ライフサイクルマイナス住宅と木材のLCA(2010/8/7) 

  日本版の緑の建築基準である「建築物の総合的環境性能評価手法(CASBEE」)の開発その普及を担っている一般社団法人 日本サステナブル建築協会(JSBC)内に「ライフサイクルカーボンマイナス住宅研究開発委員会(村上周三委員長)」が発足し、21年度の成果が公表されているが、そのなかに木材ライフサイクル分析についての興味深い報告があります。

LCCO2部会エグゼクティブサマリー部会長 伊香賀俊治(慶應義塾大学教授)

プロジェクト全体の活動内容を説明する文章の中に「日本建築学会「建物のLCA評価ツール(戸建住宅版)」に組み込まれたLCAデータベース最新の2005年産業連関表に基づくデータベースにバージョンアップするとともに、特に、木材の産地(海外の各地域、国内の各地域など)の区別についてのデータベースを開発する」(2-2 LCCM住宅用データベースの開発)との記述があります。

そして、21年度の成果の中に、7カ所の製材工場の調査結果に基づいた製材のLCA分析結果が掲載されていますが、乾燥過程のエネルギーが地場産材の中小企業で乾燥する場合、規模の大きな製材所で乾燥する場合の比較が示されています。(下図)




「中小規模の製材所では、乾燥工程において昼間は木屑を利用しているが、夜間は人件費削減のためにA重油での自動運転に切り替えているために木屑利用率が国産材(一般財)、輸入材と比較して小さくなっている。国産材(一般財)、輸入材は、輸送を県外、国外間で行っており輸送段階のCO2排出量が多いが、大規模製材所のため24時間木屑を利用しているため、全段階のCO2排出量が、中小規模製材所の地場産木材よりも少なくなっている。」との分析です。

数例の調査結果に基づく大胆な分析で、この推論に普遍性がどの程度あるのか疑問ですが(木材の専門家では多分このような表現は躊躇するでしょう)、木材の利用者側がどんどん木材生産過程の環境負荷の分析に踏み込んできており、そして住宅のLCAにこれらの結果が利用されるということになるのでしょう。

乾燥過程の排出量については、二酸化炭素だけでなくN2Oという温室効果ガスの測定の重要性も指摘されており、大いにこの辺の解析が進んでいくことが期待されます。

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