2050日本低炭素社会シナリオ:温室効果ガス70%削減可能性検討(2007/11/11)


本年の2月に国立環境研究所は「2050日本低炭素社会シナリオ:温室効果ガス70%削減可能性検討」という報告書を発表しました。「京都では京都メカニズムや森林吸収のような融通策が提案されましたが、今後の枠組みをじっくり検討するために、自分たちはどれだけの削減ポテンシャルが自国であるのかの見極めをしておく必要があるの」というのが背景だそうです。

国環研プレスリリース

森林吸収源が京都議定書の中で位置づけられたのは、緊急避難・暫定的な事情にあったことは森林関係者としても良く理解しておく必要があると思います。

将来の持続可能な社会(最近は低炭素社会というのが流行だそうですが)の中で森林がどんな役割をはたすのか?じっくり考えてみる必要があると思います。

60名の研究者による総合的なプロジェクトだったそうですが、残念ながら報告書の中に森林という言葉は一言もありません。森林の専門家は入っていたのかどうかはわかりませんが、温暖化問題を長期ビジョンで考えた場合、途上国における森林減少の回復といったわかりやすいコンセプトに比べて、日本の様に今後森林がどんどん成熟していき、吸収ポテンシャルが下がっていくことが予想される場合、吸収源としての森林の管理、あるいは吸収源としての木質材料の役割など具体的なシナリオを提示し切れていないということではないかと思います。

この報告書興味深いのは、シナリオA(ドラえもん型)(活発な、回転の速い、技術志向の社会)、シナリオB(サツキとメイ型)(ゆったりでややスローな、自然志向の社会である)という2つのシナリオを用意している点です。2つのシナリオの比較、どんな政策手段が必要なのかなど、今後の議論の題材を提供するおもしろい研究結果だと思います。

どちらのシナリオも技術的には達成可能(技術的ポテンシャルの存在)であるとしていますが、いずれにしても技術開発の体制や産業構造のドラスティックな変化が速やかに始まることを前提にしているものです。

数パーセントの環境税導入もコンセンサスがえられないような現状が続く限りポテンシャルを実現するハードルが高まってくることなると思います。




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