を行い」それ以来G20を国際経済協力に関するプレミア・フォーラムと位置付けて毎年会合を重ねています。
ウクライナ情勢を巡る対立で首脳宣言の採択は難航が予想されたが、開幕日の9日に全会一致で採択されました。
グローバルな先進国、有力途上国のあつまるコンセンサス形成のばで、地球環境や森林問題がどうなっているか、首脳宣言をチェックしてみました。
G20ニューデリー首脳宣言(日本語仮訳(PDF)/英文(PDF))
首脳宣言は32ページ83節にわたる長文です。その中で、森林は前文と、C. 持続可能な未来のためのグリーン開発合意 というセクションの「生態系の保全、保護、持続可能な利用及び再生」という42節にありました
前文
5. 国際経済協力のプレミア・グローバル・フォーラムであるG20の首脳として、我々は、パートナーシップを通じて具体的な方法で行動することを決意する。我々は、以下にコミットする。
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c. 統合的かつ包摂的なアプローチを支持することにより、低GHG/低炭素排出で、気候変動に対して強靱で、環境面で持続可能な開発の道筋を追求する。我々は、開発と気候の課題に対処し、持続可能な開発のためのライフスタイル(LiFE)を推進し、生物多様性、森林及び海洋を保全するための行動を早急に加速させる。
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C. 持続可能な未来のためのグリーン開発合意
生態系の保全、保護、持続可能な利用及び再生
42. 我々は、気候変動、生物多様性の損失、砂漠化、干ばつ、土地劣化、汚染、食料不安及び水不足に対処する上で、健全な生態系の重要性を強調する。我々は、劣化した全ての生態系の少なくとも30%を2030年までに再生させ、土地劣化の中立性を達成するための取組を拡大することにコミットする。これを達成するために、我々は以下を行う。
i. 昆明・モントリオール生物多様性枠組(GBF)の迅速かつ完全で効果的な実施にコミットし、他国にも同様に行うよう奨励し、2030年までに生物多様性の損失を止めて反転させるための行動を奨励する。また、我々は、あらゆる資金源からの資金調達の強化を求める。この目的のため、我々は、地球環境ファシリティ(GEF)内に最近設立された生物多様性枠組基金を歓迎する。
ii. G20土地イニシアティブ(GLI)の下でコミットされた、自発的に2040年までに土地劣化を50%削減するというG20の野心を支持し、ガンディナガル実施ロードマップ及びガンディナガル情報プラットフォームに関する議論に留意する。
iii. 森林が、地球レベル及び地域レベルで、環境、気候及び人間にとって、重要な生態系サービスを提供し、吸収源としても機能し気候変動に関する目的にも適うことを認識する。我々は、森林の保護、保全、持続可能な管理、森林減少との闘いのための取組を、国際的に一致したタイムラインに沿って拡大し、持続可能な開発に対するこれらの行動の貢献を強調し、地域社会や先住民族の社会的及び経済的課題を考慮する。森林の文脈において、我々は、WTOのルールと多数国間環境条約に整合的な、差別的なグリーン経済政策を回避する。我々は、特に途上国に対し、譲許的かつ革新的な資金調達を含むあらゆる資金源から、森林のための新規かつ追加的な資金を動員することにコミットしている。我々は林野火災の防止及び緩和並びに採掘で劣化した土地の修復にコミットする
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(昨年のG20サミットの中での、森林の位置づけの変化は)
昨年のインドネシアG20サミットの首脳宣言に関しても紹介しました。
バリ島でのG20サミットの中の森林問題(2022/12/15)
昨年は生物多様性の視点で森林に関する記述がされ、気候変動との関係の記述がないのが心配と、指摘しました。
それに比べると、長文と紹介した首脳宣言のボリュームがさらに増えた(58節から83節へ)こととも関係あるかもしれませんが、地球レベル・地域レベルの森林役割をふくめたしっかりした記述になっていて、わかりやすいです。
持続可能な木材の利用を拡大していこうというようなコンセプトがはいると、もっといいかもしれませんけどね。
今後、ブラジル、南アフリカ、米国とつづいていく首脳会議。グローバルサウス・中露・先進国のはいった重要な枠組みのなかで、将来の循環社会視野に入れて森林問題がどのような、位置づけになっていくのか、フォローしていきますね。
kokusai0-12<G20ND2023>