1 ウッドマイルズ研究会が提起したこと
(1)日本の消費者が使う木材の不思議
建築物に使用される木材の輸送距離を短縮し、輸送エネルギーの削減や地域材需要の活性化を目指すため、木材の産地から消費地までの距離(ウッドマイルズ)に関する指標の開発と普及を行ってきました。ウッドマイルズ関連指標産出マニュアル
|
図1 |
その一つ、「建築物や製品に使用された木材の量(材積)(m3)に、その木材が運ばれた実際の輸送距離(q)を掛け合わせたものを「ウッドマイレージ(m3・q)」」としましたが、それをつかって、日本の木材輸入と、外国の木材輸入を比べたのが、図1です。
世界で一番木材の輸入量が多いのが米国ですが、ウッドマイレージでは日本は断トツの世界一。
(2)木材利用過程のエネルギーの大きさ
もう一つ、「ウッドマイレージ(m3・q)」に、輸送形態(自動車、船、鉄道など)に応じたCO2排出原単位(s/m3・q)を掛け合わせ、木材の輸送過程における排出二酸化炭素の量をウッドマイレージCOを提案した。
これを使って、仮に現在国内で新築される木造住宅を全て一般住宅から地域材住宅にシフトした場合、木材の輸送過程排出CO2は、年間およそ100万トン削減されると試算できます。
(3)ローカルな大切さをグローバルに発信
ウッドマイルズ研究会の活動の出色だったのは、「地域材の利用促進」という、ともすれば内向きになりがちな運動に、グローバルな性格を与えたことです。
|
|
|
建築材料世界会議(バンクーバー) |
ウッドマイルズセミナー in シドニー(2006/7) |
この視点はいつも大切で、国産材マークとか木材利用ポイントなど、木材の利用をめぐった仕掛けがいろいろ登場しますが、グローバルに発信できるものかどうか、いつも、立ち返って考えることが大切だと思います。
2 転機となった木材調達チェックブック
|
研究会の一つの転機となったのが、木材調達チェックブックでした。
前述のウッドマイルズ関連指標は木材の環境情報の一つですが、これに限らず、すでに提供されているさまざまな木材の環境情報を、わかりやすく建築関係者に伝えようと、作成しました。
(詳しくはこちらを)
|
(1)産地(森林の持続可能性)
森林認証制度、森林経営計画(←森林施業計画)、森林の見える木材ガイド(フェアウッドパートナーズ)
(2)流通(流通経路の透明性・信頼性)
林野庁ガイドラインによる合法木材、都道府県産材、流通把握度
(3)省エネ(木材生産の環境負荷削減)
ウッドマイレージCO2、カーボンフットプリント
(4)品質(木材の強度・乾燥)
JASによる品質確認(乾燥・強度)都道府県による品質確認
(5)長寿命(木材の長期利用)
古材・リユース材、耐久性樹種の確認、保存処理
5つのカテゴリーにわけて、わかりやすく説明し、評価方法を提案しました。
3 フォーラムが挑戦しようとしていること
これらの研究会活動を踏まえて、新たなウッドマイルズフォーラムでは以下の二つの事業を新たに展開することとしています。
(1)ウッドマイルズアワード事業
主に木材利用者側を対象とし、各地の優れた実践事例を表彰する顕彰事業(ウッドマイルズアワード事業)を開催します。
木材調達チェックブックに記載された5つのモノサシ(産地・流通・省エネ・品質・長寿命)を手掛かりに、地域の木質資源の持続可能な利活用に関する優れた仕組みや活動を実践している木材利用グループ又は利用者を発掘し、発表、議論、懸賞、情報発信等を通じて、利活用の実践に関する普及、支援に寄与することとします。
わが国の山村と都市相互の幅広い、安定した地域連携関係の構築に寄与をめざします。
(2)環境に貢献する木材の供給事業者のウッドマイルズ認定事業
環境に貢献する木材の環境情報の提供が円滑に進むように、主に木材供給者を対象に「ウッドマイルズ関連指標をはじめとする多面的な指標」の信頼できる提供者の認定と、システム構築を図ります。
☆林野庁ガイドラインによる合法性証明木材供給事業者認定
(1)個別事象者の業界団体認定(合法木材ナビ)
(2)「個別企業等の独自の取組による証明方法」の承認
☆林野庁ガイドラインによる木質バイオマス発電証明事業者認定
☆ウッドマイルズ関連指標等表示事業者認定
ウッドマイルズCO2、流通把握度も含めた木材調達チェックブックを利用した評価ができる認定
☆SGEC、FSC、PEFC のCoC 認定との連携(課題)
終わりに
環境に優しい木材の利用普及を通じて、森林・林業 (山村)・木材産業と、消費者の距離を縮めるるウッドマイルズフォーラム「百年後を見据えて」出発します
応援をお願いします!
|