第17回木の建築賞表彰式が開催されましたー受章者のプレゼンを木材調達の視点から紹介(2022/7/15)

第17回木の建築賞の結果については、このページでも概略報告しました。

いまもとめられる木の建築・活動とはー第17回木の建築賞発表(2022/5/15)

6月25日表彰式が東京大学弥生講堂アネックスセイホクギャラーでありましたので、出席しました。

すでご報告しましたが、表彰されたのは、以下のプロジェクトです

◆木の建築大賞
星野神社 覆殿+本殿(本殿:愛知県豊川市市指定文化財)/望月成高(株式会社望月工務店、望月建築設計室)
◆選考委員特別賞・メンバーズチョイス賞
魚津市立星の杜小学校/久保久志(株式会社東畑建築事務所)
◆選考委員特別賞
ダイダン株式会社北陸支店/清水亮太(株式会社プランテック)
◆木の活動賞
飛騨高山の山林資源活用による、循環経済モデルの実践/澤秀俊(澤秀俊設計環境、NPO法人活エネルギーアカデミー)
◆木の建築賞(木の住宅賞)
志摩の小庭 いかだ丸太の家/六浦 基晴(m5_architecte一級建築士事務所)
◆木の建築賞(ムクファースト崇秀記念賞)
morinos/辻充孝(岐阜県立森林文化アカデミー)
◆木の建築賞(キノチカラ賞)
笹島高架下オフィス/高野洋平(MARU。architecture)
◆木の建築賞(建築士会 東海北陸ブロック会賞)
国立工芸館/山岸敬広(株式会社山岸建築設計事務所)
◆木の建築賞 <3作品>
・AND PLUS ‘SHARE’ OFFICE+COFFEE/竹原義二(無有建築工房)
・不惑の一棟/望月成高(株式会社望月工務店、望月建築設計室)
・“手で考えて身体でつくる”―地元材を用いたデザイン/ビルド建築教育の試み―/萩野紀一郎(富山大学芸術文化学部、萩野アトリエ)

(受章者のプレゼンテーション)

最初の四つのプロジェクトの受章者からの報告がありました。

それぞれの方から関係資料をいただきました(どうもありがとうございました)ので、その内容に基づいて(主として川上との関係を中心に)ご紹介します。

いただいたすばらしいプレゼンの関係資料はそれぞれダウンロードできるようにしていますので、楽しんでください。

◆木の建築大賞:星野神社 覆殿+本殿(本殿:愛知県豊川市市指定文化財)ー完璧なトレーサビリティとウッドマイレージへの関心

応募責任者:望月成高・株式会社望月工務店、望月建築設計室

愛知県豊川市の星野神社の本殿とそれを風雨から守る覆殿の建替えです。

「伝統的構法」:本来の木の特質のしなやかなめり込みと復元能力を活かして、日本古来の継手仕口によって金物に頼らず組み上げる伝統構法の木造築物が数百年間にわたり建ち続けれる事を歴史で証明されているこの構法に、現代の科学と業を加えた構法です(上と右)。

住宅の基礎の代わりとも言える敷き石(実大振動台実験で有効なサイズ)の上に建物を建てる「石場建て」(左)

(材木のトレーサビリティー地元木材と天然乾燥)

(以下プレゼン資料から・・・)

全て同じ地域(10キロほど離れた岡崎市)に御宮が所有する山林の材木を使用しています。(右の図)

木材は「植える→育てる→伐採する」というサイクルで森林を適切に管理すれば半永久的に生産できる優れた材料です。また、生育する時には温室効果ガスのひとつであるCO2を吸収し、木材として使用される際も内部に炭素を固定し続けるため、地球温暖化対策にも貢献します。

さらに、地域の気候や風土に馴染んだ地域産木材を利用する事は、地産地消により地域の林業の活性化の一端に加えて、木材を運搬する時のエネルギー消費も抑えることが可能でありウッドマイレージの観点や、地域の伝統や文化や産業にも貢献する事になるなど、非常に理にかなったものとして実践しています。

材木の乾燥には天然乾燥にこだわっています。(左の図)

地域の気候や風土に馴染んだ同じ土地の木がが同じ土地の気候に晒される事で乾燥時の木へのストレスを軽減し木へのストレスを軽減し自然な状態で1年以上の時間を掛けて乾燥された材木は「材の生じる狂いが少ない」「粘り強く耐久性が高い」「木本来の美しい色艶と香りを引き出す事が出来る」木の本来の持つ良さの特性を⼗分に引き出す事が出来きます。

そして、御宮の山の木が、御宮の社殿の姿となって還れた事は、木も喜んでくれたと思えます

材木の市場で国産木材は、性質が安定しており入手のしやすい外国産材に取って代わられ、減少の⼀途を辿っており、山では戦後から長い年月をかけて育った木々の多くが、材として使われることもなく立ち尽くしています。

木材の活躍する場を拡げることで、山に眠る資源の活用と、森林事業の活性化に繋がり、伝統・⼀般・公共建築物
の維持保全にも繋がります。

(以上、藤原のコメントではなく、木の建築大賞を受賞された方のプレゼン資料から!!)

ーーーー

建設過程で使った木材の伐採箇所がすべて(ほとんど)わかる、究極のトレーサビリティですね!
グローバルな視点(ウッドマイレージなど)を踏まえたローカルなこだわり、大賞おめでとうございましたーー

プレゼン資料いただきましたこちらに掲載します

◆選考委員特別賞・メンバーズチョイス賞魚津市立星の杜小学校ー大規模建築への木材調達システムの構築

応募責任者:久保久志・株式会社東畑建築事務所

文部科学省の「木の学校づくり先導事業」による支援を受けた全国初の木造3階建ての小学校。

建設には多くの魚津市産の木材が使われておリ、木が持つ香り、あたたかみや感触、高い吸放湿性といった優れた性能を生かした木造校舎は、潤いある学習• 生活環境を実現する大きな効果が期待できます。

また、校舎そのものが教材となり、木を生かした学習など、地域に目を向けた学習にもつながります。

(木材調達の仕組みから考えました)(頂いた資料から)

一時的に大量の木材を確保しようとした場合や地域に流通していない規格の製材・集成材を使用しようとした場合、木材価格の高騰と木材の調遠・品質確保が問題になります。

校舎建設に必要な木材の調達において「木村調達検討会」を基本計画段階から継続開催し、建設工事に先立ち行う木材調達に必要な体制・スケジュール•発注要領等の検討を行いました。(左の図)

検討会では以下の三つのことを・・・、

①建築部材での種類や量を明確いして、伐採業者や設計者に情報提供

②木材を発注する間での調整

③発注の仕様、製材業者の条件を提示

ーーー

魚津市教育委員会が、うおづ産木材調達JVというところに木材を発注して、検討会で調整した製材品を受注し、施工業者に渡すのだそうです。

3 階建て部分を1期工事、2階建て部分を2期工事として建て方時期をずらすこと、木材の発注を3段階に分けることが決定しました。(右の図)

設計段階より地域材の情報を得ることて、市産材のほとんどを占める杉材を有効に活用した構造計画や内装計画が可能になリました。

ということで、業界と行政が連携して、木材調達の仕組みをつくっています。参考になるでしょうね。

大型建築をする場合の、すこし小さな地域のサプライチェーンと連携!木の学校づくりのプロセスのモデルです。
木材のトレーサビリティがどこまで、解ってしているかな?国産材のCLTとか欧州産の集成材とか、少し難しい課題がるかもしれませんが、時代を先読みして頂きたいと思います

プレゼン関係資料をいただきましたのでこちらに掲載します

◆選考委員特別賞ダイダン株式会社北陸支店ー木材利用の二酸化炭素の固定量を見える化

応募責任者:清水亮太・株式会社プランテック

金沢市内の主要な観光名所をつなぐ、百万石通りに面する敷地における建替え計画です。

老朽化した従前建物の建替えにあたり、立地特性や社会情勢等を踏まえた計画が必要であると課題設定しました。(右の図)

本計画における重要なテーマを実現するための“木” の活用が重要なコンセプトになりました。

(設定した4つの課題)

まず、設定した4つのテーマ

① まちなみに調和する建物
計画地の地域性(建物の意匠や色彩、景観要素、まちの将来計画等)を建物計画に採り入れ、まちなみに調和する建物を目指す

② 環境負荷低減に関する取組み
建替えにより発生する環境負荷を低減できるよう、建設時のCO2排出量削減と、運用時の効率的なエネルギー利用による省エネルギー化を目指す

③ WELLNESS・知的生産性の向上
多様化するワークスタイルに対応できる環境の整備と、執務者が快適で健康的に過ごすことが
できる執務環境を構築し、知的生産性の向上を目指す

④ 建物の持続可能性
建設時、建設後のあり方について、建物の持続可能性を高めるための建材、運用を検討し,
計画に採り入れる

(4つの課題は木の活用ですべて実現)

設定した4つのテーマは、木の活用により実現可能であり、木の活用によりにさらなる付加価値を見込めます(上の図)

(木の利用によるCO2貯蔵量の算定表)

プレゼン資料に、建築物に利用した木材に係る炭素貯蔵量の算定シートというのが、ついていました

資料引用先は林野庁。その基は林業経済研究所です

国産材に利用量が44.3m3(ほとんどがスギのCLT)

輸入材の利用量が44.0m3(ほとんどがオウシュウアカマツの集成材)だそです。

二酸化炭素の貯蔵量は64.7トンでした!!。

(自家用車が28万キロ走行するときの排出量かな?(企業による森もり林づくり・木材利用の二酸化炭素吸収・固定量の「見える化」ガイドラインp17この部分は藤原コメント)

建築物の環境評価過程で、こんな数値が公表されることが、普通になってくる前兆!!

こういう、データを算出過程で、それぞれの木材のトレーサビリティなどが、把握公表されると、もっとよかったですね。

プロジェクトの関係資料が公開されています⇒(ダイダン北陸支店

◆木の活動賞 飛騨高山の山林資源活用による、循環経済モデルの実践ー全国の「木の駅プロジェクト」へのインパクト(山と町づくりの関係性)

応募責任者:澤秀俊・澤秀俊設計環境NPO法人活エネルギーアカデミー

たまたま里帰りしている時に参加した「高山エネルギー大作戦」1週間の自然エネルギーセミナー盛り上がって…

高山市は、人口8.6 万人で、面積2177.61㎢(日本一)東京都より広い、そして、92%が、森林!!

それなのに灯油代に 年間24 億円しはらっている?!

そこで、これから報告するプロジェクトができました。

((放ったらかしの山の恵みを活かす「木の駅プロジェクト」))

以下の4つのポイントがあります
01: 間伐材の「定期物流システム」
02: 地域通貨の発行と運営
03: 木材は根元から葉先まで余すことなく利活用
04: 自伐材利活用としての建材づくりと建築への実践

(01: 間伐材の「定期物流システム」)

高山市と一緒になって、切捨て間伐問題に対処するため、山の近くの拠点(木の駅)に木材を運んでもらって地域通貨で支払い、定期的に循環する運搬車で加工拠点に運ぶ、木の駅プロジェクトをつくりました。(左の図)

02: 地域通貨の発行と運営

飛騨信用組合や協賛店の皆さんと一緒になって、地域通貨enepoを発行(右の図)

地域通貨Enepoは、カフェ・レストラン・居酒屋から本屋・雑貨屋といった日用品店、整体やヨガ教室まで多種多様な協賛店で使用できる。

協賛店は、受け取ったEnepoを地元金融機関の飛騨信用組合で現金決済ができる。金融機関がアナログ地域通貨を対価交換してくれる仕組みは全国初。

03: 木材は根元から葉先まで余すことなく利活用

地元の木材加工業者の皆さんと一緒になって・・・

森の恵みは根元から葉先まで余すところなく、木質燃料、炭・薪から家具・建築用材まで可能な限り利活用(左の図)

資源の川上(山の現場から川下(成果品・製品)のグラウンドデザインを描く!!ということで、賞をいただきました(右の図)

04: 自伐材利活用としての建材づくりと建築への実践

山の価値を上げるための自伐材による建材づくり

「隠庵 ひだ路の客室」における自伐材の活用例(左の図)

木の駅プロジェクトは日本各地ですすんでいますが、ほとんどがチップやペレットになって、燃料材の供給をしています。

建築関係者主導して地域の建物になっているのは、数少ない事例です。

全国の木の駅プロジェクトを先導する「木の活動賞」!!

プレゼン資料いただきましたこちらに掲載します

ーーーーーーーー

第18回木の建築賞 九州地区の作品・活動募集

kokunai3-66<17kinokentikuhyosyo>

■いいねボタン