総選挙の結果は民主党の大勝となり、政権交代となりました。
どんなことがおこるのか。民主党の政策については選挙中の先月号に各党の森林政策の中で掲載しましたが、民主党の森林・林業政策としては、2007年6月参議院選挙にあわせて発表された「森と里の再生プラン」がまとまっています。
民主党の公式なHPの以下のページに関連記事が掲載されています。
菅代行、バイオマス事業視察後、党「森と里の再生プラン」発表(6/9)
菅代表代行、森と里から地域再生を実現する民主党森林・林業政策を改めて発表(7/4)
今回副総理になった菅直人代表代行(農林漁業再生本部顧問)(当時)が、岡山県真庭市にある地域バイオマス熱利用フィールドテスト事業を視察、シンポジウム「林業再生への提言〜21世紀は緑のエネルギーで生きる」に参加したあと発表したものです。菅代行が二回にわたって記者会見をし、自身の日本国内や欧州での林業木材産業の視察体験などを元にした思いを述べています。
このプランの内容で現在民主党の公式ページに掲載されているのは、以下のアドレスにつるしてある概要版です。
http://www.dpj.or.jp/news/files/ringyo.pdf
その他、議員のブログにいくつか情報が掲載されています
文部科学大臣になった川端達夫議員
http://www.kawa-bata.net/election/dpj_008.html
農林水産副大臣になった山田正彦議員http://www.yamabiko2000.com/modules/smartsection/item.php?itemid=103
.プランの中心は「民主党の4つの目標」です
(1 )木材自給率の向上(10年後5000万m=50%)
(2) 林業、木材産業、住宅産業等地域産業の活性化
10年後木材生産で現在の3倍の6300億円、木材関連産業全体で現在の2倍に
(3) 中山開地域の雇用の拡大(10年後木造建設等々含む本材関連産業で100万人〉
(4)我が国の「住」の生活様式の復活による「木の文化」の再生
目標をみると、やや多めの自給率目標、雇用の数値目標など目につくところですが、自民党の政策と大きな枠組みの違いはないとみることができると思います。
具体的な施策の注目点は、@フォレスターや技術者の養成、A地域材の利用に税制、補助金の優遇措置、B違法伐採された外材の輸入禁止、C森林の野生生物の共生などでしょうか。
自民党の政策が省庁別にしっかりかき分けられているのに対して、民主党の政策は野生生物の共生など一部ですが省庁間の行政分野にまたがってかかれています。(これが政治主導の現れ?)
温暖化対策のからみで、森林吸収源についての具体的な施策が今後付加されてくることになるでしょう。
選挙中の先月号に各党の森林政策を掲載しましたが、政策インデックスの環境分野など、関連分野を含めて、若干補強したリストを作成しましたので、掲載します。
民主党政策集 INDEX2009から、森林林業関連分野政策抜粋
農林水産
http://www.dpj.or.jp/policy/manifesto/seisaku2009/index.html#15
「森林管理・環境保全直接支払制度」の導入による森林吸収源対策等の確実な実行
国土の保全・水源のかん養等、森林の有する公益的機能を十全に発揮させ、京都議定書の削減目標達成に必要な森林吸収量を確保するためには、適正な森林管理が必要です。そのため、森林所有者に対して森林の適切な経営を義務付け、間伐等の森林整備を実施する上で森林所有者が負担する費用相当額を交付する「森林管理・環境保全直接支払制度(仮称)」を導入します。
また、公共事業のうち治山治水事業の内容を抜本的に見直し、環境・緑を守る持続可能な事業(みどりのダム構想)に転換して、積極的に推進します。
路網の整備と林業機械の導入による林業経営の安定化
施業意欲の低下した森林所有者に代わり、森林組合や素材生産者等の民間事業者を林業経営の中心的担い手として位置付け、その育成を図ります。民間事業者による対応が困難な場合には、国が森林整備等を行うセーフティネット機能を確保します。
また、林業の生産性向上を図るため、高規格でコストがかさむ林道整備に代え、路網の計画的な整備を促進し、高性能林業機械を積極的に導入します。
木材産業の活性化と木質バイオマス利活用の推進
木材自給率50%を目標として設定し、零細で多段階の木材流通体制を大胆に見直し、効率化を図ります。それにより、木材関連産業を活性化し、中山間地域を中心に100万人の雇用拡大を実現します。
また、木の地産地消、顔の見える木材による家づくりを促進するとともに、公共的建築物における地域材の優先使用・利用拡大を推進し、木の文化の再生と持続可能な循環型社会を構築します。
さらに、エネルギー自給率の向上と地球温暖化防止に大きく貢献する観点から、太陽光(熱)、風力、地熱、小水力、木質バイオマス等を持続可能な自然エネルギーとして利活用することとし、エネルギー素材の供給という役割により山村の活性化を推進します。
なお、違法伐採による外材の輸入を規制するため、「森林の適切な経営」に基づく木材であることを証明する「トレーサビリティ(追跡可能性)システム」を導入します。
国有林野事業の改革
国有林野事業について、農林水産行政と環境行政を一体的に推進する観点から、国有林野事業特別会計を廃止し、その組織・事業の全てを一般会計で取り扱う等、その在り方を抜本的に見直しま
国土交通
http://www.dpj.or.jp/policy/manifesto/seisaku2009/index.html#18
地球と人に優しい家づくり
これからの新築住宅は、長寿命・耐震・断熱・バリアフリーで建て替えずに長期の使用に耐える仕様を基準とし、中古住宅のリフォーム・改築も推進します。外断熱・高断熱・窓の改修などを促進するとともに、住宅性能表示の一つの方法として、その住宅の年間のエネルギー消費量を表示する「エネルギー証明書」を普及させます。
トイレ・浴室の改良、屋内の段差解消、階段の勾配緩和など高齢者が住みやすい住宅リフォームを重点的に支援します。
太陽光パネルの設置を助成し、電力の電力会社による買い取り制度も拡充します。低炭素社会へ向け、国産材を使った木造りの長寿命住宅を推進します。
シックハウス対策やアスベストの暴露対策などやさしい家づくりを徹底します。
木造住宅と国産材の振興で地域に息づく家づくり
木材住宅産業を地域資源活用型産業の柱とし、地域の自立と振興を推進します。伝統工法を継承する技術者、健全な地場の建設・建築産業を育成するとともに、施工者の技能が客観的に分かる仕組みを作り、消費者が安心して注文できるようにします。
間伐が遅れているところは、集約化施業によって山村を活性化し、近くの山で採れた木で家づくりができるようにします。
治水政策の転換(みどりのダム構想)
ダムは、河川の流れを寸断して自然生態系に大きな悪影響をもたらすとともに、堆砂(砂が溜まること)により数十年間から百年間で利用不可能になります。環境負荷の大きいダム建設を続けることは将来に大きな禍根を残すものです。自然の防災力を活かした流域治水・流域管理の考え方に基づき、森林の再生、自然護岸の整備を通じ、森林の持つ保水機能や土砂流出防止機能を高める「みどりのダム構想」を推進します。
なお、現在計画中または建設中のダムについては、これをいったんすべて凍結し、一定期間を設けて、地域自治体住民とともにその必要性を再検討するなど、治水政策の転換を図ります。
環境
http://www.dpj.or.jp/policy/manifesto/seisaku2009/index.html#19
地球温暖化対策基本法の創設
地球温暖化対策基本法を制定し、2020年までに1990年比25%、長期的には2050年までのできるだけ早い時期に60%超の温室効果ガス排出量削減を実現します。
(1)中・長期目標の設定(2)国内排出量取引市場の創設(3)再生可能エネルギー導入の強力な推進(4)地球温暖化対策税の導入(5)省エネルギーの徹底(6)森林吸収源対策の推進(7)環境技術開発(8)環境外交の促進(9)脱フロンのさらなる推進(10)CO2の「見える化」の推進(11)都市過熱化防止――等の措置を講じます。これにより、地球環境・生態系の保全、新たな産業の創出、就業機会の拡大など環境と経済発展の両立を図ります。
実効ある国内排出量取引市場の創設と地球温暖化対策税の創設
キャップ&トレード方式による実効ある国内排出量取引市場を創設します。
また、地球温暖化対策税の導入を検討します。その際、地方財政に配慮しつつ、特定の産業に過度の負担とならないように留意した制度設計を行います。
CO2の「見える化」の推進
地球温暖化対策への配慮ある消費行動を促すため、CO2の「見える化」(カーボン・ディスクロージャー)を推進します。その一環として、電気代やガス代等の請求書や領収証にCO2排出量等の記載を推進します。
エネルギー以外の商品の供給・販売に関しても、CO2排出に関する情報を通知する制度の導入を推進し、消費者の商品選択に利用できるようにします。
また、有価証券報告書等に温室効果ガス排出量及び地球温暖化に関わるリスクと対策を明示する措置を講じます。
環境調和型公共事業
環境アセスメント法の成立により、公共事業についても、ある程度の環境配慮がなされることとなったものの、未だに公共事業による自然破壊が進んでいます。また、従来行われた公共事業についても、環境への影響を検討し、環境復元措置等の対策を施さなければなりません。公共事業は国の事業を限定するとともに、ダムは一定期間その建設を凍結し、抜本的に見直しを行うべきです。また、ダムに頼らずに森林の保水力などによって治水を行う「みどりのダム構想」を具体化します。諫早湾干拓事業や吉野川河口堰改築事業、泡瀬干潟の干拓事業など環境負荷の大きい公共事業は、再評価による見直しや中止を徹底させます。
一方で、河川の再自然化や湿地の復元、ビオトープの整備など、環境再生のための公共事業を地域のNGOなどと協力しながら積極的に行い、循環と共生のための社会資本整備を推進します。
生物多様性の保全(野生生物保護)
民主党主導で超党派の議員立法により成立した生物多様性基本法の目的を達成するために、まだ生物多様性の確保に関わる改正が行われていない「種の保存法」の改正、外来生物種規制法の改正、野生生物の生息地の保全と農林水産業被害対策のための人材育成や技術開発に必要な措置等を講じます。また、戦略的環境アセスメント(SEA)の義務化、教育等の充実、普及啓発や広報、省庁間の連携強化に取り組みます。
豊かな生態系を育む自然環境を国際的に保護するための基金等への拠出を推進し、NGOと協力しながら国際的な調査研究を積極的に支援します。特に、残された貴重な湿地を保全し、失われた湿地を回復するために、湿地保全法を制定します。
2010年に生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)が日本で開催されることを踏まえ、ホスト国としてふさわしい施策の展開に取り組みます。
クマ被害対策
近年、クマの異常出没が急増し、それに伴う人的被害や農作物被害などが深刻化しています。かつてヒトとクマが共生し得た時代が存在した事実を想起し、(1)生息地管理(2)中山間地域の活性化(3)被害防除を3本柱として、ヒトの安全確保と農作物被害等の防止のための措置を確実に講じながら、可能な限りの生態系の再生・回復に取り組み、クマ被害の抜本的解決を目指します。具体的には、個体の適正管理のための継続的かつ科学的調査・研究の実施、クマ遭遇の未然回避、クマの追い払いなどに効果が期待できるベアドッグの導入などを進めます。
自然環境保護
自然保護地域における管理を様々な主体によって行い、その取り組みを科学的に評価し、フィードバックできる制度を確立します。また、残された価値の高い自然を保護するため、こうした地域の指定を行うとともに、その所有・管理を国・自治体で進め、取得については国の費用で計画的に進めます。各地で行われているナショナル・トラスト運動等の民間の取り組みも積極的に支援します。
改正された自然公園法と自然環境保全法の厳正な執行を監視し、豊かな自然環境の保護を図ることにより、生物多様性の保全に向けた取り組みを一層進めます。
外来生物対策(移入種対策)
国内の生態系を破壊する外国からの移入種を規制するため、外来生物種規制法に加え、外来生物の生態、被害、利用に係る幅広い情報の収集・整備を行うとともに、生態系等に係る影響を評価する手法を確立します。また、効果的・効率的な防除の実施に係る手法・体制の構築と普及啓発を推進します。予防原則に基づいた移入種規制の強化、非意図的導入(他のものに混ざったりして国内に入ってくること)の実態把握と対応に取り組みます。
里地・里山の保全
地域にある文化や伝統を活かし、地域による自立的管理が可能となる地産地消の経済システムをつくることで、世界に誇ることのできる日本の里地・里山の自然を保全する必要があります。
環境体験学習、エコツーリズム、国産材の利用など消費面を含めた農山村の活性化対策等を導入しながら、ビオトープ(生物生息空間)ネットワークとして整備を進めるとともに、地域の経済・物質循環を推進し、地域やNGO等の活動により維持されてきた里地・里山特有の自然環境を積極的に評価し、支援する仕組みを確立します。
また、日本の農業を質・量ともに再興し、有機農業の推進などによって育まれる命あふれる健康な大地を取り戻さなければなりません。農薬や化学肥料の使用量を減らし、里地・里山を活用した循環的で地域の生態系(生物多様性)を保全できるような農業を推進します。
|
kokunai6-19<DPforest>
|