「森林の生物多様性を高めるための林業経営の指針」案についての意見(2024/3/14)

3月7日付〆切で、「森林の生物多様性を高めるための林業経営の指針案についての 意見・情報」という告示がありました。

意見募集要項によると、

 令和4年12月に新たな生物多様性に関する世界目標である「昆明・モントリオール生物多様性枠組」が採択されるとともに、昨年9月には「自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)」の最終提言が公開されたことなどを受けて、民間等による生物多様性保全への関心が高まっています。これらの状況を踏まえ、林野庁では令和5年12月に「生物多様性保全に資する森林管理のあり方に関する検討会」を設置し、林業事業体等の森林管理の担い手が生物多様性を高めるための取組のあり方について検討を行いました。同検討会において、林業事業体等が生物多様性保全に取り組む意義・目的、課題、生物多様性保全に資する森林管理の手法などをとりまとめた指針案を作成しましたので、本案について広く国民の皆様から意見・情報を募集します。

このサイトでは、生物多様性というグローバルな課題が日本の森林森林政策とどのような関係にあるか?という問題意識で、この課題を追いかけてきました。

「生物多様性国家戦略 2023-2030」作成過程(2023/6/15)
「自然共生サイト」の第一次認定結果が公開ー今後森林ガバナンスの制度が蓄積してきたツールの評価がされる30by30の実現への道筋(2023/11/9)

といううことで、すこし勉強し、意見を提出しました。紹介します。

(意見対象の文章)

大賞の文書がネット上に公開されています。森林の生物多様性を高めるための林業経営の指針 (中間とりまとめ) (案)。構成は以下の通りです

 目次
1.本指針作成の目的・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3
(1)近年の生物多様性保全をめぐる動き
(2)森林における生物多様性保全
2.本指針の対象・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5
3.林業事業体等が生物多様性保全に取り組む意義・目的・・・・・・・・・・・・・・・・・5
(1)林業生産活動は生態系サービスの発揮に貢献
(2)民間企業との連携による生物多様性保全は林業経営の新たな収益機会
(3)生物多様性の保全にも資する森林管理の集約化
4.森林におけるネイチャーポジティブの実現に向けた課題・・・・・・・・・・・・・・・7
(1)森林管理における課題
(2)社会・経済的課題
(3)活動目標の設定とモニタリング、評価の課題
(4)地球温暖化・気候変動
5.生物多様性保全に向けた森林管理手法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・11
(1)森林管理における課題への対応
(2)社会・経済的課題への対応
(3)活動目標の設定とモニタリング、評価
(4)地球温暖化・気候変動への対応
6.国・都道府県・市町村の役割について・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・22

提出意見は以下の通り

   意見  理由  コメント
1 <持続可能な経済社会システム>P3 4-5行
   「次世代にわたって持続可能な社会経済システムを維持していく上で最も重要な課題と認識され」と記載されているが「次世代にわたって持続可能な社会経済システムを回復していく上で最も重要な課題と認識され」でないか?  現在のシステムが持続可能な社会システムであるという認識はおかしい。環境白書なども「回復」といっている。(R5年度第2章標題など) 「 持続可能な経済社会システムの実現」だったかな。趣旨は一緒です
 2 <市町村の位置づけ>P5 2-18行  
   一次的な利用者の「林業事業体等」の中に、「公有林を所有する自治体等」(7行目)とあるが、指針の対象を記述している「本指標の対象」の部分に、森林経営計画を認定しているすべての市町村等自治体(公有林を所有していない)が入るような記述(一次的利用者でなくても)を入れるべきではないか。  森林経営計画を認定している市町村の職員がこの文書の重要性を認識することが重要である。  公有林を持っていない市町村職員へのアピール
 3 <森林ポジティブ計画?>P11 29行目など、p2121行目以降、など  
   「生物多様性を高めるための具体的な取組方針やモニタリングに関する事項を記載し(以下、これらが記載された計画を「森林ポジティブ計画」という)」と記載しているが、「森林ポジティブ計画」は「森林多様性ポジティブ計画」などとすべきでないか?  この言葉をこの文書内だけでつかうものか?制度化していくのか不明だが、ある程度制度化を念頭においているのであれば、「森林ポジティブ計画」の名称がなにを意図した計画なのか不明で不適切である。  いかがでしょうか?
 4 <OECN形成への積極的対応>P6 15行目  
   「また、生物多様性保全に資する森林管理は、持続的な木材生産を行うためにも重要であり、下草の生育による土壌流出の防止や、病害虫のコントロール、種子の散布、土壌微生物による栄養分の供給などにより、樹木の健全な生育を確保することができる。」とあるが、そのあとに、「なお、国際的な取り組みとして「民間の取組等によって生物多様性の保全が図られている区域」に認定する30by30への取組に貢献することができる」を加筆する  今後陸地の30%を2030年までに自然共生サイト(保護地区以外はOECMとして国際的登録)なとに認定ししていく作業が進むが、その中で森林の役割は大きいので、今回の取組との関係を明確に記述べきである 地元の森林の施策が、グローバルに登録評価されるチャンスですよー

昨年の12月以来、生物多様性保全に資する森林管理のあり方に関する検討会という重要なプロセスががすすんでいることを知らず、検討会のメンバーである林業経済研究所の所長から「パブコメ出したー?」ときかれて、慌ててチェックして〆切直前の提出でした。

結構インパクトがある意見だと思います(自己満足)。いかがでしょう

kokunai16-1(BDrs_pc)

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