「森林の生物多様性を高めるための林業経営の指針」(中間とりまとめ)の内容(2024/6/26)

3月14日に開催された「生物多様性保全に資する森林管理のあり方に関する検討会」第3回会合に基づいて、「森林の生物多様性を高めるための林業経営の指針(中間とりまとめ)」と、森林の瀬物多様性を高めるための林業経営事例集が公表されました。

このサイトでもパブコメを出して追いかけてきた事案です。

「森林の生物多様性を高めるための林業経営の指針」案についての意見(2024/3/14)

取りまとめられた内容を見てみましょう。

 目次
1.本指針作成の目的・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3
(1)近年の生物多様性保全をめぐる動き
(2)森林における生物多様性保全
2.本指針の対象・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5
3.林業事業体等が生物多様性保全に取り組む意義・目的・・・・・・・・・・・・・・・・・5
(1)林業生産活動は生態系サービスの発揮に貢献
(2)民間企業との連携による生物多様性保全は林業経営の新たな収益機会
(3)生物多様性の保全にも資する森林管理の集約化
4.森林の生物多様性を高めるための課題・・・・・・7
(1)森林管理における課題
(2)社会・経済的課題
(3)活動目標の設定とモニタリング、評価の課題
(4)地球温暖化・気候変動
5.生物多様性保全に向けた森林管理手法・・・・・・11
(1)森林管理における課題への対応
(2)社会・経済的課題への対応
(3)活動目標の設定とモニタリング、評価
(4)地球温暖化・気候変動への対応
6.国・都道府県・市町村の役割について・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・22

右の表に目次がありますが、それにそって、概要を

(作成の目的ー何で指針を作ったの?)

民間企業の生物多様性に関する関心が高まっている(30by30目標の設定や、自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)」の動き)ことを背景に、生物多様性を高める(=生物多様性の保全に一層配慮した森林管理を実践することにより、多様な動植物の生育・生息空間として森林の質を現状より高めること)ための森林管理のあり方を明確化する。。・・・あわせて、森林経営計画制度の運用において活用することも念頭に取りまとめている。

(本指針の対象ーだれが使うの?)

実質的に森林の管理の担い手となっている森林組合、林業事業体、社有林保有企業体、森林所有者等と協定を結んで森林管理に取り組む企業体、自伐林家、公有林を所有する自治体等(=、「林業事業体等」)

(林業事業体等が生物多様性保全に取り組む意義・目的ーあなた(林業事業体)がこの指針に沿って取り組むとどういういいことがあるの?)

林業事業体等が生物多様性の保全に向けて取り組むべきことは、持続可能な森林経営そのものであり、森林の有する多面的機能の確保や生態系に配慮した施業等による木材の供給を通じて、社会経済に貢献することである。」(p8)

民間企業との連携による生物多様性保全は・・・J-クレジットの創出と生物多様性保全を目的とする森林の生物多様性を高めるための活動を組み合わせることにより、森林由来の J-クレジットが優先的に選択されるとともに、他の削減系 J-クレジットにはない付加価値が販売価格に反映されるなど(一例)、林業経営の新たな収益機会

生態系保全の観点からは、一定の面的広がりをもったランドスケープレベルで森林を管理していくことが必要となるので、周辺を集約化し、区域を拡張して生物多様性を高める林業経営に取り組んでいることを対外的に訴求することができれば、企業価値を高める機会

(森林の生物多様性を高めるための課題と対応ー今ある森林を管理せずに放っておくとどんな問題おこる?それで何をしなければならない?)

カテゴリー  課題 対応 
 森林管理における課題 小規模分散的な所有構造なので面的な広がりをもった計画が難しい。森林施業における生物多様性の保全への配慮 、森林への働きかけの縮小による生物多様性の劣化 シカによる食害等の拡大など多くの課題がある  所有森林の周辺森林と連携(経営受託など)するなど様々な樹種、林分構造、林齢、遷移段階などから構成される森林配置をなど、面的な管理をする計画を作成する(など)
人工林における生物多様性の保全に配慮した森林施業/ 育成単層林における「伐って、使って、植えて、育てる」循環利用システムの確立(草地環境の創出)/ 里山林の整備など
【森林管理における生物多様性保全の取組手法例(ポジティブリスト)】 という形で整理されています)
 社会・経済的課題  土地利用の転換がわずかながらある。、針広混交林化や絶滅危惧種の保護、生態系のモニタリングなどは、追加的な費用負担が発生する 森林から森林以外への転換はストップ。
他の分野の方々との連携が必須なので、受け身でなくプッシュ型に
 活動目標の設定とモニタリング、評価の課題  生物多様性を評価するための統一的な手法は定まっておらず、PDCA サイクルの実行を担保する仕組みも明らかでない。  林業事業体等が生物多様性保全の取組を実施する際は、地域の特性を踏まえつつ、保全対象や森林に期待される生態系サービスなどに応じた活動目標を設定する必要。また、取組の成果を踏まえて森林管理水準のさらなる向上を図るとともに、ステークホルダーとの対話を通じて対外的な評価を獲得していくためには、設定した目標について、モニタリングにより進捗を評価し、結果の分析を踏まえて、見直しにつなげる「PDCA」のサイクルを回していくことが重要となる。
 地球温暖化・気候変動  生物多様性の保全は、森林吸収源の確保と相乗効果(シナジー)を発揮させる形で統合的に取り組むことが求められている。  気候変動による影響が避けられない中、生態系の保全自体が林業の将来的な不確実性に対する適応策となることから、林業経営を持続的に継続するためのリスク管理としてもモニタリングは重要である。

以上ですが、生物多様性は評価の仕方も多様で、すべて簡単に紹介することはできません。(ごめんなさい)

林業事業体の管理や評価をする可能があるかたは、指針と事例集(多様性を評価方法を理解するときするとき事例集は大切!)を是非直接ご覧になってくださいネ

森林の生物多様性を高めるための林業経営の指針(中間とりまとめ)(令和6年3月)
森林の生物多様性を高めるための林業経営事例集(令和6年3月

(提出意見についての林野庁のコメントについて(のコメント))

ご報告したように作成途中の案に対して以下のような意見を提出していました。
林野庁のサイトに結果表が公開されました。当方が提出した4点の提案は1点採用!!。この林野庁のコメントについて、当方のコメントがあります(後述)

   提出意見  提出理由  林野庁のコメント
1 <持続可能な経済社会システム>P3 4-5行
   「次世代にわたって持続可能な社会経済システムを維持していく上で最も重要な課題と認識され」と記載されているが「次世代にわたって持続可能な社会経済システムを回復していく上で最も重要な課題と認識され」でないか?  現在のシステムが持続可能な社会システムであるという認識はおかしい。環境白書なども「回復」といっている。(R5年度第2章標題など) 御指摘の箇所は、「次世代にわたって持続可能な社会経済システムを維持していく」という課題に
ついて述べたものであるため、原文のままとさせていただきます。
(意味不明)
 2 <市町村の位置づけ>P5 2-18行  
   一次的な利用者の「林業事業体等」の中に、「公有林を所有する自治体等」(7行目)とあるが、指針の対象を記述している「本指標の対象」の部分に、森林経営計画を認定しているすべての市町村等自治体(公有林を所有していない)が入るような記述(一次的利用者でなくても)を入れるべきではないか。  森林経営計画を認定している市町村の職員がこの文書の重要性を認識することが重要である。 本指針は林業事業体等向けに作成したものですが、本指針に基づく取組を推進するためには、地方自治体の理解と協力も不可欠と考えており、本指針では、「6.国・都道府県・市町村の役割について」を設けています。今後、地方自治体に対しても、本指針の普及に努めてまいります。
 3 <森林ポジティブ計画?>P11 29行目など、p2121行目以降、など  
   「生物多様性を高めるための具体的な取組方針やモニタリングに関する事項を記載し(以下、これらが記載された計画を「森林ポジティブ計画」という)」と記載しているが、「森林ポジティブ計画」は「森林多様性ポジティブ計画」などとすべきでないか?  この言葉をこの文書内だけでつかうものか?制度化していくのか不明だが、ある程度制度化を念頭においているのであれば、「森林ポジティブ計画」の名称がなにを意図した計画なのか不明で不適切である。 本指針では、「森林ポジティブ計画」の趣旨を説明しており、幅広い理解が得られるように普及し
てまいります。
 4 <OECN形成への積極的対応>P6 15行目  
   「また、生物多様性保全に資する森林管理は、持続的な木材生産を行うためにも重要であり、下草の生育による土壌流出の防止や、病害虫のコントロール、種子の散布、土壌微生物による栄養分の供給などにより、樹木の健全な生育を確保することができる。」とあるが、そのあとに、「なお、国際的な取り組みとして「民間の取組等によって生物多様性の保全が図られている区域」に認定する30by30への取組に貢献することができる」を加筆する  今後陸地の30%を2030年までに自然共生サイト(保護地区以外はOECMとして国際的登録)なとに認定ししていく作業が進むが、その中で森林の役割は大きいので、今回の取組との関係を明確に記述べきである 御意見を踏まえて、下記のとおり修正しました。
「さらに、「昆明・モントリオール生物多様性枠組」に掲げられた以下の2030年ターゲットの達
成への貢献にもつながる。」

ということで、4つの意見のうち、一つが採用されました。国際的な取り組みの文脈で!!(勉強部屋はえらい!=自己満足)

(この林野庁のコメントに関するコメントです)

ところで、一点目の意見はうまく、事務局に伝わらなかったみたいですね。 「次世代にわたって持続可能な社会経済システムを維持していく上で最も重要な課題は」と、指針の冒頭(1-2行目)に記載されています。この表現は「今の時代が持続可能な社会経済システムだ」ということを前提にしているので、おかしいですよね!!

環境省の環境白書でも「持続可能な社会経済システムの実現です。

中間とりまとめが、最終とりまとめになる段階で意見を言いましょう。

とくに出だしの文言なので、皆が読む部分、英文にしたら、問題です!!

kokunai16-2(BDrs_pc)

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