既報のように10月に「カーボンフットプリント制度のあり方について(指針)」(中間とりまとめ案)が公表されこれに対する意見公募がありました。(こちら)
いくつかの問題点があってこの勉強部屋からも意見を提出したので以下に掲載します。(pdfファイルはこちら)
概略以下のような点を指摘しています。
1 5年間やってきたウッドマイルズ研究会の活動の蓄積に基づき、輸送過程の環境負荷が適切に評価されローカル資源が評価されるように(中間とりまとめ案には「国際輸送の際の排出量の表示方法等については、国際的なルールが確立するまでは慎重に取扱う必要がある。」(本文末尾)といった全く不適切な記載が紛れ込んでいます)
2 化石資源を燃焼したときに発生する二酸化炭素と、木質バイオマスが燃えたときの二酸化炭素(カーボンニュートラル)が区別されるように(ここが重要なポイントだと思います)
3 最終消費財の場合と、木材の場合のような中間財の場合では提供すべき数値の性格の意味合いが違うのではないか(消費者だけではなく建築会社などBtoBで届ける道具としても使えるように)
4 カーボンストックの表示など関連する見える化の別の作業との連携を図るように(林野庁の「木づかい環境貢献見える化検討会」の作業と連携を取ってほしい)
意見1
[該当する箇所]
5ページ
2. 我が国におけるカーボンフットプリント制度の在り方について
A カーボンフットプリント制度の導入が期待される商品及びサービス分野
[意見内容]
「まず、日常的に購入(商品選択)の機会が多い日用品などの非耐久消費財から導入していくことが消費者にとって分かりやすく、制度の実用化・普及への第一歩として期待される。」とあるが、この文章のあとに「また、これらの商品の原材料供給部門での導入も、効果的な役割を果たす」を追記されたい。
[上記に関する理由]
「分野ごとの商品特性をかんがみた上で、個別の排出量が簡易な方法で直接的に理解でき、かつ比較が容易であるというカーボンフットプリントの強みを事業者が最大限にいかすことができる分野からの導入が有効」という観点から考えると、製造業者の原料調達の場面での選択に寄与することも重要な機能だと考える。
グリーン調達の原動力は商品製造流通に関わる法人・事業者であることが明らかにされている
(参考資料 エコマークの調査)
消費者意識とエコフレンドリー製品(p13)
http://www.env.go.jp/policy/csr/csr02/mat02_6.pdf
意見2
[該当する箇所]
6ページ
(2) カーボンフットプリント制度の目的
[意見内容]
2つのアプローチの他に、企業調達者が原料調達時に低排出原料及びサービスを選択するための判断材料の提供ととらえ、企業による削減努力を促すという側面があるので、当該記述を挿入したらどうか。
[上記に関する理由]
前項目と同様
意見3
[該当する箇所]
6ページ
(3) カーボンフットプリントの算定方法の在り方
@ 算定対象とする温室効果ガス
対象排出源
[意見内容]
対象排出源についての記述を「全ての人為的な排出源とする(ただし、生物の成長過程で光合成により大気中から吸収した二酸化炭素が燃焼過程で排出されるもので、二酸化炭素の増加に寄与しないいわゆるカーボンニュートラルな二酸化炭素の排出はのぞく)」とする
[上記に関する理由]
「自然由来を含む」という記述は、森林や海洋から自然の循環過程で排出する二酸化炭素を含むように取られるので、不適切である。明解に人為的なものであることを明確にすべき。
意見4
[該当する箇所]
7ページ
A算定範囲
[意見内容]
「使用方法の特定が極めて困難なため」と「ただし、この取組を進めていく中で、除外した算定対象範囲を含めていくよう、不断の努力が求められる。加えて、」までを削除
[上記に関する理由]
一次産品や中間財について「使用・維持管理段階や廃棄・リサイクル段階の一部を算定範囲の対象外とする」のは「使用方法の特定が困難である」というという理由とともに、次の工程の産業分野の企業に環境負荷のデータを引き継ぐという意味あいの、積極的な理由がある。
意見5
[該当する箇所]
8ページ
B算定方法
(ア)算定に関する基本的ルール
[意見内容]
原材料調達の原単位の例を「素材1Kg当たりの生産・輸送時のCO2排出原単位」とされたい
[上記に関する理由]
川下の流通販売に輸送過程の例示がしてあるので、川上についても輸送過程を忘れないように、明示しておくべき
原料の輸送過程の排出量は、生産過程よりも多くなるケースもあり重要
(ウッドマイルズ研究会の資料参照)
木材の輸入過程と製造過程の炭素排出量
http://woodmiles.net/023-yunyuzai-yusou.htm
意見6
[該当する箇所]
11ページ
E 各プロセスにおける算定のポイント
(ア) 原材料調達段階
[意見内容]
@原材料の供給者が提供するカーボンフットプリントの数値を参照するべきでること、また、A原料調達過程においても輸送過程の排出量に留意すべきであることを追記されたい
[上記に関する理由]
意見1,2,8の当該項目を参照
意見7
[該当する箇所]
11ページ
E 各プロセスにおける算定のポイント
(ア) 生産段階
[意見内容]
以下の内容を追記されたい。
「生産段階において、木材等のバイオマスを燃焼した際に発生するCO2排出量は考慮しない。」
[上記に関する理由]
上記内容は、「(オ)廃棄・リサイクル段階」において記載されているが、これらの燃料は必ずしも廃棄・リサイクル過程から購入されるとはかぎらないので、上記事項を生産段階でも記載しておく必要がある
意見8
[該当する箇所]
13ページ
E 各プロセスにおける算定のポイント
(オ)廃棄・リサイクル過程
ただし書き
[意見内容]
以下を削除されたい
「ただし、循環資源である木材も、過剰に使用されると、成長が伐採に追いつかなくなる問題も予想されるため、例えば、廃材の再利用である場合はその旨を明示することや、植林・管理されている森林から調達した場合のみ認める等の制約条件を付与するなど、算定に当たってのバイオマス燃焼の扱いの適用は慎重にすべきである。なお、制約条件を付与するに当たっては、バイオマスエネルギー利用の拡大に支障を与えないよう、過度なものとならないような配慮が必要である。」
[上記に関する理由]
森林管理は極めて重要なことではあるが、カーボンニュートラルであるかどうかとは無関係である。
意見9
[該当する箇所]
17ページ
(3) CO2排出量以外の環境情報等との整合性
[意見内容]
以下の内容を追記されたい
「また、木材・木材製品に固定された二酸化炭素ストック量の表示などの関係も明確にすることが望ましい」
[上記に関する理由]
林野庁が行っている、環境貢献度見える化検討会の内容をフォローすべきである。
意見10
[該当する箇所]
19ページ
5 他の国際ルールとの整合性
[意見内容]
以下を削除されたい
「なお、国際輸送の際の排出量の表示方法等については、国際的なルールが確立するまでは慎重に取扱う必要がある。」
[上記に関する理由]
本来、カーボンフットプリント制度と貿易障壁の影響の関係は、ISO14020に規定された環境ラベリングのプロセスの開発の透明性や利害関係者のコンセンサスについてのことであると理解しているが、国際輸送の際の排出量表示方法に関して他の国際ルールがあるとは思えない。「商品・サービスの原材料調達から廃棄・リサイクルに至るまでのライフサイクル全体を通して排出される温室効果ガスの排出量を表示する」というカーボンフットプリント制度の定義から、この中に輸送過程の排出量が含まれることは当然であり、全輸送過程の排出量から国境を越える場合のみ排除することを示唆する、この部分の記述は不合理、不適切である。
以上
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