地球の炭素貯蔵庫としての都市の木造ビル群―ネイチャーが掲載した論文(2020/12/10)

Nature Sustainabilityという雑誌(があるんですね)に、Buildings as a global carbon sink(地球の炭素貯蔵庫としてのビルディング)と題する記事が最近(といっても今年の2月から)掲載されているという話を伺い、読んでみました。

イントロは、「今後数十年にわたってって世界人口の予想される成長と都市化は、新しい住宅、商業ビル、および付随するインフラストラクチャの建設に対する膨大な需要を生み出すだろう。 この建設の波に関連するセメント、鉄鋼、その他の建築材料の生産は、温室効果ガスの主要な排出源となるだろう。
世界の気候システムに対するこの潜在的な脅威を、気候変動を緩和するための強力な手段に変えることは可能だろうか? この挑発的な質問に答えるために、私たちは、無機質ベースの建設資材の炭素排出的なな生産を回避し、炭素の長期貯蔵を提供する、加工木材で設計された中層都市の建物の可能性を探る。

そこで、左の図:何百万年もの間、陸地の炭素プールが形成され大気中のCO2濃度がゆっくりと低下してきたが(左部分)、産業革命によって引き起こされた都市と産業の成長は、陸上の炭素プールを徐々に枯渇させ、大気中のCO2濃度を増加させ(真ん中の部分)たが、集成材や竹などのバイオベースの材料で構築された都市は、建設された炭素吸収源として機能する(右の部分)。これらの密に構築された炭素プールに炭素を貯蔵および維持することは、陸域の炭素貯蔵を補充するのに役立ち、それによって現在の大気中のCO2レベルを減らし、将来の排出を相殺、ということです。

地球規模で進む、今後の都市化によって、建築過程で排出するCO2は4ギガトンから20ギガトンと推定され(図3buisiness as usual)
全ての排出量の2割にあたるんだそうですが、建築物の9割を木質化することにより、その排出量は半減するそうです(図3右端)。

そんなに森林から木材が生産されるのか?というのが、左の図4。現在の人工林でも大丈夫そうだけれど、保護林などをのぞいた森林を生産林にした場合のシミュレーション結果(右端)なども動員し、燃料用木材を建築用に、また竹材が大切等々、十分可能であることを説明しています。図4

木材の利用拡大が環境貢献という物語でかたられることが少ないのでき気にしていました。「新国立競技場」の木材利用。ロンドンに学びそれを超えて世界に何を発信するのか?(2016/1/17)

そこに、ネイチャーという超有名なメディアに都市の大規模建築物群を木造にした場合の環境貢献の総説論文のような論文(83も引用論文が紹介されています(残念ながら日本人の論文はなかったみたい。公共建築物木材利用促進法でも引用して欲しかったです)

2月に公表されたようなので、日本の研究者の方はみんな知っている有名な情報なのかと思ってきいてみましたが、そうでもなさそう。

この論文が想定していなかったコロナ渦で都市化の進展がどうなるのか?人口減少の日本と増大の世界の違いで我が国にどんな影響があるのかなどいくつかの疑問もあります。また、持続可能な森林経営との緊密な関係性、加工を進める際の接着剤の環境性能、木材の廃棄するシステムの確立など、環境政策の中心に木材がなった場合の課題もたくさん。

学術的な意味での可能性を広げる重要な論文だと思います。

もちろん、現在の日本の重要な課題にとっても・・・
今後森林林業基本計画改定作業の中での木材の需要量水準をどうするか?という話や、気候非常事態ネットワークなど最近のトピックスと確りマッチした大切な情報だと思います。

関心のある方は是非お読み下さい。、

kokunai4-46<bldgGCSink>

■いいねボタン