CASBEEすまい戸建<暫定版>によせて(その1)(2007/8/12) | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
昨年6月に試行版いらい作成中に2回の素案が公開されるのは、CASBEE他のバージョンに比べると異例の手続きであり、戸建て版についての反響が大きい証拠だと思います。 (CASBEEすまい(戸建)暫定版についてから全文がダウンロード出来ます) CASBEEの全体は評価の対象を建築物の環境効率(BEE)という指数に統合する考えに立っており、下図に示す6の環境因子を分子側Q(建築物の環境品質・性能)と分母側L(建築物の外部環境負荷)に分類し、ΣQ/ΣLを住まいの環境性能効率としています。 このうち、木材や森林に関係する項目は以下に示すとおりです。特に住宅資材としての木材の環境的側面について重要なのは、Q3.4の「地域の山林から産出される木材資源の活用」、LR2.1の「持続可能な森林から産出された木材の利用」です。この点を見ていくと、「建築関係者の環境へのこだわり」という絶好の枠組みにも関わらず、森林や木材のサイドの主張が体系的に展開出来ていないというもどかしさを感じます。
1 持続可能な森林から産出された木材の取り扱い この点についての記述は以下の通りです。
昨年発表された「木材・木材製品の合法性、持続可能性の証明のためのガイドライン」(以下ガイドラインと呼ぶ)が大きな位置を占めているのは現時点で大切なことです。 その上で、ガイドラインに基づいて証明された「持続可能な森林から産出された木材」が、若干不明確になっていることが、いろんな波紋を投げかけています。 (ガイドラインによる「持続可能な森林」から産出された木材) ガイドラインでは「持続可能な森林経営の行われている森林を第三者が評価・認証」している森林としてFSC、SGECなどの制度による認証森林を例示しています。 また、業界団体の認定を得て事業者が行う証明方法としては、伐採段階で、伐採業者が原木の伐採箇所を記載するとともに、「原木が持続可能な森林経営が営まれている森林から産出されたものである旨を証明書に記載する」ことを証明の連鎖の出発点とするとしていますが、何が持続可能な森林経営なのか明確な定義を示していません。 他方現在国有林材や都道府県有林材の一部が持続可能な森林経営が営まれていると宣言して販売されているので、それらの木材は「持続可能な森林から産出された木材」だとして業界団体の認定事業者によって流通している可能性があります。 (「日本国内から産出された針葉樹」の持続可能性) そのような宙ぶらりんの実態を反映した記述が「日本国内から産出された針葉樹材」を持続可能な森林より産出した木材とするという部分です。第三者による明解な持続可能な森林から産出した木材が「わずかである」ため、「現実的な」対応として次善の策が提案されているものです。 この記述につは、賛否両論のあるところでしょう。国内の林業関係者にとってはメリットの多いものですし、また伐採された森林が環境に負荷を与えている程度や識別の可能性などを考慮すれば「国産針葉樹材」を抜き出して持続可能とする記述は一つの知恵といって良いかもしれません。 ただし、持続可能な森林の国際的な議論が地球サミット以来積み重ねられ、森林の状況の他にマネジメントの状況を評価するというコンセンサスになっていることを考慮すると、ある地域に生育する特定の樹種を持続可能だという技術基準に同意することはなかなか勇気のいることです。 また、この記述については、@「ISO の環境ラベルの一般原則 <ISO14020(JIS Q 14020)>」などが要求する内外無差別(同第二原則)の関係、A最近問題になっている再造林放棄地など国内の森林の持続可能性についての指摘がされている(九州・四国等における再造林放棄地の対策に関する質問主意書、同答弁書)など、いくつかの問題点を指摘することができます。 (林業サイドからの明確なメッセージが必要) CASBEEの当該部分の記述は、@持続可能な森林経営の国内外の森林への評価、A合法性や持続可能性を証明する取組の現状など総合的に検討した上で、林業・木材産業の分野での取組を一歩前に進めるものとなる必要があります。 林業サイドからの、合法性を証明した木材を供給する努力を評価しながら、持続可能な森林経営についての明確な定義を明確にした、明確なメッセージが発信される必要があると思います。 2 地域の山林から産出される木材資源の活用 以下次号につづく
|
■いいねボタン
|