合法性証明と森林認証―森林部門技術士会例会で(2017/2/25) | |||||||||||||||||||||
日本技術士会には19の部会があるそうですが、その一つ森林部門技術士会の2月7日の例会で、標記の話をさせていただきました。 (持続可能な森林経営に向けてサプライチェーンを通じて森林の環境的要素を消費者に伝達するツール―) 長い副題ですが、相手が、森林関係の土木技術や、測量、森林計画などの関係者が多いようなので、森林の仕事が本丸とすると、「その仕事を市民とつなぐ大切なツールとしてのサプライチェーンの話をしよう」という思いがこもっています。うまく伝わったかどうかはわかりませんが。 報告したデータが以下のページに掲載されています。 あまり新しい話はないのですが、かいつまんでご紹介します。 (木材利用の促進の定着化とく森林関係者の責任)
左の図は、内閣府「森林と生活に関する世論調査」(平成15(2003)年、平成19(2007)年、平成23(2011)年)などに加えて、農林水産省「森林資源の循環利用に関する意識・意向調査」(平成27(2015)年10月)を基に林野庁で作成したものです(昨年の森林林業白書より)。 森林に期待する役割の変遷がわかるのですが、1980年に国土保全について2番目だった木材の利用が、下がり続け1999年には8番目の最下位になり、再び上昇して2015年には3位に上昇、見事なUカーブを示しています。 内閣府と農林水産省では調査のタイトルが違うように、回答者への情報が全く同じなのか若干留保が必要かもしれませんが、前々回から続く傾向。 建築設計の中心にいる隈研吾さんが21世紀は木の世紀になるとはなすバックグランドになっています。 ただし、この流れは、地球環境問題をベースにできているので、森林の持続可能性がいろいろな意味で担保されていないと足元が崩れます。「みんなさんの役割は大切です!!」 (都市住民の消費者とのコミュニケーション) 皆さんに示した以下の図は公共建築物木材利用促進法に基づいて、埼玉県の市町村が木材利用方針を作成した現状です。 山林地域の西側から東京の続きの東部地域にだんだん拡大していますが、まだまだ都市の消費者の木材利用に関する関心は広がっていません。そこで、森林を伐採して木材を加工し市場まで流通させるサプライチェーンを通じた情報提供が必要になってきています。 (木材のサプライチェーンの特徴と日本の合法木材ガイドラインの先見性) 木材のサプライチェーン管理といえば、違法伐採対策で10年前にできた、「木材・木材製品の合法性、持続可能性の証明のためのガイドライン」が大切な役割をはたしてきました。 もっと前に開発されれた、消費者に森林の管理水準を提起する方法として、森林認証制度が広まっているますが、欧米と、日本では普及の度合いが違います。 天然資源の緑のサプライチェーン管理では紛争ダイヤモンド、紛争金属など原料の販売収入が紛争地帯の戦闘の原資になっていないことを証明する仕組みがあり、ダイヤモンドのようにその証明書がないと日本への輸入禁止になっているものもあります。これが、究極のサプライチェーン管理ですが、信頼のあるサプラーチェンの管理には、すべて、大企業がサプライチェーンの中核を握っていいます。それがサプライチェーン管理がうまくいく一つの条件です。 欧米の森林認証制度が広がるのも、その地域のグローバルな大企業の役割が大きいので、消費者が偉いのでは必ずしもない。アジア地域の森林認証の遅れは、サプライチェーンが中小企業による細い網の目になっていることが理由の一つ そこで、業界団体の認定によるサプライチェーン管理を提起したガイドラインの意味があります。 レーシー法、EU木材規則とガイドラインを比べてみたのは下の表です
(クリーンウッド法はその中でどんな役割?) というのが、私の思いなのですが、業界関係者は「なんでこんな面倒くさいことをしなければならないのか?」、NGO関係者は「業界団体が仲間の認定をするなんてうさん臭い」と、どちかからもあまり評判がよくありません。そこにあるのは信頼性のリスク。 これを担保するために登場したのがクリーンウッド法なのですが、もう少ししたら詳しい政省令(案)などが公開されるので、関心を持っていてください・・・。(2月7日の段階ですこの意見募集についえては、別項で) という話をさせていただきました。 (合法ならば持続可能なのか) 40人ほど集まった参加者からいくつか、質問がありました。 合法性と持続可能性の議論は、各地でどんな法律を施行しているかがバラバラなので理屈の意味で最初の一歩です。 一昨年林業経済学会で「持続可能な森林管理を担保する制度としての、森林認証制度と我が国における森林法・合法性証明システム」という報告をして勉強部屋につしてありますが(2015/11/24) 二つを比べると後者は実施を担保する仕組みのところがもう一歩。 この辺は林野庁の担当者もオープンに議論する姿勢なので頑張ってくださいね。 (消費者は関心がない) もう一つ、「DIYショップにいっても木材の環境機能などみな関心がなり。安くて便利ばかり。」森林認証にどんな展望をもっているのか? 消費者が先か供給側が先か難しい質問ですが、オリンピックは一つの契機です。企業の力、行政の力が相俟っていくのではないでしょうか? 以上です kokunai3-52(gijutsusikai) |
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