1 はじめに
林政ジャーナリストの会の主要メンバーで元林政審議会特別委員、毎日新聞記者の滑志田隆氏が表題の著書を出版された。
評者は1970年代のはじめから2001年までの30年ほど林野庁で森林林業政策に携わり、その後、独立行政法人森林総合研究所、社団法人全国木材組合連合会と林野行政と隣接分野に勤務してきたが、この期間が、世界中の森林管理行政の管轄部署が、林業行政から森林林業行政に転換を迫られた時期だった。
この転換は、本書が指摘するような森林問題の地球環境問題化というパラダイムシフトによるとともに、我が国の場合は行政改革すなわち、行政全体における一般国民との間の関係の変換という二つの要素が重なり合って起こったものである。
この転換は、どこの国にとっても基本法令の改訂、組織の再編という外形的な形態のみならず、行政主体と利害関係者との関係、さらには、行政に携わる関係者の行動規範や問題意識の変換を要求するものである。
現在評者の仕事の重要な部分を違法伐採問題への取組が占めているが、行政と現場との間の乖離に発する違法伐採問題が広範に所在することは、この行政の転換と無関係ではないというのが、評者の考えである。
長年、地球環境問題を追及してきた滑志田氏が、ジャーナリストの鋭い嗅覚で林業行政の転換をどのように見つめてきたのか、評者ならずとも興味のあるところであろう。
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