いまもとめられる木の建築・活動とはー第17回木の建築賞発表(2022/5/15)

NPO木の建築フォラムが発行する雑誌「木の建築56号」が出版され、第17回木の建築賞の結果が公表されています。

私自身が審査委員を務める大切なイベント。

木の建築や木の利用に関わる活動を発表し、相互に評価するとともに、賞の選考過程をこれからの木の建築や活動のあるべき方向を探る議論の場とする。」がイベントの趣旨です。

木をつかった建築物の表彰は木材利用優良施設コンクール(主催木材利用推進中央協議会)、ウッドデザイン賞(主催運営事務局、林野庁補助事業)など広がっていますが、これらは木材業界や林野庁などがどちらかちうと川上が主導するコンクールです。

これに対して木の建築賞は、木の建築フォーラム(「自然環境との共生を図りつつ、質の高い生活文化の再構築を目指」(設立趣意書)という川下の問題意識が主導した建築賞です。

「木の建築」だけでなく、「木の活動」を評価しようというところも重要ですね。

発表の結果は以下のとおり。もう少し詳しい情報選考経緯などもふくめては関係サイト掲載しています。

◆木の建築大賞
星野神社 覆殿+本殿(本殿:愛知県豊川市市指定文化財)/望月成高(株式会社望月工務店、望月建築設計室)
◆選考委員特別賞・メンバーズチョイス賞
魚津市立星の杜小学校/久保久志(株式会社東畑建築事務所)
◆選考委員特別賞
ダイダン株式会社北陸支店/清水亮太(株式会社プランテック)
◆木の活動賞
飛騨高山の山林資源活用による、循環経済モデルの実践/澤秀俊(澤秀俊設計環境、NPO法人活エネルギーアカデミー)

◆木の建築賞(木の住宅賞)
志摩の小庭 いかだ丸太の家/六浦 基晴(m5_architecte一級建築士事務所)
◆木の建築賞(ムクファースト崇秀記念賞)
morinos/辻充孝(岐阜県立森林文化アカデミー)
◆木の建築賞(キノチカラ賞)
笹島高架下オフィス/高野洋平(MARU。architecture)
◆木の建築賞(建築士会 東海北陸ブロック会賞)
国立工芸館/山岸敬広(株式会社山岸建築設計事務所)
◆木の建築賞 <3作品>
・AND PLUS ‘SHARE’ OFFICE+COFFEE/竹原義二(無有建築工房)
・不惑の一棟/望月成高(株式会社望月工務店、望月建築設計室)
・“手で考えて身体でつくる”―地元材を用いたデザイン/ビルド建築教育の試み―/萩野紀一郎(富山大学芸術文化学部、萩野アトリエ)

私も現地審査に参加した、木の活動賞に関する内容の紹介をします。

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◆木の活動賞
名称:飛騨高山の山林資源活用による、循環経済モデルの実践
応募者:澤秀俊(澤秀俊設計環境NPO法人活エネルギーアカデミー

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(プロジェクトの説明)

森林の環境保全と里山の暮らしを次世代に継承することを目的とした、地域循環型経済システムのデザインとその実践活動。

採集した間伐材や未利用材等の地域資源を有効に運搬•利活用するため、行政との協働による定期物流トラックが市内13カ所の集積場を周回して集材し、その対価を地域通貨Enepoとして発行、参加者へ還元することで、地域資源による経済圏を形成している。

また、問伐材の細い幹や枝は薪や炭、チップなどの木質燃料へ、太い幹部分は建材と、適材適所で余すところなく利活用している。設計事務所のメンバーで建材を作り、設計案件で応用している。

活動の場を市民に開かれたものとすることで、誰もが里山仕事に関われるプラットホームとしての役割を果たしている。

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木の建築に掲載されてる、私の講評の概要を紹介します。

 【講評(概要)】

間伐材が伐採跡地に捨てられる「伐り捨て問題」に対処するため、山の近くの拠点(木の駅)に木材を運んでもらって「地域通貨」で対価を支払い、定期的に循環する運搬車で回収して加工拠点に運搬してチップや薪原料として販売する、全国に広がる「木の駅プロジェクト」の一つです。

「木の建築賞」に応募したこの活動は、建築関係者(澤秀俊さん(澤秀俊設計環境)がプロジェクトの中心にいて、「木の駅」に集まる木材(の一部)が建築材料となり山と街を繋ぐ、全国の「木の駅プロジェクト」の次の段階をリードするものです。

建築関係者としてのネットワークを生かし、以下のような幅広い活動・結果も生まれています。

①飛騨地区の商店街で使える「地域通貨エネポ」の発行を、地域金融機関「飛騨信用組合」がバックアップして、地域通貨をいつでも現金に交換可能、

②集まった森の恵みを余すところなく利活用するため、葉っぱはアロマオイル・杉葉エキス、枝や小丸太は燃料・家具・地域通貨など幅広い製品メーカーとネットワークを形成

③自伐建材を活用した旅館案件の施主は、プロジェクトの内容について詳しく情報提供をうけ、「地域循環型経済モデルとなれば嬉しい」と、地域資源を使用することで地域貢献していることを誇りとし、自身のホームページで公表しています。

「木の活動賞」の結果が、全国の山づくり街づくりに広がってほしいです。

(藤原敬/選考委員)

今年は九州地区です。
第18回木の建築賞 九州地区の作品・活動募集

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